表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
花の道しるべ  作者: 輝 静
73/131

シチュエーションだけは完璧な告白

 この人はどれだけ服を買うつもりなのだろう。

 私の前でファッションショーされたって無意味だというのに。


「終わった?」

「うん。私の買い物は終わりだよ。そろそろお昼時だね。花恋ちゃん味覚治ったんだっけ?」

「まだ治療中」

「でも味は分かるようになったんだよね?」

「まあ、それなりに」

「ならお昼食べよう。奢るよ」


 というわけでハンバーグのお店にやってきた。

 優華は看板メニューのハンバーグ。私は一番高いステーキをそれぞれ頼んだ。


「お待たせしました」


 運ばれてきた料理を見て思わず声を漏らした。

 流石は質に拘ったハンバーグ店。見るからに美味しそう。


「一個ちょうだい」


 ハンバーグは小さいのが二個置かれているタイプ。

 だから私は優華から一個もらう前提でステーキにしたというのもある。


「良いよ。代わりにステーキちょっと頂戴」

「えー」

「じゃあちゃんと残さず食べられる?」


 そう言われて渋々三分の一切って渡した。


「美味しいね」

「まあまあ」

「料理の感想くらいは素直に言っても良いと思うよ」

「私が作ったなら最高に美味しいって言うよ」

「前から思ってたけど花恋ちゃんって自意識かなり高いよね」

「高いんじゃなくて正当な価値を分かっているだけ。どこぞの甘ったれとは違うんだよ」

「今は気をつけているもん」


 優華は少し顔を顰めて意義ありと表情で唱えている。

 そんな優華を私は鼻で笑う。

 それに気づいた優華は再度本当だもんと念を押してきた。正直どうでもいい。


「ご飯も食べたし帰る」

「プレゼントは?」

「え〜……あ、あれでいいや」

「どれ?」


 手のひらサイズの小さくて薄い財布。

 財布はもう持っているが、長財布だからちょうどコンパクトな物が欲しいと思っていた。

 けれど財布って意外と高いし、自分で買うのは気が引ける。親も財布はもう持っているからと小遣いから買いなさいという始末。

 自分で買うくらいならいらないと思っていた事から欲しいものリストから除外していたが、優華が買ってくれるなら話は別。

 丁寧にラッピングされた大人っぽい財布が私の元にやってきた。


 せっかくのクリスマスを潰されたことをこれで相殺できるかと言われると怪しいが、私は寛大だからこれ以上文句を言うのはやめようと思う。


「花恋ちゃん」

「何。もう用は済んだでしょ」

「せっかくだから観覧車乗らない? もう日も暮れているし、きっと綺麗だよ」


 優華は屋上にある観覧車を指した。

 どうせ嫌だと言っても連れていかれる。

 乗ったら解放される。ならばさっさと終わらせよう。


「乗ったら帰るから」

「うん。ありがとう」


 カップルに挟まれて少しして、私達の番が回ってきた。

 リア充空間から逃げるように観覧車に乗り込み、せっかくだから景色を見る。

 観覧車に乗っている人だけが見えるメッセージのイルミネーションがあったりと、クリスマスシーズンに稼ぐ為の努力が垣間見える。

 ただでさえ綺麗な景色がタダという素晴らしいスパイスにより、さらに輝いてみえる。


「花恋ちゃん、サングラス外さないの?」

「だって覗けるもん。ほら」


 私は一つ下の観覧車を指す。二人だけの空間だと思い込んでいるカップルがイチャイチャしており、思わず溜息をついた。


「花恋ちゃんも恋愛したい?」

「は? なんで?」

「花恋ちゃん、カップルを見るとよく溜息ついているから羨ましいのかなって」

「断じて違う」

「そうなの?」

「当たり前でしょ。なんかムカつくだけ」

「羨ましいんじゃないの?」

「それはあんたの方でしょ」

「え?」

「私に対してああいう事したいって考えてるんでしょ」


 下のカップルを指して優華に問うと、数秒置いて優華の顔が下から上へと真っ赤に染まっていった。


「ふぇあえ⁉︎」


 おまけに変な声まで出して。


「いや、え、どうして⁉︎」

「どうしてって、あんた私の事好きじゃん」

「え、いや、えっ、聞こえててあんな事言ったの⁉︎」

「聞こえたもなにも、その前から薄々勘付いていたし。私がどれだけモテてきたと思ってるの? そうでなくてもあからさま過ぎて分かりやすい。悠優も気づいてるよ」


 悠優の時はブランクありすぎたせいで気づかなかったけど。


「え、嘘……」

「散々モテてきたくせに、自分は隠すの下手なんですね〜」

「だ、だってしょうがないじゃん。私、誰かを好きになるなんて思ってなかったし、ましてや女の子を好きになるなんて余計考えてなかったし……もう! 花恋ちゃんの意地悪!」

「是非ともそのまま私を嫌って下さい」

「できないよ! そういうところも好きなんだもん!」


 わーすごい。顔どころか全身が真っ赤になってる。


「なんで?」

「私だって知りたいよ! 世の中花恋ちゃんより良い人はたくさんいるって分かってるけど、それでも私は花恋ちゃんの事を好きになっちゃったんだもん!」

「何キレてんの?」

「感情がぐちゃぐちゃでもう分からない! 花恋ちゃんがどうしようもなく好きとか、花恋ちゃんの意地悪に呆れてるとか、悠優ちゃんにバレて恥ずかしいとか、花恋ちゃんと一緒にいられて嬉しいとかもうぐちゃぐちゃなの!」


 優華は目に涙を浮かべ、息を荒くして、観覧車内であることをいい事に叫んだ。


「本当に私の事大好きじゃん」

「そうだよ。今だってずっと胸がうるさいくらいドキドキしてるもん」


 優華は自分の胸に私の手を置いた。

 私の鼓動の倍速で動く心臓。あまりの大きさに手だけでなく全身に響き渡っていると錯覚するほど。


「意外と胸あるのムカつく」


 服を着ててもふっくらしていてそれなりにあるのは分かるけど、実際に触れると見た目以上にあり、もぎ取りたいとすら思った。


「今そこ⁉︎」

「別に鼓動とかどうでもいいもん。それに前言ったじゃん。優華を惚れさせるくらい朝飯前だって。それと、辛い思いをするって」

「大丈夫だよ。だって私、花恋ちゃんの事本気で振り向かせるつもりだから」

「無理だよ」

「無理じゃないよ。私だってモテる人生を歩んでいるもん」


 自信ありげに意気込んでいるが、一体どこからその自信がくるのやら。

 私に優華の容姿は効かないのに。


「あんたは顔ありきでしょ」

「花恋ちゃんのモテ人生も顔ありきでしょ。現に高校ではモテてないじゃん」

「二人堕としてる時点で十分だと思うけど」

「え? 二人?」

「え?」

「え?」


 どうやら頭の良さと勘の良さはイコールにならないよう。


「とにかく、優華に私は堕とせない」

「分からないよ。だって花恋ちゃんはまだ私の事受け入れようとしていないんだから。花恋ちゃんが過去を克服する日がきたら、私の見方もきっと変わるよ」

「そうなるといいね」

「花恋ちゃんの為にもね」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ