第19話 光と影の決戦
夜の街道。月明かりだけが戦場を照らしていた。
俺たちは北門へ向かい、すでに潜伏していた蛇の牙の一団を発見した。
「また来たか、アレン・クロード」
影の中から、あの男――カラムが現れる。漆黒の短剣が月光を反射し、獲物を待つ獣のような気配を漂わせていた。
「今度こそ仕留める。お前の首と共に、この国に混乱をもたらすためにな」
カラムの声は冷たく、夜気のように乾いていた。
「もう好きにはさせない。今度はこっちの番だ!」
俺は剣を構えた。
ガイルが一歩前に出る。
「おいアレン、作戦どおりでいいな?」
「ああ。リィナ、リゼル、頼む」
「任せなさい!」
リィナが詠唱を始め、リゼルは静かに杖を掲げた。
次の瞬間、カラムが影の中に溶け込み、俺の背後に現れる。
「遅い!」
カラムの短剣が閃いた。
だがその瞬間――俺は【記録】の力で過去の動きを再生し、カラムの攻撃軌道を完全に再現していた。
「これで読める……!」
俺は身を翻し、カラムの刃を剣で弾いた。
「ほう……前より反応が速いな」
カラムが目を細めた。
リィナの詠唱が終わり、三つの属性魔法が同時に発動する。
「炎・氷・雷、同時詠唱――《トリニティ・バースト》!」
カラムは影に逃げ込むが、その影をリゼルの光が切り裂いた。
「光よ、闇を祓え――《ルクス・レイ》!」
強烈な閃光が夜空を照らし、カラムが影から弾き出される。
「今だ、フィン!」
俺の合図と同時に、フィンの矢が放たれた。
カラムは身を捻って避けるが、その動きすら俺の【記録】に刻まれていた。
「読めてる……お前の動きはもう記録済みだ!」
俺はカラムの回避ルートに合わせて剣を振り抜く。
刃が影を裂き、カラムの短剣が宙を舞った。
「……馬鹿な」
カラムの目が初めて驚愕に染まった。
「影の処刑人が……ここまで追い詰められるとはな」
カラムは後退しながらも影に潜ろうとしたが、リゼルの光がそれを許さない。
「この闇は、もう逃げ場を失ったのよ」
リゼルの光が最後の影を完全に消し去り、カラムの体が実体を取り戻した。
「終わりだ、カラム!」
俺は全員の攻撃タイミングを記録し、ひとつに重ね合わせた。
炎と氷と雷、矢と剣、そして光――。
六重の攻撃が同時にカラムへと襲いかかる。
轟音と閃光が夜を切り裂き、カラムの体が吹き飛んだ。
膝をついたカラムは、それでも笑っていた。
「クク……面白い……お前たち、なかなかやるな……だが……」
彼は血を吐きながらも、最後に不気味な言葉を残した。
「蛇の牙は……こんなものじゃない。幹部が動けば、この国は……炎に包まれる……」
そう言い残し、カラムは倒れた。
「終わった……のか?」
ガイルが肩で息をしながら呟いた。
「ええ……でも、これで蛇の牙が黙るとは思えない」
リゼルの表情は険しかった。
俺はカラムの言葉を思い出し、胸の奥に冷たい予感が広がるのを感じていた。
戦いは終わった。だが、これはまだ序章に過ぎない。
蛇の牙の本当の脅威は、これから始まるのだ――。




