表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
僕が神さまを殺した日  作者: 利剣
第一章 呪々御供
1/26

プロローグ 私どうして死ななくちゃいけなかったのかな?

 なんだか、あまりにも皮肉な光景だった。


 不思議だ。死んでいくのに、神様に近づいていくみたいだなんて。



 静かに立ち並ぶ無数の墓標は、まるで何かを黙して語る証人のように、夜の闇へと溶け込んでいる。


 その上を、青白く透けるような煙が漂い、音もなく真紅の炎がゆらゆらと揺れていた。

 まるで、誰かの祈りが形になったかのように。

 優しく、それでいて、恐ろしいほど静かだった。


 その中央に、彼女はいた。


 足元から――いや、魂ごと飲まれるように、地面とともに炎に包まれ、静かに消えていく。

 抗うこともなく、悲鳴も上げず、ただ黙って燃え尽きていくその姿が、かえって痛ましかった。



 それでも僕は、ただ立ち尽くすことしかできなかった。

 声をかけることも、手を伸ばすこともできずに。


 こんなとき、あなたならきっと言ったでしょう。


 『何黙ってんのよ、情けないわね。男の子でしょ?』


 その叱責の声が、今もどこかで響いている気がした。

 僕が欲しかったのは、ただ、その一言だったのに。



 彼女の透けた細い脚。


 その足首に、赤い糸が巻かれていた。

 焼け焦げもせず、風にも揺れず、糸はまるで意思を持っているかのように、彼女の脚に絡みついていた。


 それが何と結ばれているのか、僕には見えなかった。ただ、その糸だけが、現実よりも鮮明に、僕の目に焼きついていた。


 そんな彼女が、最後に僕を振り返った。

 そして、穏やかな微笑みさえ浮かべながら、まるで何気ない日常の会話のように、静かに言った。



真為しんな君、私――どうして死ななくちゃいけなかったのかな?」



 その一言が、夜の中に凍りついたまま、今も胸に残っている。


 答えは、いまだに出せずにいる。



 けれど、それでも。


 僕は心の底で、たった一つの誓いを噛みしめていた。


 約束します。


 ――必ず、あなたを殺してみせますから。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ