バーにて
危険度マックスのバーに潜入開始。
その前にスーツを買う。
少しはおしゃれになったかな。
ドンテでは不安なので港近くのフリーマーケットで購入。
うん? 臭いな。新品同様って言ってたのに。まあいいか。
「なあアトリ。どうだ似合うか? 」
「はいご主人様は何でもお似合いでございます」
こういうところは従順でいいんだけど出来ればきちんと指摘して欲しいんだよね。
良い子なんだけど役に立たないところがある。どうしても不安になる。
やはり聞くべきでは無かったかな。
「ちなみに派手すぎないか? 」
「大丈夫ですお似合いです。とっても素敵です」
やっぱり同じか。正直な意見が欲しいんだよな。
ボジティブで嬉しいんだがちっとも参考にならないんだよね。
まあいいか。夜だから見えないだろうさ。
夜。
「いらっしゃいませ。ドリンクバーアクアへようこそ」
「あれ…… お洒落なバーって聞いたんだけど? 」
「ふふふ…… 済みません。そのスーツぶかぶかですよ。しかも穴が空いてます」
きちんと指摘するさすがは夜のお姉さん。
ドンテでは信用できないとフリーマーケットで購入したのが裏目に出る。
「ここって夜営業? 」
「ははは…… 何を言ってるんですかお客さん。昼間からやってますよ」
どうやら本当にただのドリンクバーに来てしまったらしい。
そう言えば第一世界でも似た様なことがあったっけ。
あの時はサラダバーだったな。こっちはドリンクバー。
バーはバーでもドリンクバーではお話にならない。
これならアトリを連れてくればよかった。
邪魔になると思い宿に置いてきちゃった。
「奥にどうぞ」
バーはカウンターしかない。
約十人が腰かけている。
俺は一番端へ。
「痛えな! 気をつけろ! 」
「そうだぞ兄ちゃん。あれお子様じゃねえか。
だったらミルクでも飲んでな! あははは! 」
海の荒れくれ者たちが笑っている。
さすがは夜だけあって柄が悪い。緊張が走る。
こういう時は無視するのが一番。
最悪言葉の暴力を使えばいい。
俺は世界最強の冒険者なのだからな。お前らとは格が違うのさ。
心の中で毒づく。
ではさっそくミルクを注文。
ここでは一時間飲み放題。とは言え皆飲み物よりも話に夢中。
聞き耳を立てれば何か有力な情報が得られるかもしれない。
目的はアンと流浪の民の行方。それから仲間探し。
ドリンクバーだが注文すればいちいち立たなくて済むので助かる。
ドリンクバーも名前だけかな。
回る伝統的なアレと似た様なシステム。
「ははは! 本当にミルクを頼みやがった! これはお笑いだね! 」
これがオーダー制の弱点。周りに中身が見えるし飲み物も分かる。
「はい夜ミルクお待ち」
怪しげなミルク。どうもここのママ特製らしい。
では一杯。まろやかで心地いい。ちょっと温いかな。
ママに作り方を聞いてみると恥ずかしそうに秘密だと教えてくれない。
こうしてミルクを三杯頼み腹が膨れたところでサイダーに切り替える。
アップルサイダーとメロンサイダーとミックスサイダーで様子を見る。
もちろんお腹の調子だよ。
「あのお客さん…… つまみも頼んでくれないと」
まずい。ちっとも分かってなかった。これでは田舎者だと馬鹿にされる。
「ははは! これだから子供は! 」
「うるさいぞお主! 静かにせんか! 」
隣の隣の席から声が上がった。
今まで大人しく炭酸水を飲んでいたお爺さん。
帽子で分からなかったがよく見るとドンテにいたお爺さん。
もしかして俺の為に注意してくれたのか?
あれよく見ると夢に出て来たハンター。
と言うことは……
「やるのか爺? 俺たちは強いぞ! 」
すぐに喧嘩を吹っ掛ける情けない連中。
静かに飲めないのかな。
これはまずい。不穏な展開。俺も巻き込まれる?
「受けて立つ! 。
何と格好いい。これは腕利きのガンマンと見てまず間違いない。
「釣りはいい」
そう言って店を出る。悪役の男たちも倣う。
俺もそうしたいんだけどどうもお腹の調子がね。
二十四金を一枚出してトイレへ駆け込む。
トイレは自然現象だから仕方ないよね。
続く




