第16話 盗賊団との激突
南の丘陵地帯に広がる乾いた風の中、俺たちは盗賊団のアジトを遠目に見下ろしていた。
木製の柵に囲まれた粗末な砦。中には二十人以上の盗賊が武器を手にうろついている。
「予想以上に数が多いな」
ガイルが低く呟く。
「ふん、数が多かろうが狙いを外す気はしないけどね」
フィンは弓を構え、目を細めた。
「リィナ、遠距離支援は任せる。俺とガイルは前に出る」
「了解。だけど、アレン……また何か策を考えてる顔ね?」
「もちろんだ。記録済みの地形情報を使えば、奴らの動きを先読みできる」
俺はそう告げ、静かに剣を抜いた。
先手を打ったのはフィンだった。
風の精霊に祈るように弓を引き絞ると、矢が音もなく放たれ、見張り台の盗賊の喉を正確に射抜いた。
「ひっ……!」
見張りが倒れる前に、次の矢が放たれ、別の盗賊も崩れ落ちる。
「二人も同時に……!?」
リィナが目を見開いた。
フィンの矢はただ速いだけでなく、軌道を自在に操るかのように風に乗り、狙った敵を逃さない。
だが、砦の中から怒号が響いた。
「野郎ども、侵入者だ! やっちまえ!」
盗賊たちが一斉に突撃してくる。
「ガイル、正面突破だ!」
「任せろ!」
ガイルが大剣を振り抜き、突っ込んできた盗賊をまとめて弾き飛ばす。
リィナの火球が続き、敵陣の一角が炎に包まれた。
俺は戦場の全体を記録しながら動いていた。
戦闘の流れ、敵の配置、地形の高低差――すべてを視覚情報として【記録】に刻む。
その映像を脳内で再生し、敵の動きを数秒先まで予測する。
「ガイル、左から三人来るぞ!」
「おう!」
ガイルが指示通りの位置に剣を構え、突撃してきた盗賊をまとめて薙ぎ払う。
「アレン、後方に一人回り込んでる!」
「分かってる」
俺は振り向きざまに短剣を投げ、背後から忍び寄ってきた盗賊の足を止めた。
戦闘の流れが一瞬で俺たちの側に傾いた。
だがその時、砦の奥から一際大きな影が現れた。
全身に鎧をまとった巨漢。手には巨大な戦斧を持ち、口には残忍な笑み。
「てめぇらが噂の冒険者どもか! 俺がボスのゴルガだ!」
ゴルガが戦斧を振り下ろし、地面が砕ける。
「くっ……こいつ、ただの盗賊じゃないぞ!」
ガイルが剣で受け止めるが、衝撃で地面に膝をついた。
「フィン、援護射撃!」
「了解だ!」
フィンの矢がゴルガの腕を狙うが、分厚い鎧に阻まれて通らない。
「リィナ、炎じゃなく雷だ! 鎧ごと焼き切れ!」
「任せなさい!」
リィナが詠唱を始め、青白い雷光が空に集まる。
「ガイル、三秒耐えろ!」
「三秒でいいのか!?」
「十分だ!」
雷撃がゴルガを直撃し、巨体が一瞬だけ痙攣した。
その隙にガイルが渾身の力で戦斧を弾き飛ばし、俺が剣を首元に突きつける。
「降参しろ。命だけは助けてやる」
ゴルガは歯ぎしりしながらも、ついに戦斧を手放した。
盗賊団はリーダーを失い、散り散りに逃げていく。
「終わったな……」
ガイルが剣を収め、大きく息を吐いた。
「やれやれ、でもこれで一件落着ね」
リィナが魔力を収め、肩を回す。
フィンは弓を背負い、静かに言った。
「盗賊団はこれで終わりだ。だが――俺の復讐はまだ続く」
その目は、次なる敵――蛇の牙を見据えていた。




