このメンツじゃ無理
勝ったのは優華、負けたのは悠優だった。
「うーん。改めて何が聞きたいかと言われると中々思いつかないね」
「天乃ちゃん、そういう時は恋バナだよ恋バナ」
優華は苦笑いを浮かべている。
優華からしたら、悠優の恋バナなんて聞こうと思えば聞ける身近な話題なのだから聞くことでもないし。
「うーん、あ、悠優ちゃんって高校はどうやって決めたの?」
「家から近いっていうのがまず第一の条件で〜かつ推薦受けられるのがここだったからだよ〜」
つまり教師からの温情処置だったってわけか。
またババ抜きを再開し、私は意地でも負けないように勝負に集中する。そのおかげで今回もセーフ。
今回勝ったのは紅葉で、負けたのは優華。
紅葉は私に抱きついて唸っている。烏滸がましいやらなんやらブツブツ言ってまるで呪いをかけられている気分。
「か、花恋……」
「何?」
「お願い、伝言して……」
「まあいいけど」
紅葉はほっと胸を撫で下ろし、私の耳に口元を近づけた。
「え? 優華に彼氏? いるわけないじゃん。──え、恋愛歴? 現在進行形で? だって。好きな人とか好きだった人いるのかって」
「うーんそうだねー。いないって言ったら嘘になるかな」
「え⁉︎ 天乃ちゃん好きな人いるの⁉︎ 誰々! どんな人?」
そういえば、私は優華の好きな人発言をしょっちゅう聞いているからもう半分慣れ始めてきているけど、私と悠優以外は初聞だっけ。
それにしても怜だけは微動だにしていない。一体何になら食いつくのやら。
「私の事が好きじゃない、少し意地悪な人かな」
ね。とでも言いたげに優華はこちらに顔を向けてきたけれど、万が一勘付かれて巻き込まれても困るから無視をする。
「この世に天乃ちゃんが好きじゃない人っているの?」
「いるでしょ。ここに」
でも一応ここでは反応しておかないと、後々優華に揚げ足取られてしまいそう。なんたって悪魔だし。
「…………一周回って好きだと思ってるよ、ウチは」
「いくら紅葉でもその言葉には賛同できない。まあいいや。そろそろ帰る。もう寝る時間」
「え、まだ八時だよ」
「もう八時だよ」
「花恋眠いの?」
「寝ないといけないの」
怜は自分の膝をポンポンと叩いているが、とりあえず面倒な事にならないよう、突っ込みたい欲を抑えて無視しておく。
「待って待って! 恋バナできてない! 何の為に集まったと思ってるの⁉︎」
「したじゃん。優華が」
「恋バナはもっと盛り上がるものだよ! 分かった、もう罰ゲーム関係なしに恋バナしよう! ね! 三十分だけ付き合って!」
何で私が裏切り者の要望に応えなければならないのやら。
「実はウチもこういうのに憧れてたんだ。少しだけだから、ね」
「……はぁ。分かったよ」
どうしても紅葉には強く言えない。はぁ……。
「秋野さんすごいね〜。くうちんがすぐ折れる事ないのに〜」
「うぇえ! いえ、その、その……」
紅葉もそろそろ慣れればいいのに。何やかんや二ヶ月の付き合いなんだから。
「で、恋バナって言っても何話すつもり? 優華だってさっき言った以上の事は話さないよ」
ボロ出されても困るから話させるつもりもない。
「そうだね〜。まあ、まずは恋愛経験あるかとか? わたしはないけど他の人はある? 天乃ちゃんとか安蘭樹ちゃんは人付き合い多いし、彼氏の一人や二人いたんじゃない?」
「いないよ〜」
「私もないよ」
恋バナに発展できないと分かって明らかにテンション下がったな。
「聞くまでもないけど怜も恋愛した事ないでしょ」
「ないよ」
怜ファンだからか明らかにテンション上がったな。
「花恋は?」
「あるわけないでしょ」
「だよね。知ってる」
「そういう紅葉だってゼロでしょ」
「う、ウチは眺めているのが好きなの。当事者になりたいだなんて思ってないもん!」
「負け惜しみ」
「か、花恋にだけは言われたくないもん!」
「残念ながら、私は数多の告白を受けた上でのゼロだから」
「え、あ、そうなんだ」
信じてないが故の可哀想な人を見る目だ。負け惜しみという言葉すら出さないところに本気で憐んでいるのが分かる。
「空瀬ちゃんに告る物好きっているんだね。何で空瀬ちゃんですら告られる世界があるのにわたしにはチャンスがこないのか」
言われてるぞ物好き達。……いや、そもそもなんで私が物好きにしか好かれないみたいな言い方されなきゃいけない。
「そもそもウチの学校近年稀に見るレベルでカップル率悪いらしいじゃん。誰かさん達のせいで。現実見て手頃で済ませればいいのに」
「空瀬ちゃん、さらっとわたしの事手頃扱いした?」
「あんたは物好き扱いしたでしょ」
「花恋、性格悪いし……」
何で紅葉は裏切り者側につくの? ねえ、一体この数時間で何があったわけ?
「紅葉、一体どんな洗脳を受けたの?」
「花恋の扱い方が分かってきただけだよ。それに嘘は言ってないし。一部除いて相手のことを考えない口の聞き方。なぜか上から目線だし。人としてそういうところ直さないとダメだよ」
計三名が拍手しそうな勢いで賛同している。
ならばこちらだって言わせてもらおう。
「……口が悪いというけれど、こっちは散々一人にして、構わないで、付き合いたくないと言っているのに付き纏ってくるような人だよ。そもそも遠ざけたい存在に関わりたくないと思わせる言動をして何が悪いの? 紅葉には憎まれ口叩いてないじゃん。一緒にいたいと思った存在だから。そもそもこいつらは今の私を受け入れた上で付き纏ってくるんだから、私が直すどうこうより、こいつらに私に近づかないよう言うのが正解だと思うんだけど」
紅葉は反論しようとしたのか口を開いたが、どこか納得しているせいか言葉が出ないよう。
「花恋といて嫌だと思った事ないよ」
そういうことじゃない。むしろ私はあんたには思われて離れてほしい。
「ほら。今の私でこれだよ。態度良くしたらもっと悪化する」
「そもそも花恋ちゃんの態度は元々だからね。改善してほしいとは思ってないよ」
「色々言うけど〜少し強引にいけば結局折れてくれるしね〜」
「言動云々は言わないからせめて名前で呼んでほしい」
さっき紅葉の言葉に賛同していた三人はどこへいったのやら。
「あんたの名前知らない」
「嘘でしょ……」
呆れられながらもう一度名乗られたが、脳内容量の都合上すぐに消去されるであろう。




