部外者がしゃしゃり出るな
「花恋ちゃん、勝負しよう」
新学期早々天乃さんは変なこと言ってきた。
「内容は?」
「来週の定期試験」
「は? やだ」
「負けたら花恋ちゃんの連絡先消してあげる」
「よし乗った。やります」
即答した私に天乃さんは微妙な表情を浮かべた。
乗ってあげたのになぜそんな表情をされなければならない。
「勝ったら下の名前で呼んで」
「じゃあハンデとして天乃さんは安蘭樹さんと氷冬さんの勉強見てください」
「いいよ」
「二人とも全教科平均点以上で」
「いいよ」
「じゃあやってあげます」
「それじゃあ私が勝ったら二人のことも名前呼びね。あと敬語やめて」
「いいですよ。負けませんから。あの二人にも連絡先消すよう言っといてくださいね」
「分かった。約束ね」
「はいはい」
おそらくもう二度とない絶好のチャンス。これをものにしない手はない!
「天乃さんにテストで勝つとか無謀だろ」
「うっさい。てかお前誰だよ」
「持無だよ⁉︎ 夏休み前から席変わってねーだろ!」
「知らん。興味ない」
「勝ち負けよりも、どうして空瀬ちゃんは氷冬様達から離れたがるの? わたしだったら幸せすぎて毎日がハッピーなんだけど」
「いかにも馬鹿の発言だね。あいつらのせいで陰口言われてるの知ってるんだけど」
「最近はむしろ空瀬のおかげでよく三人集まってくれるから嬉しいって声聞くぞ。まあ態度悪いとか目障りとかで評判悪いのは否めないけどな」
「空瀬ちゃんもうちょっと性格オブラートに包もうよ。前髪も切ったら少しはマシになるよ。空瀬ちゃん髪質綺麗だし、顔見えるだけで印象凄く良くなるよ」
なんで大して仲良くもない名前すら知らないただ席が近いだけの奴らにここまで言われなきゃいけないのか。
「なんで私が他人に忖度しなきゃいけないの。忖度されるならともかくするのは絶対嫌」
「お前まじで天乃さん達大切にしないと一生一人だぞ」
「私は一人を望んでいるの」
「そんなこと言ってると、本当に一人になるよ。今はよくても、女の子なんだし、いつか恋愛の一つや二つしたくなるからその時後悔するよ」
「言っとくけどあんたらよりモテてるし告白もされた自信あるから」
「お前がモテるとか世も末だな」
「空瀬ちゃん、嘘はよくないよ」
まじでなんでこいつらにここまでボロクソ言われなきゃいけないんだ私は。
絶対にあの三人と縁切りして誰も私に興味が向かないようにしてやる。絶対に!
◇◆◇◆◇
「お姉、一応いい大学通ってるでしょ。勉強教えて」
「あんた私が高校生だったの何年前だと思ってるの? もう無理に決まってるでしょ。言っとくけど今の私はあんたより馬鹿だから」
「チッ、使えな」
「舌打ちやめな〜。ねー月ちゃん。花恋怖いね〜」
お姉が使えないとなると少々困る。
私だって勉強はできる方だが、それでも天乃さんの壁は高い。私一人だと流石に限界がある。
さて、どうするか。
「……あ、そうだ」
静凪君に助けてもらう事にする。
絶賛受験生でもあり元から頭も良い静凪君なら私に勉強を教えられる。
「機嫌良いね」
「役立たずのお姉の代わりに静凪君が勉強教えてくれる事になったから。持つべきものは優しい従兄弟だよ」
直接会っては流石に難しかったけど、分からない問題を送ればちゃんと解説してくれるらしいから問題ない。
静凪君の力があれば天乃さんの壁だって壊せる。
「ふーん。あ、そういえば花火大会で翼に会ったよ」
「あいつに変なこと言ってないでしょうね」
「友達と花火大会に行ってるって事しか言わなかったよ。女の子に囲まれてたからあまり話す時間なかったしね」
「なんで余計なこと言うの」
「だって翼が花恋に会いにいっていいかって言ってくるから。だからもう友達できてるからその必要はないって伝えたの。じゃないとしつこいもん」
まあ会いにこられるくらいならまだマシか。
「あっそ。それよりお姉、寝っ転がってる暇あるなら掃除してよ」
「月が離れたくないっていうから〜」
「んなわけないでしょ。月おいで。散歩」
「ワンっ!」
「あー月ちゃーん」
お姉にワイパーを投げつけて私は月と散歩に出かけた。
◇◆◇◆◇
万全の体制で挑んだ試験は普通に負けた。
名前呼びが嫌すぎて君でどうにか乗り切ろうとしたら流石に怒られたから仕方なく名前で呼んだ。
ちなみに怒ってきたのは隣と前という無関係の奴らだった。




