神席詐欺
期末テストも無事終わり、私が一番楽しみにしていた席替えが行われる。
席替えはパソコンを使ったルーレットで行われる。三回ほどルーレットを回し、確定したら自分の出席番号が書かれた場所に席ごと移動する。
正直一番前でも遠かろうとどこでもいい。
ただ天乃さんと安蘭樹さんから離れられればそれでいい。
神様、私結構良い子にしていたと思います。嫌な日々にも耐えてきました。なのでここらで多少の慈悲が合っても良いと思います。
私は神頼みしながら、席替えルーレットを見守る。
そしてその結果──
「花恋ちゃんすごく機嫌良いね」
「天乃さんと安蘭樹さんから離れられる上にさっさと帰れる廊下側の一番後ろ。喜び以外何もありませんよ。おかげで今後はお昼も帰宅も逃げ続けられる」
「そこまで言われるとちょっと傷ついちゃう……」
「天乃さんの気持ちとか心底どうでもいいです。じゃあ、私はこれで。もう話す事もないでしょう」
私は意気揚々と席を移動させる。
周りが私を構わない。なんて素敵な空間なのだろう。
クラス内は天乃さんと安蘭樹さんが近くの席になれたというだけで動物園のような騒ぎが起こっているけれど、私の周りだけは空間が切り離されたかのような静けさが広がっている。
「ねえねえ空瀬ちゃん」
私を呼ぶ女子の声が聞こえたけどきっと気のせいだろう。
私に友達なんていないからね。
それどころか関わりのある人物もあの三人以外いない。
そう、これはきっと悪い幻聴。
「おーい空瀬ちゃーん」
悲しいかな、現実のようだ。
「何でしょうか?」
「油性ペン持ってない?」
「なぜでしょうか?」
「夏休みのワーク。今名前書かなきゃいけないらしくて」
「あーいいですよ」
「ありがと」
そう、これだよこれ。普通クラスメイトなんてこれくらいの距離感が一番。
だというのにあいつらはずかずかと私のパーソナルスペースを荒らして。
「助かった。ありがとう。ちなみに空瀬ちゃんさー、黒板見えるの?」
「見えます。意外と」
「へー。でも髪切ったらいいのに。目に入らない?」
「眼鏡つけてるので」
「対策はしてるんだ」
「はい」
なんとかさんは特にやる事もないし、しかも周りは男子しかいなくて話しかけられるのが私だけの為か、対して仲良くもない私に体を向けてずっと話しかけてくる。
「空瀬ちゃんって意外と話せる人だね」
「聞かれれば応えます。それくらいのコミュ力はあります」
「いやーほら、天乃ちゃんとか安蘭樹ちゃん、それに氷冬さんにはちょっと当たり強かったから」
「様じゃないんですね」
「氷冬さんのこと?」
「はい」
「大して知らない人を様付けは逆に失礼じゃん」
なんだろう、すごくまともな人に出会った気分。
そうだよね、いくら高嶺の花と言われてようが興味ない人は興味ないもんね。
「花恋。……席替えしたの? 近くなったの嬉しい」
休み時間に入るやいなや来やがって。クラスで友達くらい作れ!
「生氷冬様……! 感激!」
なんということでしょうか。ついさっき知らん人に様付け失礼とか言っていた女子が躊躇いもなく様付けしているではないでしょうか。
こいつ、私と仲良くなってワンチャン間に入ること狙ってたな。
どうして私の周りには碌な人間がいないんだ。
「用無いならさっさと帰れ」
「花恋と話したい」
「いいから帰れ。人集り作るな」
氷冬さんが廊下側のドア付近にいるせいで、いつも以上に人が押し寄せている。
こんなに近くで氷冬さんを囲める機会など滅多にないからだろう。
「じゃあ、花恋私のクラス来る?」
「行かない」
「じゃあここにいる」
いいから私にも当たる鬱陶しい視線をどうにかしてほしい。
「氷冬さん、私から離れてくれたらお弁当作ってあげる」
「花恋嘘つくから」
流石の氷冬さんもそこまで馬鹿じゃなかったか。




