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花の道しるべ  作者: 輝 静
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見た目と気持ちはイコールではない

 文化祭当日、開始一時間前にホームルームを終え、男女分かれて各々浴衣を着始めた。


「くうちん大人しくしててね〜」


 浴衣の着付けができない人ばかりで、結局時間内に全員着ることができませんでしたを狙っていたというのに、割とできる人がいたというのと、悠優が着付けできたせいで、早い段階で着替え終えてしまった。


「花恋ちゃん花恋ちゃん」

「何? 文句あるわけ?」

「ないよ。そうじゃなくて、せっかくだから髪いじらせて」

「絶対やだ」


 結局押しに負けて、低めの位置でふんわりお団子ヘアにされた。

 気合い入れているようで不服しかない。


「花恋、綺麗だね」

「あんたに言われても嬉しくない。怜も文化祭くらいヘアアレンジしなよ」

「髪の毛弄ったことない」

「じゃあ私やるよ。怜ちゃん座って」


 優華は意気揚々と怜の髪を弄り始めた。

 長い髪がどんどんと編み込まれていく。体育の時髪を纏めても決して肩上にならなかったロングヘアが、今回初めて肩上どころかうなじすらも曝け出すほどコンパクトに纏まった。


「はい、出来た。どう?」

「──うん、気に入った。優華、ありがとう」

「どういたしまして」

「花恋、似合ってる?」

「さっきよりはマシになったんじゃないの」

「そっか、良かった」

「二人もヘアアレンジすれば?」

「ゆーゆはいじるほど髪長くないから〜」


 夏休み前は結構髪長かったくせに。体育祭終わって早々切りやがって。


「私もハーフアップのままでいいかな。時間もないし」


 時計を見ると文化祭開始まであと十分。そろそろ教室に戻らなければならない。


「じゃあ、私先行くから」

「教室戻らないの?」

「戻るの」

「じゃあ行き先一緒だよ」

「だから?」

「一緒に行こう」


 そう言って怜は私の手を掴み、歩き始めた。


◇◆◇◆◇


 思わず溜息が出る。

 皆がこちらに注目している。羨望の眼差しだ。


「すっごい絵になる」

「眩しすぎる」

「いつまでも眺めていたい」


 そんな言葉が歩く度に聞こえてくる。

 中学の頃までならなんとも思わなかっただろう。しかし、私はもうすでに羨望の眼差し、憧れの言葉を聞かない生活を知ってしまった。

 注目されない生活を知ってしまった。

 赤の他人から与えられる注目がいつの間にか苦痛に思えるようになってしまったらしい。


 元々私は一人でいるのが性に合うタイプの人間だった。でも、生まれた時からそんな生活は送れない事が確定していた為、好奇の目に晒されるのに慣れるよう、自己防衛本能が働いていた。

 しかし、好奇の目に晒されない生活がしばらく続いてしまったせいか、自己防衛本能が機能しなくなってしまったのだ。


 かといって、サングラス生活に戻りたいかといわれるとノーになる。

 あれは不便で仕方ない。何より、この美貌を隠して生きるなんてそんなもったいないこと、私という完璧な存在に申し訳なさすぎてできない。


「おかえり花恋……うっ、眩しい」


 でも紅葉のこういう反応は嫌いじゃない。


「ただいま」

「お、空瀬ちゃん気合い入ってるね〜」

「じゃあ今すぐ髪解いてくる」

「わー! ダメダメ、ごめんって。そのままでいて」

「はぁ……」


 再び顔を上げて教室内を見渡す。

 皆顔を逸らして反応を見られないようにしている。

 優華達にはすぐ鼻の下伸ばすくせに、私を見て反応するのがそんなに嫌なのか。失礼な奴ら。


 そんな皆が目を逸らす中、唯一目が合った男子がいた。

 もう完全に割り切ったのか、私を見て不細工な笑みを浮かべ、嫌味を言うために近づいてきた。


「お前ってほんと、喋らなければ美少女だよな」

「美少女に馴れ馴れしく話しかけるな凡人が」

「相変わらずひっどいな。じゃあイケメンなら話しかけていいのか?」

「イケメン如きで私と釣り合うわけないでしょ」

「お前の自己意識の高さにはいつも驚かされるよ。そこまでいくともう尊敬する」


 なんでこいつに嘲笑されないといけないんだ。私がするならともかく。


「花恋ちゃん、もうすぐ時間だからお客さん迎え入れる準備するよ。ごめんね持無君、花恋ちゃん連れていくね」

「は、はい! もちろんです! どうぞどうぞ! そ、その、浴衣姿の天乃さんも綺麗ですね!」


 なぜ私に対しては伸びなかった鼻の下が伸びているんだ。

 ムカつく。


「ありがとう。持無君も浴衣似合っているね。かっこいいよ」


 非モテは胸を抑えて固まっていた。その顔は情けなく、幸せが溢れ出ていた。


「よくもまあ思っていない事ペラペラと言えるね」

「嘘じゃないよ。皆浴衣似合っていてかっこいいし可愛いし綺麗だよ。でもね、花恋ちゃんが一番素敵だよ」


 そんな笑顔向けられたって私には効かない。

 でも、一応優華の頬を摘んで向けられた笑顔を崩しておく。

本来次話のエピソードは書き終わっていたのですが、読み返しの結果没にした為、少し投稿期間空きます。


追加で今後作中で語らないであろう話を少し。読まなくても支障はないです。


悠優が美容院にいけるタイミングは陽明の事を誰かが面倒を見てくれる時だけで、行けても年に一、二回なので、切る時は結構バッサリいきます。しかし、少し癖があり、ショートカットにすると寝癖が酷くて直すのに時間がかかるため、切ってもミディアムヘアぐらいです。

悠優本人はロングヘアにして縮毛矯正したいとずっと思っていますが、現状はその願い叶わずです。

悠優にとって花恋や怜の髪は理想そのものです。それ故にあまり髪をいじらない二人をもったいないと感じています。(花恋は常にポニテ。怜は手を加えず、体育の時に纏めるだけ)

ちなみに優華は割と髪を弄っており、ハーフアップにしたり、編み込んだり、お団子作ったり、時には巻いたりなどしています。

花恋は美意識はありますけどオシャレに関しては特に意識しておらず、ジャージや寝巻きでの外出も抵抗感ゼロだったりします。

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― 新着の感想 ―
一気に2度読みしました! そしてまた夜に3周目読みます!笑 久々にどハマりする作品です。 ありがとう…本当にありがとう…!
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