表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
最弱スキル《記録》しか持たない俺、気づけば世界最強の英雄になっていた  作者:
落ちこぼれの記録者

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

10/87

第10話 夜を裂く刃

その夜、学園は不気味なほど静かだった。

 昼間の喧騒が嘘のように、寮の廊下には人影もなく、窓の外では木々がざわめく音だけが耳に届く。

 だが、俺は知っていた。

 ――この静けさの裏に、何かが潜んでいることを。

 セシリアの部屋を出た時から、誰かに視線を感じていた。廊下を歩くたび、影がついてくる気配。

 そして今夜、ついにそれが動き出す。

 俺の部屋の前。扉を開けた瞬間、背筋を焼くような殺気が走った。

 金属が鳴る。

 次の瞬間、影が窓を突き破って飛び込んできた。

「アレン・クロード、だな……」

 低くしわがれた声。全身を黒衣で覆った男たちが三人、部屋を囲むように立っていた。手には鈍い光を放つ短剣。

 俺はすぐさま剣を構えた。

「……誰だ」

「答える必要はない。ただ命令通り、お前を消す」

 返事と同時に、一人が疾風のように迫る。刃が月明かりを裂き、俺の喉元を狙った。

 だが俺は、その動きを――見た。

 【記録】発動。

 昼間のライオットとの模擬戦、彼の剣筋、足運び、体の重心……すべてを脳裏に再現する。

 男の短剣が迫る瞬間、俺は同じ軌道で剣を振った。

 金属が火花を散らし、男の刃が弾かれる。

「なっ……!」

 驚愕する暗殺者を無視し、次の一人の蹴りを紙一重でかわす。これもまた、ライオットの身のこなしを“記録”したからこそできた動きだ。

 だが三人同時に来られれば、防戦一方になる。

 俺の剣が一人を押し返した瞬間、別の男が背後から迫った。

「終わりだ!」

 短剣が背中に届く、その瞬間――

 轟音。

 窓を破って、炎の矢が飛び込んできた。暗殺者の腕を焼き、短剣が床に落ちる。

「アレン!」

 リリアだった。彼女の手には魔法陣の光が揺らめいている。

「援護する!」

 リリアが次々と炎弾を放ち、暗殺者たちの動きを牽制する。俺はその間に呼吸を整えた。

 【記録】はただ真似るだけじゃない。見た技を組み合わせ、新たな戦い方に昇華できる――それを今、証明する時だ。

 ライオットの剣技に、リリアの炎魔法を重ねる。

「――燃えろ」

 剣先に炎がまとわりつき、赤い軌跡を描いて敵を薙いだ。

 ひとり、またひとりと暗殺者が倒れ、最後の男が呻き声を上げて逃げ去った。

 部屋には焦げた匂いと血の臭いが漂い、俺は深く息を吐いた。

「……助かった、リリア」

「ありがとうは後でいいわ。これ、ただの賊じゃない」

 リリアが倒れた男の腕の刺青を見せる。そこには蛇を模した紋章が刻まれていた。

「王国を裏で狙う“蛇の牙”……。まさか本当に動いていたなんて」

 セシリアが言っていた脅威。それが現実となったのだ。

 夜空にはまだ煙が立ち昇り、月が静かにそれを見下ろしていた。

 これはただの始まりに過ぎない――そう、直感が告げていた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ