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花の道しるべ  作者: 輝 静
107/113

赤の他人が口出すな

「はい花恋」


 もうすぐ私たちの番が回ってくる段階で、お姉は私に見慣れた紙を手渡してきた。


「何これ」

「あんた自分のクラスの出し物すら知らないわけ? チケットだよチケット」

「……はい」


 わざわざ自分のクラスに遊びにきたと思われたくないので、チケットを陽明に渡そうとする。


「はるもう持ってるよ」


 普通子どもならやったーって言いながら受け取るものでしょ。変なところで大人びてるんだから。


「……クラスでは馴れ馴れしくしないでよ」

「はいはい。全く、姉の扱いが酷いよ全く」

「あんたもね」

「俺はくうさんに馴れ馴れしくしたことないですよ」

「あんたは記憶力も鍛えた方がいい」

「もってなんですか! もって!」

「くうちゃんいこ! にーに、これもってて!」


 ランドセルを弟に預けた陽明に引っ張られ、躊躇う間もなく教室に戻ってきた。


「あ! ねーねだ! くうちゃんねーね!」


 手を離してくれないから、陽明と同じスピードで一目散に悠優の元に駆けていく羽目になる。


「ねーね!」

「はるちゃん〜。遊びに来てくれたの〜?」

「きた!」

「ありがとう〜。はるちゃんチケット持ってる?」

「もってる! くうちゃんも!」

「じゃあ〜あそこのお姉さんにそれ渡してね〜」

「うん! くうちゃんいこ!」

「はいはい」


 すぐ隣にいるクラスメイトにチケットを渡す。


「どうぞ」

「ありがとう!」

「良い子だね〜。安蘭樹さんの妹?」

「やすらぎはるあ! 七さい!」

「ちゃんと自己紹介できて偉いね。スーパーボールたくさん掬って楽しんでね」

「うん!」


 クラスメイトは横にいる私を見て一言伝えてきた。


「小さい子泣かせちゃダメだよ」

「泣かせてないじゃん」

「信用できなくて」

「姉が言うならともかく赤の他人が言う言葉じゃないでしょ」

「くうちゃん早く〜」

「はいはい」


 陽明に付き添って一緒に屈むだけしていると、悠優が私の横にやってきた。


「はるちゃんの面倒見てくれてありがとう〜。ゆーゆもうすぐで交代だから〜ゆーゆも一緒に回るね〜」

「いや、なんで私も一緒に回らないといけないわけ?」

「はるちゃんはくうちんのこと大好きだからね〜」

「妹をだしに使うな」

「えへっ。とにかく、ちょっと待っててね〜」


 悠優はそれだけ伝えると持ち場に戻った。

 まあ、取ったスーパーボール袋に入れる係だから、目の前に移るだけだけど


「くうちゃんとらないの?」

「やりたいならあげるよ」

「はるはもうやったからくうちゃんやっていーよ」

「…………」


 一番大きいのだけ掬って悠優に渡した。


「あげる」


 悠優から渡されたスーパボールを袋ごと陽明に渡す。

 受け取って早々袋から取り出し、手を掲げて悠優に見せる。


「ねーね! もらった!」

「良かったね〜」

「はる、あまり姉ちゃんの仕事の邪魔するなよ」

「にーに! もらった!」

「良かったな。ちゃんとお礼言ったか?」


 陽明はハッとして、私と顔を合わせた。


「くうちゃんありがとう!」

「どうも。さっさと他のチケットも使い切るから行くよ」


 今度は目玉人物が居らず空いている輪投げコーナーに行く。


「なんだ空瀬、お前わざわざ遊びにくるほどクラスに情があったのか?」

「来たくて来たわけじゃないよ」

「どうぞ!」

「ん? おお。空瀬の妹か? お前と違って可愛げがあるな」

「はるはねーねのいもうとだよ」

「どう見たって悠優の妹でしょうが」

「ああ、安蘭樹さんの。通りで礼儀正しくて可愛らしい。輪投げ楽しんでおいで」

「ありがとう! くうちゃん行こ!」

「はいはい」


 暇なのか非モテは私を見て話しかけてくる。


「お前お守りとかできるんだな。しかも人の妹の」

「子どもの一挙手一投足に腹を立てるほど私の器は小さくない。躾がなってなかったり、明らかに分別のつく年齢は別だけど」

「ふーん。お前って常識的なところあるんだな」


 なんかすごいデジャヴ。男から見た私は非常識極まりないのだろうか。少なくともあんたらよりはマシだと声を大にして言いたい。

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