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花の道しるべ  作者: 輝 静
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月とスッポンの存在

 私は可愛い。私は綺麗。私は全てを持っている。

 私ほど輝いている容姿は芸能人にもそうそういない。

 私は最強に可愛くて綺麗。

 おまけに頭も良くて運動神経抜群。

 天はニ物を与えずという言葉を完全に否定するのが私という存在。


 それは昔から崩れることのない事実で、そのことを誇りに思い、圧倒的な自信へと繋がっていた。


 妬みも嫌味も敵意も媚びも偽りも憧れも羨みも好意も全て私は受け入れていた。

 全ての感情の根底にあるのは、最強な私を認めた証。否定する気など一切ない。

 天上天下唯我独尊、それこそが私なのだから。


「ずっと見てました。好きです、付き合ってください!」


 告白は日常茶飯事。毎日学校に来るように、毎日告白された。

 嬉しいも嫌もない。惰性だけがそこにあった。


「ずっと見てましたとかストーカー? キモいんですけど。夢でも付き合いたくない。そもそも私と君なんかが釣り合うと思われたことがすごく不快。もう話しかけないでよ」


 不細工だろうが美形だろうが、男だろうが女だろうがそんなの関係ない。

 私が誰かのものになるなんてそんなのありえない。

 なぜなら私はヒエラルキーの頂点に立っているのだから。


 そして、私のクラスには最下層の子もいた。

 伸び切ったボサボサの赤茶髪にヨレヨレの服。清潔感が全く感じられなかった。いつも一人で漫画を読んでニヤニヤしているぼっち。


 みんなは彼女を嫌っていたが、彼女が無害である以上何とも思わなかった。

 むしろ、好意であろうと敵意であろうと、私に干渉しようとする人達の方がうざったくてしょうがなかった。

 いない者として扱われる彼女が稀に羨ましく思ったりもした。

 私も注目されない日を一日でいいから送ってみたかった。

 でも、それが原因で困ることもあるらしい。


 ある時、彼女は忘れ物をした。筆記用具だった。

 彼女に友達はいないし、彼女に貸そうとする物好きもいなかった。

 書いては消されていく黒板を見て、彼女は小さく声を漏らし、泣きそうになっていた。


 泣かれて更に注目されるのは困るし、無いとは思うけれど万が一先生に泣かせた犯人だと思われるのも嫌だった。

 私は事実であろうと偽りであろうと弱味を握られるのがものすごく嫌。

 だから、彼女に持っている筆記用具から必要な物を渡した。


「はい、あげる。返さなくていいから」

「ふぇ?」

「困ってるんでしょ? だからあげる。ほら、私の気が変わらないうちに」

「あ、ありがとうございます……」


 その後はいつも通り、何ら変わらず退屈な授業を聞き流していた。


 クラスの半分はもう眠りについている。

 流石は学校で有名な子守唄先生。

 しかし、私は欠伸すらも出さず、無駄にペンを動かして退屈を凌いでいる。

 眠くならないのかと聞かれたことがある。

 答えはイエス。


 私の国宝級の寝顔をそう易々と見せるわけにはいかない。

 私はいつでもどこでも完璧に。決して崩れてはならない。

 それが、神に恵まれし容姿を持つ私に課された使命なのだから。


 今日の授業も何事もなく終わり、そそくさと帰りの支度をしていると、彼女に声を掛けられた。


「あの、ありがとうございます」

「そ。じゃあね」

「あ、あの!」


 正直少しがっかりした。無害だった彼女が、今回の件を気に他の人と変わらぬ態度を取るようになるのだと。

 でも、違かった。


「今日はすごく助かりました。でも、今後は関わらないでください。空瀬さんの印象も悪くなります」


 他の人とは違う拒絶の言葉に興味をそそられたのか、それとも彼女ごときで私の完璧が崩れるはずないという自信の表れか、それとも両方だったのか。

 私はその言葉がきっかけで彼女、流夢空(みずゆきむあ)と関わるようになった。

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