クラスメイトはわりかしクソ
体育の時間。先生にペアを組むようにと言われたので、私は予め決めていたクラスメイトの元に向かう。
「そういえば亀ってバドはできるの?」
「……亀? それあたしの事?」
「そうだけど。水瓶でしょ。だから亀」
「水入です」
「まあどうでもいいよ」
「良くはないけど和木に比べたらマシか。で、バドね。バドに限らずあたしは運動そこそこできない部類だよ」
「そんな見た目してるくせに?」
「このルッキズム反対の時代に突っ込むね。あたし華道部なんだけど」
「多分五分後には忘れてる」
「あたしの予想では一分も持たないと思う」
私はラケットとシャトルを取りに行くが、少し遅かったせいで綺麗なラケットは少なかった。
「はい」
「さりげなく古い方渡してきたね。いやまあ取りに行ってくれただけであたしとしてはびっくりだしありがとうだけど」
「私はあんたがコート確保しといてくれなかった事にびっくりだよ」
まあ幸い、三人からは離れたコートだから良かったけど。あいつら、ほんと女子にも人気なんだな。
まずはラリーを続けろとの事で、亀の近くに落ちるように調整しながらシャトルを打ち返していき、周りのコートの人と対戦する時は、嫌がらせのごとく相手を動き回らせて疲れさせた上で勝利を勝ち取っていった。
◇◆◇◆◇
「空瀬さんってあんな嫌がらせみたいなプレイしてて小学校とか中学の時なんか言われたりしなかったの? あたしらは空瀬さんの悪評知ってるから今更だけど」
体育終了後、着替えている人の隣にわざわざ来てそんな嫌味を吐いてくる。流石は裏切り者と同じグループに属しているだけはある。
「顔で許されてきた」
「わームカつく〜。否定できないのがさらにムカつく〜」
「それに、私中学の時は不登校だったし、特に言われるような事はなかった。じゃっ」
ジャージを持って更衣室を出ようとすると、思いっきり腕を掴まれた。
「いやいやいやいや⁉︎ 何その特ダネ情報⁉︎ 空瀬さん不登校だったのまじ? この世の全てを見下しているような空瀬さんが⁉︎」
なんで私ってクラスメイトからボロクソ言われてもいいみたいな風潮作られているんだろうか。
「人間関係に疲れたから。さっさと手を離さないとあんたごと廊下に出るよ」
下着状態だった為か、すぐに離して元のロッカーに戻っていった。
◇◆◇◆◇
体育は四時間目だった為、教室に戻り、早々に一人で弁当を食べる。
やけにしんとしていて、私としてはそれなりに心地良い空間である。
「おい空瀬⁉︎ まだ着替えているんだから一旦出ていけよ⁉︎」
「…………別にあんたらの着替えなんて見てないし見る気もないし見たくもない。気分悪くなるし」
「くそー! さっさと仲直りしろクソ空瀬! 謝れ空瀬! そしてさっさと天乃さん達に手綱握らせろ! なんで今日秋野は休みなんだ⁉︎」
「クソクソ言うなクソ非モテ……あんたちょっと鍛えた方がいいよ」
非モテは顔を真っ赤にして制服を着ると、私の前に立って唇を震わせた。
「う、うるせー! お前に言われたくない!」
「私の引き締まった体とあんたのだらしない身体を一緒にしてほしくない」
私が非モテと言い合いしている時間に急いで着替えたのか、男子はいつもより早く教室を開放していた。




