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花の道しるべ  作者: 輝 静
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歪な関係

 私は今大変面倒な状況に置かれていた。四人のメッセージグループを作ったのだけれど、誰一人としてグループで話そうとしていない。

 その癖私には数秒毎にメッセージを送ってきて、一体何なんだと思う。


 そもそもあの三人、連絡先交換していなかったというのが衝撃的だった。

 思えばあの三人が仲睦まじくしているどころか、わざわざ集まって話しているというのも見たことがなかった。


 思い返してみれば、色々巻き込まれた今週、三人とも私を中心に置いてでしか話していなかった気がする。

 友達でないことは知っているけれど、一体どういう関係なのだろうか。

 名前では呼び合っていたから、一応会話はできる関係だと思うけど、うん、分からない。


「それにしてもウザいな。ブロックしようかな」


 流れるメッセージの波を止めようと、右上に指が触れたと同時に電話がかかってきて、思わず心臓が飛び出そうだった。

 しかも出ちゃったし。


「何ですか、切りますよ」

「あ! ちょっと待って。あの、実は友達が出来たら電話してみたいなって思ってて。迷惑じゃなかったかな」

「友達じゃないって言ったの聞いてました?」

「うーん、じゃあ前倒し。友達になった時電話する予定の前倒し」

「そうですか、そんな予定はこないので切りますね」

「待って待って! もう少しだけ付き合って」

「友達なら別に私に電話かける必要ないじゃないですか。安蘭樹さんとか氷冬さんとか」

「あー……」


 天乃さんは分かりやすい。電話越しでも眉を顰めて苦笑いしている姿が容易に想像つく。


「私が気兼ねなく話せるのが花恋ちゃんだけだから。それに、二人とは雑談するほど仲良くなくて」


 私とだってそんな仲良くないでしょうって突っ込みたい。


「私達ってね、たまたま中庭で鉢合わせたの。一人になれる場所を求めて。だから、無駄に話しかけるとかしなくて。必要なことがあったら話す関係だったの。そもそも、一緒にお弁当食べたのも花恋ちゃんが来た時が初めてだったの。変な関係なんだ、私達。赤の他人がたまたま一緒にいるみたいな感じで。正直気まずかったりするの」


 私の記憶では割と普通に会話していた気がするけれど。


「普通に名前とか呼び合っていた気がしますけど」

「慣れかな。一緒にいる私達を求めている人がいるから、各々ニーズに答えて表面的な会話だけしていたの。でも花恋ちゃんに対しては違うよ。仲良くなりたくて話しかけているから」

「一体私は君達にとってなんなんですか」

「友達になりたい人だよ」

「何で私なんですか。君達のこと好きじゃないからとか、対等に扱ってくれるとか言ってましたけど、それって関わってから分かった事ですよね。私が表にしていないだけで君達のファンだった可能性もあるんですよ。今も実はその事実を隠しているかもしれませんし」

「うーん」


 天乃さんは長考している。

 これがどうでもいい話題ならすぐ切るけど、正直答えが気になるから切れない。


「花恋ちゃん、高校初日に私に言ったこと覚えてる?」

「どうでもいいので覚えてないです」

「素直だね。そういうところ好きだよ」

「さっさと結論言ってください」

「ごめんね。その時、私が挨拶したら苦労しますねって返したんだよ。たぶん私はその時から気になっていたんだと思う。耳障りのいい言葉ではないけれど、私単純だから、理解してくれたみたいで嬉しかったんだ。だからね、席前後だし仲良くしたいなって思ったの。花恋ちゃんいつも、すぐ一人の世界に入っちゃうから中々チャンスが無かったけど、ようやくこうして話せてすごく嬉しい」


 苦労しますねなんて誰でも言いそうな言葉だけど……。

 いや、言わないか。恵まれてるとか人生勝ち組とかは言われるだろうけど、苦労しているは言われない。

 大変そうだなーって思っていても、でも可愛いからそれくらい当然だよねと思う人が大半だ。

 安直に彼女のことを単純だと言えない。私も彼女みたいになる可能性は無きにしも非ずだったから。


「そうですか。それでは失礼します」

「あ! ちょっと待って! ここからが本題でね」


 長い世間話だったな。本題あるならさっさと言ってほしかった。


「あの、明日って大丈夫かな?」

「無理です」

「大丈夫空いてるよ」

「うわ! お姉!」

「ただいま〜。電話の相手天乃ちゃん? やっほー天乃ちゃん。明日花恋おしゃれさせていくから安心してね。補導の時間までなら連れ回して大丈夫だからね! もしお泊まりさせるなら連絡するよう言ってね! 天乃ちゃんが良ければうちにきてもらっても全然オッケーだよ! あと──」

「もうお姉邪魔! 会話に入ってこないで!」

「ちゃんと明日何時に行くか教えてよ」

「もう分かったからあっち行って!」


 お姉を何とか部屋から追い出し、再び電話に戻った。


「本当に余計な事を」

「私は花恋ちゃんのお姉さんに感謝しているよ。お姉さんがいなければ、花恋ちゃんと出かけるなんて出来なかったからね。それで、明日は大丈夫かな?」


 本当にお姉はいつもいつも私にとって不都合な事を不都合なタイミングでやらかすんだから。


「はい、大丈夫です……」

「良かった。時間とか場所とかは後で送るね」

「はい、失礼します」

「うん。また明日、バイバイ。楽しみにしているね」


 電話が切れてすぐ、私はお姉に文句を言いにいった。

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