メイド服なんて着るもんか!
早いもので十月。
何が素晴らしいかというと、連日の雨で体育祭が中止になった事。
これほど嬉しい事はあるだろうか、いや、ない!
しかし、残念な事にどう頑張っても文化祭は無くならない。
そして、今日はそんな憂鬱な行事である文化祭の出し物を決める日だ。
もうなんでもいいから展示して終わりの出し物でいい気がするけど、絶対にそうならないだろうな。
主に二人の存在のせいで。
「文化祭の出し物決めるよ〜。何か案がある人〜」
「はい! メイド喫茶!」
「安直すぎるぞ持無ー!」
「そうだそうだー、捻らないと売上一位になれねーぞ」
売上なんかどうでもいいだろ、無駄に熱持ちやがって。
「そもそもメイド喫茶じゃ私達女子に接客しろって言ってるもんじゃん」
そうだそうだ。今の時代そんなんじゃ特定の人達からの炎上は免れない。
「分かってないなお前ら」
分かってないのはお前だ非モテ。
「天乃さんと安蘭樹さんのメイド姿、見たくないのか」
一瞬クラスが静かになり、男子達が唾を飲む音が一斉に響いた。
それよりよく本人達に聞こえる中でんな事言えるな。
もちろん私は興味ないが。
「メイド喫茶もいいよな」
「な、俺ら男子は料理とか裏方やってればいいしな」
「なんなら俺らもメイド服着て接客すればいい。そうすりゃ平等だろ」
「まあ、男子も着るって言うなら」
まずいな、クラスの空気がメイド喫茶可決に傾いている。
嫌だ、あんな服着たくない。お姉とお母さんが嬉々として写真を撮る姿が容易に想像つく。
絶対嫌だ。
どうする、どうすればこの空気をぶち壊せる。
……よし。
私は静かに、しかし高々と姿勢よく手を挙げる。
「空瀬ちゃんが発言とか珍しいね」
「なんだ、いいだろメイド喫茶」
「文句言われる前に発言させて」
「どうぞ空瀬さん」
たく、余計な工程を挟ませやがって。
「逆転喫茶」
またもや静寂が訪れた。しかし、先程のものとは違う。
皆、興味がない、または反対の意を込めた静寂だ。
「やだよ逆転喫茶とか。俺らがメイドでお前らが執事とかどこに需要があるんだよ」
「よく考えてみなよ。優華と悠優のスカート姿は制服で見慣れているでしょ。でも、パンツスタイルは違う。体育で見られるかもだけど、それはあくまでラフな姿。君ら見たくないの、二人の正装パンツスタイルを。男装を。いいの? メイド喫茶だと見られるのはあくまで普段とちょっと服装が違うだけの二人だよ」
「……お前、やるな」
こうしてクラスの出し物が決まった。
「くうちん、メイド服着るのよっぽど嫌なんだね〜。ゆーゆ達の事引き合いに出してまで阻止したもんね〜」
「当たり前でしょ。あんな格好で学校徘徊しなきゃいけないとか罰ゲームでしょ」
「私は花恋ちゃんのメイド服ちょっと見たかったな」
「残念だったね、一生見ることはないよ」
「私が着たら着てくれる?」
「一人で着てれば? 私を巻き込まないで」
「そっか、残念」
むしろなんでそれで私が頷くと思ったのだろうか。
名前呼びになってから、優華は少々勘違いが激しくなっている気がする。
「花恋、花恋」
「怜、いつも言ってるけど休み時間の度に来ないでくれる」
「授業に遅れてないから大丈夫。それで、花恋達は何やるの?」
「逆転喫茶だよ〜。れーちんのところは?」
「お化け屋敷」
「怜ちゃんのクラスもメイド喫茶とかになるかと思ってた」
「なんか和装喫茶とメイド喫茶で争って、間のお化け屋敷になった」
どうして間がお化け屋敷になるんだ。
「お化け屋敷は準備期間長そーだね〜」
なるほど、そういうこと、解決した。
怜と過ごせる時間の長さを取ったのか。
「ちなみに私は文化祭の準備貢献しないから」
「しなくていいから買い出しは一緒に行こうね」
「あんたらと行動するくらいなら一人で物作りしてるわ」
「くうちんは相変わらずだね〜」
「あんたも相変わらずだね。なんで定位置のように私の膝に座ってるの。優華見習って立てチビ。そして怜は自分の教室に帰れ」
「ゆーゆだよ〜」
「花恋といたい」
「知らん帰れ」
いつもと変わらぬやりとりを予鈴がなるまで続ける。




