第18話 聖堂騎士リゼル、光の誓い
あの夜の戦闘が終わり、俺たちは街の宿に戻った。
部屋に戻っても、誰もが無言だった。カラム――蛇の牙の刺客。その存在は俺たちの心に重くのしかかっていた。
やがて静寂を破ったのは、リゼルだった。
「改めて、私は聖堂騎士リゼル。王都の聖教会から派遣され、この街で蛇の牙を追っていたの」
長い金髪がランプの光に照らされ、淡い輝きを放つ。
その姿は神秘的で、まるで絵本に出てくる聖女のようだった。
「リゼル……あなたが来なければ、俺たちはあの暗殺者に殺されてたかもしれない」
俺は素直に礼を言った。
「感謝は不要よ。あの男……カラムは私の宿敵でもあるから」
リゼルは静かに言葉を続けた。
「蛇の牙は今、各地で暗殺と破壊を繰り返している。彼らの狙いは王国の混乱、そして国王の命。カラムはその中でも最も危険な一人。影を渡り歩き、暗殺に特化した処刑人――彼を止めなければ被害は広がる一方よ」
彼女の瞳には迷いがなかった。
まるで使命そのものが彼女を動かしているように見えた。
「だがどうやって奴を倒す?」
ガイルが腕を組んで唸った。
「奴は影に潜り、姿を消す。攻撃が当たらん」
「だからこそ、私の光魔法が必要になるわ。闇は光でしか祓えない。カラムの影の術も同じ」
リゼルは銀の杖を掲げ、光の魔力を示す。
その光は小さな部屋を優しく照らし、俺たちの不安を少し和らげた。
「仲間になる気か?」
フィンが真剣な目で問う。
リゼルは静かに頷いた。
「私一人では蛇の牙は止められない。だから共に戦いたい。アレン、あなたの答えを聞かせて」
俺は一瞬だけ迷った。彼女を巻き込むことで、もっと危険な戦いになるかもしれない。
だが同時に、彼女の光が必要なことも分かっていた。
「――リゼル、共に戦おう。俺たちにとって君は光だ」
リゼルは微笑み、俺たちの仲間に加わった。
翌日、俺たちは街の訓練場に集まった。
カラムとの再戦に向けて、それぞれの強みを磨く必要があった。
ガイルは大剣を振り回し、リィナは魔法の詠唱速度を上げる練習をしていた。
フィンは相変わらず矢の精度を上げることに集中し、リゼルは光の魔法で影を打ち消す術を磨く。
俺も新しい戦い方を考えていた。
【記録】はただ情報を覚えるだけじゃない。戦いの動きを組み合わせれば、俺独自の戦術が作れる。
例えば――リィナの魔法詠唱を記録し、フィンの狙撃と同時に再生する。そうすれば敵は矢と魔法を同時に受けることになる。
「……使い方次第で、この力はもっと進化できる」
俺は握った剣を見つめながら呟いた。
夕暮れ、訓練が終わった頃、リゼルが俺の隣に来た。
「アレン。君の【記録】は不思議な力ね。単なる記憶じゃない、未来さえも作り出せる」
「未来、か……まだそこまでの自信はないけどな」
リゼルは小さく微笑んだ。
「なら、私が信じるわ。君がこの国の未来を変えることを」
彼女の言葉はどこか予言のように響き、俺は無意識に拳を握りしめていた。
夜、再び鐘の音が鳴り響く。
街の北門で、蛇の牙の一団が目撃された――そんな報告がギルドに飛び込んできた。
俺たちは互いに頷き、武器を手に取った。
次はもう逃がさない。




