家にいるべきだった
今日はクリスマス。家でダラダラしながらクリスマスプレゼントを待ち侘びる日。
うちにはまだサンタさんが来る。けど、夜中にこっそり置かれてるなんて事はなく、お母さんが帰ってきたらお母さんからのクリスマスプレゼントと同時に渡される。
そして今年はお姉からも集る集る。絶対集ってやる。
「お姉……何してんの? こんな朝早くに」
「これからデートだから。じゃあね〜」
いつもなら寝ている時間であるはずなのに、ばっちり化粧も服も髪型も決めて家から出て行った。
車の鍵はある。という事は夕飯は食べて帰る。
本当にデートに行ったのだろうか?
いや、ありえない。顔しか取り柄のないあのお姉に恋人なんてできるはずがない。できてたまるか!
まだ私の方が可能性があるレベルだというのに!
あれに追い越される? そんな事あっていいはずがない! 絶対に許されない!
「月、ちょっと出かける事になったから。ご飯は餌やり機セットしとくから食べて」
「ワンっ!」
「じゃあ、行ってきます」
五分で支度をし、お姉の後を追いかける。
「いた」
お姉にバレないように後をつけ、電車を乗り継いでいく。
待ち合わせ場所に着いたのか、お姉は立ち止まってスマホを見ていた。
警察の視界内に収まる事でナンパも回避している。
「お待たせ〜」
お姉に駆け寄ってきた人物はちっちゃい鞄にフリルコートを着用した女性だ。
しかも見覚えのある顔をしている。
そこから導き出される答えは、あのだらしないお姉と十年以上友達をやっている、怜に私の顔バレする機会を勝手に作った元凶だろう。
なーにがデートだ! 馬鹿馬鹿しい! ただのお出かけじゃないか! 人の時間奪いやがって! ムカつくから前からほしかったイヤホン買わせよ。
「うげっ」
「どしたの?」
「いや〜、花恋がクリスマスプレゼントにイヤホン買えって。しかも高い」
「買わなければいいじゃん」
「不機嫌になると怖いんだよね〜。まあ、いつも不機嫌だけど」
「花恋ちゃんは相変わらずだね。結愛が勝ってるところ見た事ない」
「あいつに勝てる存在がいるなら見てみたい」
なんかすごくムカつく会話が聞こえた気がするけど、まあ買ってくれるなら許すとしよう。
さてと、お姉達も行ったし私も帰ろ。
「あれ? 花恋ちゃん?」
今日はとんでもない厄日のようだ。
とりあえず外だし、他人という事で無視しよう。
「待って花恋ちゃん!」
腕を掴まれた。どうしようか。とりあえず振りほど──めちゃ強く握り込まれてる。察せられたよう。
「痛いんですけど」
「ごめんね。花恋ちゃん逃げそうで」
「人違いでは?」
「さっきの挙動とその声と見た目と言葉使いで人違いだったら逆に凄いよ」
「……とりあえず離して」
「離したらいなくなるでしょ?」
「……逃げないから力緩めて。痛い」
「約束だよ」
優華は手の力を抜くと、保険なのか腕を絡めてきた。
「花恋ちゃん今日暇?」
「クリスマスにわざわざ出歩いている人間が暇に見える? 私これからデートなの」
「さっきまでお姉さんを見張っていたのに?」
こいつそこまで見ていたくせにさっきはすっとぼけて声をかけてきたのか。恐ろしい。
「暇ならちょっと付き合ってほしい所があるの」
「お金無い」
「奢るから安心して。それじゃあ行こう」
私が返事をする前に、優華はとっとと歩き出した。




