世の中馬鹿ばっか
結論から言うと、この合コンは失敗だろう。
女子二人はイケメンにばっか構って、イケメンもそれを良しとしてる。
同族は肩身狭そうにチビチビとジュースを飲んでいる。
もう一人の男子ももう中身の無いコップに口をつけて端っこで包まっている。
幹事がどうにか盛り上げようとしているが、話の内容が自分の武勇伝ばかりで聞いてて不快になっていく。
持無は最初こそ片思い相手に声をかけていたけれど、適当にあしらわれてばっかで最終的に心が折れていた。
まさに地獄だ。
「あ、あの」
私がスマホを弄っていると、同族が声をかけてきた。
なぜ私なのかと思ったが、まあ話しかけるハードルが一番低いからだろう。
「その、サングラス、取らなくて大丈夫ですか?」
「光に弱いので」
嘘だけど。
「そ、そうなんですね……」
「え、空瀬普段はサングラスしてねーじゃん。てかお前よくよく見たら今日分厚い眼鏡してねーけど視力大丈夫か?」
こいつ、ぶっ叩いてやろうかな。
「うっさい殴る」
「わ、まじで殴ろうとする奴がいるか。俺はただ疑問に思った事聞いただけだ」
「そんなの関係ない。ムカつくから一発殴らせろ」
「悪かった、悪かったって。許してくれ──あだっ! まじで殴りやがった!」
中々良い手刀をお見舞いできた。
「いい気味だ」
「くそー。天乃さん達にチクってやる」
「どうぞチクってくれたまえ。私は悠優と怜にも手を出した事あるから効果は無いけど」
「お前本当に容赦ないな。過激派に聞かれたらお前やばいぞ」
「そしたら本人達に盾になってもらうだけだから。分かったら口には気をつけるように」
「まじ無敵だなお前。あー痛って」
わざわざ来てあげた奴に対する態度とは思えない。
「花恋ちゃん、よかったら僕ともお話ししようよ」
そうか、こいつ同じ学校だから天乃さん達のこと知ってるのか。
となると、かなり面倒だな。
「私は空気なので」
「そんな寂しい事言わないでよ。僕の事は甘大って呼んでくれていいよ。花恋ちゃんさっきから何も食べてないよね。何か食べたいものある? お金は気にしなくていいから」
持無を押し退けて私の前を陣取る。
持無も持無で本命の前をゲットできて満足そうだ。使えない男。
「いりません」
「そっか。じゃあせっかくだし一緒に何か歌おう」
「嫌です」
「音痴でも気にしないよ」
「クラシックの音楽以外聴きません」
んな女子高生いるわけないだろとツッコミたくなる言葉を強めに吐き出す。
「そ、そっか……」
そもそも私を利用しようとしているお前の提案なんぞに乗るわけないだろう。
でもどうせこいつ諦めないだろうし。
やはりトイレか? トイレに避難するのが一番なのか?
「…………」
いや、もっといい案がある。
「内木さん、白女なんだよね」
「え、あ、はい、そうです」
こいつを無視して別の子と話せばいい。
誰の眼中にも入っていない同族なら集中して話せるだろう。
「女子校の王子様がいるって聞いた事あるんだけど」
「え、あ、多分穹水翼様の事だと思います。いつも囲まれていて話した事はないんですけど」
「へー」
あいついつでもどこでも女の子を纏っているな。女子校の王子とかあいつにとっちゃ当然のステータスなんだろうけど、女子も女子で単純というか。
「内木さんから見てその人はどうなの?」
「か、かっこいいですよ。頭も良くてスポーツもできて、でもその事を鼻に掛けなくて。それに、よく色んな人を助けているって聞いています。私もいつかお話ししてみたい」
ただのクソナルシがこれほどの評価をもらえるとは、世の中馬鹿ばっか。
鼻にかけてない? ご冗談を。あいつほど自分という存在に価値を見出している奴なんて存在しない。
「えっと、内木さん? ちなみにその人と僕どっちがカッコいい?」
無視は不服なのか、無理やり会話に入ってきた。
「翼様です」
「え、いや、はは、即答とは面白いね。それで、本音は?」
「翼様です」
諦めろ、あいつは静凪君から容姿を奪ったクズだ、お前のようなほんの少し顔が良い部類の奴が勝てるわけない。
「内木さんはその人と話してみたい?」
「機会があれば……。でも、私みたいな人が話しかけるのは畏れ多くて」
「挨拶から始めてみたらいいと思うよ。囲まれてるってことは、来るもの拒まずだろうし」
あいつは女の子なら見境ないからな。
また僕の魅力に溺れた子猫ちゃんを誕生させた罪深い女だとか思うだけだ。
「そ、そうですね。翼様は優しいですし。が、頑張ってみます。空瀬さん、ありがとうございます」
「どういたしまして〜。結局自分で行動する事が大切だからね。向こうからとか、誰かを利用して近づくとかは結局相手からの評価を下げる事になるし」
時間も良い感じに潰せて、さらには釘もさせた。素晴らしい一石二鳥だ。
◇◆◇◆◇
「じゃあ、今日はお開きにしようか。良ければ皆で連絡先交換しない?」
「ぼ、僕はいい。ただの人数合わせで三江以外と話してないし」
「わ、私も大丈夫です」
良かった、二人も率先して断ってくれたおかげで私も断りやすい。
「私もパス。じゃ」
「え、あ、ちょっと待ってよ花恋ちゃん」
気安く私の名前を呼んで腕を掴むな利用男。
「同じ学校だしさ、良かったら連絡先交換しよう。何か困った事があったら先輩として助けられるだろうし」
「結構です。本当に困ったら持無から聞くんで。では」
強めに手を振り解いて、早歩きで駅に向かう。
女子二人からの視線が痛いのなんの。
「空瀬!」
「何。走ってきて。キモい」
「相変わらずひでーなお前は」
「相変わらずなら別にいいじゃん。で、何か用? もう用は済んだでしょ。フラれたとしても私は知らん」
「フラれた前提で話すなよ。たしかに連絡先もらえなかったどころか俺のこと忘れられてたけどさ。って、違う違う、お前の連絡先教えてくれ」
QR画面を見せて、さも交換するのが決定事項のように話を進めてくる。
「嫌に決まってんでしょ」
「クラスグループに入れる為に必要なんだよ。入ってないのお前と天乃さんと安蘭樹さんだけ。だから二人はお前が招待してくれ」
「私じゃなくて二人のどっちかにお願いすればいいじゃん」
「お前それ俺に死ねっつうのと同じだぞ。俺が個人的に天乃さん達の連絡先聞いた瞬間校舎裏に埋められるわ。お前もそれくらい分かるだろ。だからお前の連絡先教えてくれ」
「嫌だよ。そもそも入る理由がない」
「クラスTの話とか、ゆくゆくは文化祭の出し物の話とかやるのに必要だろ。だから入ってもらわなきゃ困るんだよ」
「チッ」
「舌打ちすんなよ。青春の為だ、諦めろ」
「はぁ。グループ入れたら私の個人垢は即消してよ」
「んな事するわけないだろ。必要になる可能性があんだから。いいから教えろ」
「は? 教えろだと? くださいだろ」
「教えてください」
渋々スマホを取り出し、持無と連絡先を交換する。
「あんた勇気っていうの?」
「俺今日自己紹介したよな」
「興味ない」
「まじかよお前。まあいいや、サンキューな。ちゃんと天乃さん達招待してくれよ」
「はいはい」
「頼んだ。それと、今日は付き合わせて悪かったな、ありがとう。お前が言ってたやつバイト代入ったら用意するから安心しろ。それじゃ、俺別の線だからまた学校でな。気をつけて帰れよ」
去っていく後ろ姿を見て思う。一体なぜ私は大して仲良くもないやつの都合に付き合ってやったのだろうと。
まあ月餅の為だと思えば納得はできるか。




