表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
花の道しるべ  作者: 輝 静
74/118

馬鹿ばっか

 年末本番前の貴重な日。私はその貴重な日を二人の戦犯のせいで朝から潰す羽目になった。


「やっほー空瀬ちゃん! 早いね〜。そういえば空瀬ちゃんって学校来るのも早いよね。なんか意外」

「文句あるなら帰るけど」

「ないない。ちゃんと来てくれて嬉しいよ。仮病使って休むかもって思ってたしね」


 未遂とはいえバレてるのなんか嫌だ。


 その後続々と人が集まり、時間内にクラス全員勢揃いした。

 一人ぐらい休めばいいのになぜ全員参加できているのやら。暇人共が。


「それじゃあ移動するよー」


 やってきたのはパーティー用のレンタルスペース。

 カラオケとプロジェクターも完備しており、流石は金はある程度持っている家の子らの選択だと感じた。


「うぉーすっげー! よく見つけたな和木!」

「もっと褒めてくれてもいいんだよ。一日貸し切ってるから時間もそこまで気にしなくていいからね。というわけで、事前に伝えていたようにこれから各々食べたい物買いに行きます! ただ、全員抜けるとあれだから、出前組には残ってもらうけど」


 事前にあんだけ払わせてまだ出さなきゃいけないのかい!


「私達デザート関係買ってくるよ」

「じゃあ俺らはメインか? キッチンあるし多少調理工程あっても問題ないだろ」

「出前はピザとか? 寿司も良いかも」

「僕家近いしホットプレート取ってこようか? 焼肉できるでしょ」


 これまさか後で割り勘とかないよね? お金そんな使いたくないんだけど。そもそも全部小遣いにするつもりで多めに貰ってきたし。


「優華、悠優、私の分は二人が出して」

「ゆーゆ達はATMじゃないよ〜」

「たまには自分で払わないと」

「一体誰のせいで余計な出費していると思うの」

「空瀬ーお前も来たからには金出せ。どうせ食べるだろ」

「あんたら金あるんだから私一人分くらい負担できるでしょ」

「同じ学校の時点でお前も金あるだろ。いいから出せ。それが社会だ」

「チッ」


 渋々財布の中身を覗く。さらば、私の小遣い。


◇◆◇◆◇


 ある程度買う物を決めた後、買い出し班は出ていき、残った出前班はスマホを見合わせながら頼む物を決めている。

 そして私はソファで一人スマホをいじって──


「はい、空瀬ちゃんも出前決めるよ〜」


 裏切り者によって輪の中に入れられた。


「あ、天乃さん何か食べたいものありますか?」

「安蘭樹さん、好きな食べ物とかって……あ、予算気にしなくても、超えた分俺ら出すので」


 通りで買い出し班が女子ばっかだったわけだ。

 男子はこれを狙ってたのか。

 やれやれ、あいつらのどこがそんなにいいのやら。 所詮は顔だけというのに。


「私いらないでしょ」

「まあまあ。輪に入るのが大事だからね。何か食べたいのある?」

「……チョコフォンデュ」


 適当に思いついたやつを口にしたが、予想以上に好評だったよう。


「いいじゃんいいじゃん! 鍋あるし、チョコレート買ってきてもらおう!」

「チーズフォンデュとかもいいんじゃね?」

「いいねー!」


 買い出し班の帰宅に合わせ、出前を完了させる。


 料理が揃うまではゆっくりさせてもらおう。


「ほら空瀬ちゃん、出番出番」

「は? なんで?」

「チョコフォンデュとチーズフォンデュの準備。空瀬ちゃん頼みだから」

「え〜」

「まずいフォンデュ食べたくないでしょ。ね、お願い」


 こんなにいて誰一人役に立つ奴がいないとか、これだからゆとりやらなんやら言われるんだ。


 仕方なしにキッチンに立っていると、後ろから優華が話しかけてきた。


「花恋ちゃん、その、悠優ちゃんって本当に気づいてるの?」

「聞けばいいじゃん、そこにいるんだから」


 優華はゆっくりと悠優に近づいている。


「ゆ、悠優ちゃん」


 悠優は優華の妙に真剣な顔を見て一瞬きょとんとしたが、すぐにいつものヘラヘラした顔に戻った。


「どーしたのー?」

「あ、あのね、悠優ちゃんってその、えっと──」


 優華は顔を真っ赤にしてまた戻ってきた。

 バシバシと背中を叩かれて痛い。

 丁度仕込みが終わった私にヘルプを頼んでいるのだろうけど、正直私にとってはどうでもいいことだから無視しておく。


 私が助けないと分かるや否やまた一人で悠優に特攻する。


「あのね、悠優ちゃんってその、私が花恋ちゃんの事す、す──」


 まさかこんな大衆の前で濁さずに聞くなんて思っていなかったので、思わず優華の口を抑えた。


「え、何? 大丈夫?」

「だいじょばない。ちょっと説教してくる」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ