第15話 森の狩人フィン
北の森での任務を終えて数日後。
俺たちはギルド本部で、次の依頼を探していた。
「おい、これ見ろよ」
ガイルが指さしたのは、**【南の丘陵地帯で盗賊団が出没】**という依頼だった。
報酬は金貨三十枚。だが問題は盗賊団の規模だ。目撃証言では二十人を超えるという。
「私たち三人じゃ、ちょっと厳しいかもね」
リィナが腕を組んで考え込む。
「……新しい仲間が欲しいところだな」
俺がそう言った時、背後から声がした。
「盗賊団退治? それなら俺も混ぜてくれないか?」
振り返ると、壁際に背をもたせかけた青年がいた。
背中には長弓、腰には短剣。全体的に軽装で、茶色のマントを羽織っている。
「俺の名はフィン。狩人だ。弓の腕にはちょっと自信がある」
そう言って彼は軽く笑い、手の中で矢をくるくる回してみせた。
「突然現れて仲間にしてくれって、どういうつもりだ?」
ガイルが警戒心を隠さず問う。
「理由は単純さ。盗賊団には昔の因縁がある。どうせ倒すなら、強い連中と組んだほうが楽だろ?」
リィナがじろりとフィンを見た。
「腕に自信があるなら、証拠を見せてもらいたいわね」
「いいぜ。外に出よう」
俺たちはギルド裏の訓練場に移動した。
フィンは的から50メートルも離れた場所に立ち、矢を一本だけ番えた。
「風よ――」
彼の声と同時に、矢がまるで生き物のように軌道を変え、一直線に的のど真ん中を射抜いた。
「なっ……!」
リィナが目を見開く。
フィンは肩をすくめた。
「これでも一応、“風精の加護”を持ってるんでね。矢は必ず狙った場所に届く」
ガイルが笑った。
「気に入った! 盗賊団退治、一緒に行こうぜ」
「ちょっと待って」リィナが口を挟む。「戦力になるのは分かったけど、信用できるかどうかは別問題よ」
「まあな。だが、実戦で背中を預けられるかどうかで決めるしかないだろ」
俺はそう言い、フィンの方を見た。
「依頼は三日後に出発だ。それまでに準備しておけ」
「了解。期待してくれていいぜ」
フィンは軽く手を振り、ギルドを後にした。
その夜。
どこかの暗い地下室で、仮面の男ヴェイルが跪いていた。
「申し訳ありません。任務は失敗しました」
黒いローブを纏った巨体の男が、冷たい声で答える。
「アレン・クロード……奴は確実に成長している。次は“影の処刑人”を送れ」
「はっ」
蛇の牙は次の一手を打とうとしていた。
三日後。
俺たち四人は南の丘陵地帯に向かっていた。
道中、フィンは気さくに話しかけてくるが、その目の奥にはどこか影がある。
「昔、盗賊団に家族を殺されたんだ。だから俺は狩る。奴らを一人残らずな」
彼の声には、深い怒りと決意が宿っていた。
そして、盗賊団のアジトが見えてきたその瞬間――。
丘の上から、黒い影がこちらを見下ろしていた。
蛇の牙の刺客だ。
「アレン・クロード……今度こそ、その命をもらう」
新たな戦いの火蓋が、静かに切られようとしていた。




