消極的選択
翌日も私はあまり学校に行く気がしなかった。けれど、仮病使って休む気力もなく、惰性で登校した。
紅葉の側にいればいい。そう思っていたのに──
「か、風邪……⁉︎」
いつも来ている時間になっても来ていないから連絡を入れると、風邪で休むと紅葉から返信が来た。
紅葉がいなければ私はぼっちになってしまう……⁉︎
いや、ぼっち自体は全然大丈夫なのだけれど、あまり三人と顔を合わせたくない、見たくないという状況で紅葉という避難先がない。しかも今日は体育がある。バドミントンだから絶対二人組を作るように言われる。紅葉がいないから今日は一グループ三人でやってねってなる。
あそこの三人で組んでくれるなら別にいいけど、もし誰かがあの三人の内誰か一人と組んだら、強制的に私は残りの二人と組む事になる。
残念な事にうちのクラス、皆それなりに仲良いせいで孤立している人がいないから、孤立している者同士で組むという事が起こらない。
紅葉以外のクラスメイトと大して仲良くないし、奇数人女子グループが一軍のガチ陽キャかギャルか腐女子だからそことは組みたくない。
こうなったら先手を打つしかない。
「あのさ、誰でもいいから体育私と組んでくれない?」
裏切り者の仲良しグループに突貫し、そう口にした。
仲良さそうに笑顔を浮かべながら会話していたのが一瞬で静まり返った。
「珍しいね」
真っ先に口を開いたのは裏切り者だ。
「今日紅葉風邪で休みだから」
「そうなんだ。じゃあお大事にって伝えておいて。でもそれなら氷冬様達と──あ、そっか、空瀬ちゃん今三人と喧嘩中なんだっけ。何があったかは知らないけど、早くごめんなさいした方がいいよ」
なんで私が悪い事した前提なのだろうか。そもそもなぜ喧嘩中っていう誤解が広まっているのか。
「喧嘩じゃないから。そもそもなんで私が悪い事した前提なわけ?」
「日頃の行いというものだよ」
腹立つ顔だ。でも心臓は安定している。
「とりあえず体育の時空瀬ちゃんもらっていいか聞いてくるね」
「は? 誰に──」
裏切り者はとっとと三人の輪に入っていった。目が合うの嫌だから、視線を外しておく。
「空瀬さんって秋野さんがいなかったら和木の方に来るんだね」
「…………どちら様でしょうか?」
「それはあたしを指しているのか、和木を指しているのか」
「…………どっちも」
短髪の運動部っぽいクラスメイトはあーこれか〜と言いたげな、呆れた表情を向けた。
「あたしは水入。空瀬さんが話しかけたのが和木。流石の和木もそろそろ覚えないと泣くよ」
「中野です。一応去年同じクラスだったんだけど覚えてます?」
「いいえ」
委員長みたいな見た目。全く印象にない。
「ですよね〜」
眼鏡をかけた長髪の方に目をやると、特に表情変化せずに淡々と名乗った。
「草谷」
「はぁ〜なるほど、水の木や。ね」
「変にくっつけないでちょうだい」
裏切り者がニコニコと笑顔を浮かべながら戻ってきて、私の両肩に手を置いた。不快だが、以前三人の時にあった動揺自体はない。
「わたし氷冬様と組める事になった!」
おい、私の話はどうしたと言いたい。というか、私この人らと今日初めて喋ったから裏切り者と組めないなら私は誰と組めばいいの⁉︎
「流石は裏切り者。名に反しない行動。あんたと組めないなら私は誰と組めばいいのさ」
「ここに三人いるから好きな人選びなよ。あとわたしはそんな名前じゃない」
「私達は別に空瀬と組む事に異論はないわ」
「…………一番マシなの誰なの?」
「辛辣だね」
「私達一応頼まれている側なんですよね?」
「そんな性格だから喧嘩したら拗れるのよ」
「喧嘩じゃないってば」
正直誰を選んでも五十歩百歩なので、天の神様に決めてもらった。




