第2話 偶然じゃない力
魔物襲撃事件の翌日。
学園の訓練場には、昨晩の火球の話で持ちきりだった。
もちろん、俺――アレン・クロードの話題だ。
「アレン、あれって……偶然じゃないよな?」
隣にいた赤髪の女生徒、リリアが小さく呟く。
「え、あ、ああ……たぶん偶然だと思う……」
動揺を隠せずに答える。俺自身、まだ信じきれていなかった。
でも胸の奥が、熱くなる。
――昨晩、俺の手から炎の魔法が飛んだ。
偶然なんかじゃない、俺は「見たものを自分の力にできる」のだと確かめたい。
訓練場での試練
***
放課後、俺は訓練場に一人で残った。
木剣や盾、練習用の魔法球を並べ、手元のノートを開く。
「よし……まずは火球をもう一度……」
先輩が置いていった「ファイアボルト」の魔法書を見ながら、俺は目を閉じる。
昨日の光景を思い出す――赤髪のリリアが手をかざし、炎が飛んだあの瞬間。
手のひらがうずく。
呼吸を整え、呟く。
「ファイアボルト……」
――じわり、熱が掌に流れた。
炎の玉が、小さくぷくっと現れる。
「でき……た?」
小さな炎は、目の前の木の的に命中し、黒焦げの跡を残した。
俺は思わず笑ってしまう。
――偶然じゃない。これが、俺の力だ。
仲間の目に映る「異能」
***
翌日、再び魔法授業。
先生が指名する。
「アレン・クロード、君のスキルを披露してみなさい」
クラスの全員が見守る中、俺は手をかざす。
昨日コピーした火球を、再現するだけだ。
「ファイアボルト!」
小さく、しかし確実に炎が放たれ、標的の的を燃やし尽くす。
教室がざわめく。
「な、なにあれ……?」
「偶然じゃない……本当に使えるのか」
ついに認められた――俺の力は、偶然ではなく、実力だった。
新たな可能性
***
授業が終わり、リリアが近づいてきた。
「アレン……やっぱりあなた、只者じゃないわ」
「でも、どうやって使えるの? 他の魔法も?」
俺は考える。
昨日の魔物襲撃で見た剣技も、弓術も、敵の魔法も……
すべて「記録」できるかもしれない。
――つまり、俺は何でもコピーできる最強スキルを持っているのだ。
心臓が高鳴る。
世界の誰も知らない、俺だけの力――
これを極めれば、最弱から最強になれる。
そして、俺は心に誓った。
「絶対、誰よりも強くなる――!」