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花の道しるべ  作者: 輝 静
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勘違いにも程がある

 ここは高校の苦い思い出しかいないから、食べ物をつまみに行くついでに紅葉のところに避難する。


「やっぱりここが一番落ち着く」

「そう言ってもらえて素直に喜べばいいのかよく分からないよ」

「何でよ」

「花恋の顔見る度にどうにかなりそうなのが屈辱的で」


 よくよく考えると紅葉も割と私に酷い事言っているような……。


「分かる、分かるぞ秋野〜。俺も知らなかったとはいえ、こいつに一瞬でも惚れたのが黒歴史だ」


 私の憩いの場を汚すな。そんなんだからモテないんだよ。


「あんたは男と群れてろ」

「話があるんだよ。お前の姉ちゃん紹介してくんない? お前と違ってまともでめちゃくちゃ良い人だし」

「無理」

「いいだろ紹介するくらい」

「お姉年下無しって言ってるし、そもそも男は男と恋愛しているのが一番尊いとか言ってる腐女子だから恋愛とか眼中にないよ」

「でもお前の姉ちゃん彼氏いた事あったんだろ?」

「あれよくよく思い返すと、相手とかお試しで付き合ったとは言っていたけど、一言も男とか彼氏って言ってないんだよね。だから馬鹿みたいな夢見てないで現実見ろ」


 そもそもあの発言が事実とも限らないし。


「まじかよ〜」


 その腹立つ口ぶりと情けない表情からして最初から期待はしていなかったようだけど。


「花恋もBL読むの?」

「紅葉は何でよりにもよってそこに食いつくわけ?」

「気になって。ウチBL読んだ事ないから面白いのかなって」

「……まあ、稀に。NLよりかは読んでると思う。面白いのもそれなりにはある」


 何で私がここでこんな変な暴露をしないといけないのか。恨むぞお姉。


「お前腐女子だったのか」

「断じて違う! お姉が読めっていうから読んでるのであって、別に好んで読んでるわけじゃないから!」


 非モテはセーフティハンドを私に向け、ほんの少し少し退いた。


「そ、そっか、悪かったな。でも考えてみると俺お前の趣味よく知らねーな」

「逆に知ってたら怖いよ。私だってあんたのこと知らないのに」

「そういやそうだな」

「それよりいつまでここにいるわけ? とっとと数少ない友達の元に帰りなよ」

「お前にだけは言われたくない言葉だな」


 非モテはそう言い残して友達の元に戻っていった。


「花恋って自分の事オタクだと思う?」

「私は紅葉ほど積極的にイベントに参加したいとは思わないし、グッズも欲しいと思わないから人によっては凡人の範疇だろうけど、素直にお金を落とすに値すると思った作品やゲームはしっかりと買ったり課金してるから、そこら辺疎い人からするとオタクだと思う」

「つまりオタクって事ね。ウチ、たぶん花恋の趣味知らなければ花恋の事雲の上の存在だと思って話しかける事もなかっただろうし、花恋もウチの事眼中無かったろうから花恋がオタクでウチは嬉しいよ」


 紅葉の笑顔とその言葉が私を安心させる。変な思い込みに左右されず変わらず好きを貫いてくれる、それがどれだけ喜ばしい事か私は知っているから。


「私も紅葉がずっと好きを貫いてくれて嬉しいよ。オタクでありがとう、紅葉」

「うっ……急な笑顔は心臓に悪いからせめて一拍おいてほしい」

「え〜。紅葉はそろそろ慣れてよ。長い付き合いになるんだから」

「慣れたいよウチも。普段のムスッとしてる花恋ならまだ平気なんだけど、それ故に微笑みの威力が半端ない」

「じゃあこれから紅葉と二人の時は常に笑顔でいるよ」

「嬉しいのか嬉しくないのか全然分からないよ」

「素直に喜ぶところだよ」

「ウチの心臓に耐性があれば喜んでいたよ」


 紅葉は胸を摩ってダメージを受けた心臓を労っている。


「紅葉は悪口言われてない?」

「急にどうしたの?」

「いや、私ほどの美少女と親しくしていると悪口言われるでしょ。実際、去年私が経験していたから。それが紅葉の負荷になってないかなって思って」

「大丈夫だよ。花恋の性格は有名だからね、むしろたまに同情されるよ」

「あーそうですか」


 良いのか悪いのかよく分からなくなってくるよ全く。


「そうだよ。でもね、いつも余計なお世話だなって思ってるの。確かに花恋は性格良くないけど、それを自覚して一線を超えないように気をつけていることも知ってる。何も知らない人が勝手に同情して、花恋を悪者に仕立てあげようとしているのを目の当たりにすると、実は花恋は優しいのかなって思う時もあるんだ。花恋は絶対……たぶん人を悪者にはしないから」


 もし中学の時に出会っていたのが紅葉だったら私の高校生活はもう少し充実していたのだろうか。

 ……いや、たぶん私が紅葉と友達でいる事に耐えられなくなる。

 友達にするなら夢空くらいが丁度いい。


「趣味が合うってだけで仲良くしたかったのかなって思っていたけど、もしかしたら私は紅葉のそういうところにも惹きつけられたのかもしれない」

「そういう口説き文句はウチよりも御三方に対して言ってあげて」

「何であいつらに思ってもない事言わないといけないわけ?」

「素直になりなよ。ウチからすれば、花恋は結構御三方の事気に入ってるよ。意地を無くしたらその事自覚できると思うよ」


 紅葉に言われてチラッと三人の方を見るが、いつも通りで心境の変化とかは感じられない。

 ただ、去年よりもクラスメイトに囲まれて楽しそうにしているのが少し癪に触る。


「紅葉は眼科に行ったほうがいいよ」

「じゃあ花恋は心療内科だね」


 どっちの意図でそのカウンターを出したのか聞きたくないな。

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