アンに告白するつもりがなぜかモンスターに愛の告白を
強風の中を必死に耐えハックに追いつく。
ハックは相変わらずドラゴンを惹きつけようともがいている。
だがドラゴンが標的を変えるまでには至ってない。
結局は無駄な悪足掻きだったのだろうか?
だがこれ以上は打つ手がない。どうする? どうしたらいい?
アン絶体絶命のピンチでただ見守るしかない。
リーダーとして情けない限り。
やっぱりエクセルの助けがないと何も出来ないや。
「こっちだ化け物! 俺様が倒せるかな? 」
めげないハックは最後まで戦う。石を投げ無理矢理気を引こうとする。
怒り狂うドラゴンは一瞬だけ目を向けるがすぐに元通り。
最悪なことに依然アンのピンチに変わりはない。
「アン! アーン! 」
アンは逃げるのに必死でこちらには気づいてない様子。
「アン! 急げアン! 」
どんなに叫ぼうとアンには届かない。
分かり切っていたことだが実感するのは辛い。
「アン! アン! アン! 」
やっぱりダメか。心が繋がってると思ってたのに。
代わりにドラゴンがピクっとする。
「待って様子がおかしい。あなたの叫びに反応してるみたい。もう一度」
随分と冷静なアプリン。今は一刻を争ってるんだが。
「アン! いや違う。アンを逃がしてやってくれ! 」
アプリンが言うようにドラゴンは反応し言葉を理解してるよう。
そんな気がしてならない。たとえそうでもさすがに説得は無理だろうな。
「アプリン…… 」
「今よ!。早くレアアイテム【愛の言霊】を取り出しなさい! 」
アプリンはそう言いながら暴言を吐く。
彼女は俺と同じ選ばれし者だった。
ワードフォルダーからカードを取り出し投げる。
それを繰り返してドラゴンの注意を引く。
もちろんただの暴言カードではノーダメージ。
だが繰り返せばドラゴンも逃げるかもしれない。あり得ないことだが。
アプリンは尽きるまで暴言を吐き続ける。
うん。悲しいほど効果がない。ただのカードでは当然。
しかしぼったくり爺さんが言ってたようにレアアイテムなら別だ。
一か八かに賭けるしかない。
アンは立ち上がり再び走り出した。もうすぐ第三世界。
だが非情にもドラゴンは後ろから突撃を開始する。
「止めろ! 止めるんだ! 頼む! 」
もうドラゴンの耳に届くことはない。
「あれ…… もしかしてエクセル…… 」
「ハック! 今はそんなこと言ってる場合じゃないでしょう? 」
アプリンが最後のカードでドラゴンを威嚇。
「ゲンちゃん! 早く! 」
仕方なくレアアイテム【愛の言霊】を取り出す。
ギャア!
ギャア!
「ゲン間に合わないぞ! 早くしろ! 」
「クソ! これはアン用なのに…… 」
そのアンが居なくなったら元も子もないが。でももったいないよな……
「早く! 早く! ゲーン! 」
「分かったよ! 届け! 」
レアアイテム【愛の言霊】がドラゴンへ一直線。
その瞬間光が破裂する。
「きゃああ! 」
アンはドラゴンの体で吹っ飛ばされる形になったがすぐに起き上がる。
どうやら軽傷のようだ。
こうしてアンは辛くも第三世界に逃れる。
アン救出作戦は成功。
後は追いかけて捕まえればいい。
告白は落ち着いてからゆっくりすればいいさ。
焦っても意味がない。
ドラゴンは光の破裂と共にどこかへと消えてしまった。
もう今では幻だったのではと思うほど。
ふう…… もう限界。
「ゲン! お前よくやったぞ! 」
「ゲンちゃん。勝利したんだから! 」
二人が励ましてくれる。だが肝心のアンは行ってしまった。
「二人ともありがとう」
「残念だったわね。【愛の言霊】はアンさん用だったんでしょう? 」
「あーでもそれでアンが助かったんだから良かったよ。また買えばいい」
でもやっぱりもったいなかったかな。二人から言われるとつい欲が出る。
「レアアイテムだから難しいと思うわよ」
アプリンはその手のことに詳しいらしい。
アプリンの隠された能力と冷静さ。
「大丈夫。きっと何とかなるさ。また爺さんに会えばいいんだ」
その爺さんが神出鬼没だから困るんだよな。
大体今回だってウサギ耳のお礼でタダにしてもらった訳で。
次回からは当然料金が掛かる。
プライスレスである以上いくらぼったくられるか分かったものじゃない。
これならいっそのこと愛の言霊なしでそのまま告白した方がいい。
もうアンも俺と会ってる訳だからその気になっていてもおかしくない。
「そうだな。それよりも今はドラゴンの正体だ」
「待ってハック! それ以上はお願い」
アプリンにコントロールされてしまった。もう何も発しない。
「おい正体って何だよ? ハック? アプリン? 」
「知らない方が良いこともあるの。あなたはよくやった」
「おいそれはないよ。なあハック」
だがハックは口を噤んだまま。
続く




