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花の道しるべ  作者: 輝 静
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やはり期待を裏切らない

 氷冬さんのせいでショッピングモールに留まらなければならなくなった為、仕方なく目的もなくモール内を適当に出歩いている。


「映画観ないの?」

「だから観ないって」

「じゃあ花恋は何したい?」

「別に」

「じゃあ──」


 氷冬さんはスマホを取り出して調べ始めた。

 もしスマホのない時代に生まれていたらどうしていたのか、多少の興味はある。


「カラオケ? に行く?」

「絶対行かない」


 私の曲のラインナップ上ヒトカラが最適なのもあるけれど、それ以上に氷冬さんのような十八番自体なさそうな人と行って何が楽しいのやら。


「じゃあ、服見る?」


 一見マシな提案に思えるが、氷冬さんのことだ、今言った言葉以上の事は何も考えていないだろう。


「誰の服」

「…………誰の?」


 やっぱり。期待を裏切らないよこの人は。


「はぁ。花火大会の服見てあげるよ。それでいいでしょ」

「いいの?」

「二度は言わない」


 どうせ解放されないんだ。服なら適当に渡してずっと試着させとけば関わるのも減るから幾分かマシだろう。


 そういうわけで、二人で浴衣が売ってある店に来た。

 別に浴衣に拘らず普通の服でも良いはずなのに、わざわざスマホで調べたから花火大会イコール浴衣という余計な知識をインプットしてしまったようだ。


 浴衣は着替えの時間がかかる故一着のみの試着だったけれど、そこはまあ別にいい。問題は他にある。


「花恋、どうやって着るのか分からない」


 あの氷冬さんが浴衣を一人で着れるわけない。

 なぜこんな簡単な事に気づかなかったのか。

 私は思わず頭を抱えた。

 どうせこの後着せてとか言うんでしょ。


 氷冬さんといるとラブコメの主人公にでもなった気分になる。

 何が悲しくて氷冬さんと試着室という狭い空間で浴衣を着せるというヒロインとの距離縮め展開をやらなければならないのやら。

 やらんぞ、絶対にやらんぞ。

 絶対に回避してやる。これ以上神の思い通りにさせてやるもんか。


「あの、すみません、連れが浴衣の着方分からないらしくて、教えてもらってもいいですか?」

「分かりました。今行きますね」


 見たか神よ! 回避してやったぞ、ラブコメ展開!

 いや、女同士でラブコメ展開を真っ先に考えるのもどうかと思うけど。

 男女問わずモテてきた代償というものだろうか。


「お似合いですよお客様〜」

「花恋、どう?」

「え、あーいいんじゃない?」

「分かった」


 ぶっちゃけサングラス越しで色合いとか全く分からないけど、氷冬さんが着るならどんな馬鹿げた服でもオシャレになるだろうし問題ない。


「花恋、買った。花恋もいる?」

「いらない。じゃあ私は帰る」

「まだ時間余るんじゃないの?」


 ちっ、余計な事はしっかりと覚えやがって。


「あとは一人で過ごしたい」

「花恋は普段一人じゃないの?」


 なんだろう、この人言葉足らずすぎるせいかすごい誤解を招く言い方するな。


「それが何か問題でも? 氷冬さんといたくないの」

「どうして?」

「私は平穏に過ごしたいの」

「今は平穏じゃないの?」

「そうだよ。氷冬さんのせいで」

「どこが平穏じゃないの?」

「氷冬さんといると注目されるの」


 私は周囲を見回すよう促して、男女共に向けられる好意と興味の視線に気づかせる。


「いつも通りだよ」


 そりゃそうだろうね。

 私だってブランクあるとはいえもうああいう視線に珍しさも何も感じない。


「ねえねえ君達、もしかしてこの後予定無くて困ってる感じ? もし良かったら俺達と遊ばない? ほら、ちょうど四人になるし」


 ナンパってデパートで立ち止まっているだけでもされるのか。

 それにしても、氷冬さんはここをどう切り抜けるのだろうか。

 コミュ障であろうとこんな経験はいくらでもあるだろうし、ここは氷冬さんに任せよう。

 そもそもナンパ野郎の眼中に最初っから私は入ってないしね。


「その顔で。無理。花恋、行こう」


 若干棒読み感があるのは気になったけれど、吐く言葉としては意外よりだ。

 私の予想ではなんで責めか別に責めか無視かのどれかだと思ったのだけでど。


「氷冬さんも強い言葉使うんだね」

「強いの? お兄ちゃんが外で声かけてくる人にはこう言えばいいって言ってたからその通りにしたんだけど」


 なるほど、お兄さんチョイスか。なら納得の言葉だ。

 お兄さんがどんな人かは知らないけど。

期間空きそうな時は後書きにという記述を前話に残しましたが、無理そうなので忘れてください。


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