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花の道しるべ  作者: 輝 静
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見た目はともかく中身は家族

 早歩きでお姉の元に向かう。大人の会話には流石に入れないのか、妹ちゃんの相手をしていた。


「あ、花恋遅いな〜」

「くうちゃん!」


 妹ちゃんの目を隠し、お姉の額を思いっきり指で弾いた。


「痛ったー! 何⁉︎ 今日は何もしてないでしょ! 翼に関しては知らなかったんだから責められる理由にならないよ!」

「怜に私の顔写真見せたでしょ」

「え? ……あーあれ私のせいじゃないよ。あんた覚えてないだろうけど、昔よく遊んでた私の友達いるじゃん。久々にあんたの顔みたいっていうから写真見せたんだよ。ほら、いくら長い付き合いとはいえ、運転中にスマホ渡すの嫌だし。で、降りる時とかに上に挟んでたんでしょ」


 お姉の友達……うっすら記憶にあるような。


「あー、あのやたらとしつこい奴」

「よくもまあ姉の友達をしつこい奴扱いできるね」

「事実だし。それよりサングラス頂戴」

「別に良いけど。元々花恋の為にしているだけだし」


 お姉からサングラスを受け取ってすぐにつける。

 いつもつけているものより薄めだが仕方ない。

 ついでに再度ピンをつけて前髪を留める。


「くうちゃんにーにとおそろい」

「違うよ。よく見てごらん、お兄さん今上着着てないよ」


 おそらく両親だろう。悠優と二人して頭を垂れながら叱られている。

 それにしても、高身長と平均くらいの夫婦からどうやってあんなチビが生まれたのだろうか。

 人体の不思議だ。


「妹ちゃんには無限大の可能性があるね」

「はるすごい⁉︎」

「それは分からない」

「小さい子にもドライだな〜。はるちゃん花恋と話していて楽しい?」

「かえん?」

「ん? ……あ、そうか、くうちゃんの事だよ」


 ニヤニヤして気持ち悪い。心底不愉快だ。


「くうちゃんはさいきょーだから!」

「──あはっ、たしかに花恋は手強いね」

「にーにとねーねよりつよい!」

「そうだろうね〜。はるちゃんはくうちゃんみたいになっちゃダメだよ。くうちゃんは悪い奴だから」

「やっぱりあくのそしきだ!」

「違う、悪の組織はこっち」

「えぇっ⁉︎ もう花恋ちゃん!」

「ほら見た? 善良な市民を躊躇いもなく悪の組織だって嘘ついたよ」

「くうちゃんうそつきだ! いけないんだ!」

「私嘘だけはつかない。それよりそろそろ家族の元に行こうね。おいで」


 私が手を差し出すと躊躇いもなく抱きついてきた。

 悪の組織に絆されるとは、なんともチョロい子。

 ここは姉に似たんだな、可哀想に。


◇◆◇◆◇


 妹ちゃんを抱っこして安蘭樹家にそっと近づく。

 未だに怒られていて思わず口角が少し上がった。


「ねーねとにーにパパとママにおこられてる。ねーねおこられるのはめずらし」

「へー。お兄さんは怒られてばっかだね」

「でもにーにはるのことおこる。やつあたり!」


 六歳児とかどこで八つ当たりとかそんな言葉覚えるのやら。


「じゃあお兄さんにこう言ってきな」


 私は妹ちゃんに一言吹き込み、近づき難い安蘭樹家に特攻させた。


「にーに! はるさみしかった!」

「そーうーせーい〜」

「ちょ、父さん! もう終わりかけてたじゃないか⁉︎」

「はるを不安にさせてよくもまあそんな事言えるな」

「ひぃ、は、はる、なんで今言うんだ⁉︎」

「くうちゃんがにーににいったらはるおこられないいった!」


 六歳児の口とはなんとも軽い。安易な気持ちで吹き込むのは良くないな。


「ちょっとくうさん、酷いですよ!」

「へっ」


 焦り顔で責任転嫁してくる様があまりにも滑稽で思わず笑いが溢れた。


「馬鹿にしないで下さいよ! 父さん怒ると面倒なんですから!」

「あら、あなたが花恋さん?」


 私と弟君の間に入るように、平均サイズの安蘭樹母が声を掛けた。


「はい、まあ、そうです」

「あら〜。いつも子ども達がお世話になってます〜。ゆうちゃんったら、よく花恋さんのお話をするんですよ〜。こうしてお会いできて嬉しいわ〜。これからもうちの子達と仲良くしてあげて下さいね〜」


 なるほど、親子だ。緩い雰囲気とかまんまだ。この親にしてこの子ありだ。


「あーまあ、それは本人達次第といいますか」

「ぶれねーなくうさん」

「あら〜。そうちゃんとはるちゃんはともかくゆうちゃんはずっとお友達がいなかったから、少し勝手が分からなくて迷惑かけているかもしれませんが、できれば見守ってあげて下さいね〜」

「ちょっとママ⁉︎ やめてよ〜!」


 悠優は慌てて安蘭樹母と私の間に入ってきた。

 まあ、親直々に娘はずっとぼっちでしたとか言われたらたまったもんじゃないだろう。

 というか悠優に恥じらいってあったのか。

 どうせ恥じらうなら抱きつきとかそっち方面で恥じらってくれたら良かったのに。


「その点は大丈夫です。知ってます」


 私ははっきりとそう口にした。おそらく今日一番良い声を出せたと思う。


「ですって〜ゆうちゃん」


 悠優は顔を覆い隠して項垂れていた。


「母さん、その辺で。あまり子ども達の関係に首を突っ込むのもよくない。すみませんね、娘と息子とはこれからも仲良くしてやって下さい。爽晴、悠優、父さん達ははる連れて先帰るからな。楽しめよ」

「ばいばいくうちゃん! またあそぼ!」


 安蘭樹夫妻が会釈したので、一応私も会釈し返した。

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