変態人間 ライトニングの正しい使い方
真っ暗な洞窟内。いくら夜目が利くと言っても限界がある。
いやああ!
突然アプリンの悲鳴が響き渡る。
「どうした? 」
「何? 何があったの? 」
すかさずハックとエクセルが反応。
「お願い何とかして! 」
「うわああ! 」
暗闇の中いきなり抱き着かれてパニック寸前。
でもよく考えると抱き着いてきたのはアプリンだろう。
震えてどうする? まずは深呼吸。
抑えて抑えて。格好良く行こう。
「大丈夫かアプリン? 」
「ごめんなさい。体を触られたの。気持ち悪くて気持ち悪くて」
何だよビックリさせないでくれよ。一瞬何事かと思ったぜ。
俺だって体を抱き着かれたからな…… アプリンにだけどさ。
気持ちよくて気持ちよくて。
おっと…… おかしな感想を言えば誤解を招く恐れがある。
「お願い早く! 」
アプリンは触られたと言うが事実ならハックめ何て大胆な奴。
「きゃああ! まだ触って来る! 早く! 早く! 」
慌てるアプリンはパニック寸前。
まずは落ちつくように促す。
「こらハック! いい加減にしろよな! 隊の秩序を乱すんじゃない! 」
ハックの悪ふざけを決して許さない。
暗闇に紛れて欲望を満たそうとする悪者は許さない。
たとえ仲間でも許すものか。
「あん? 俺がどうしたって? 」
「何で目の前にいるんだよ! 」
「知るかよ! 勝手だろ! 」
「そうだけど…… あれおかしいな」
ハックでないとしたら声しか聞こえないエクセルが怪しい。
「エクセル…… 君って奴は」
「ふざけないで! 私のはずないでしょう? 」
怒りのピンタを喰らう。
「冗談に決まってるだろう? ははは…… 」
いや俺は信じてたよ。でも他にいないし… まさか俺なのか?
「アプリン。今でも触ってるのか? 」
「うん! お願い早く取ってよ! 」
ハックは前にいる。エクセルも違う。だとすれば犯人は誰だ?
それとも暗闇に乗じておかしな技でアプリンをハックが?
「見損なったよハック! 君なんだろ? お願いだから名乗り出てくれ! 」
やはりハックが怪しい。他に考えられない。
「おいおいそれは無理があるって。いくらゲンでも怒るぞ! 」
怒り出す始末のハック。これは怪しい。
「皆動かないで! 」
エクセルがライトを照らす。だが光量が弱くほとんど見えない。
ここはダンジョンでただでさえ暗いのに闇はどんどん濃くなって行く。
深く暗い底の底。そこに俺たちはいる。比喩だけどね。
「ダメみたい…… 」
「ライトニングを使えば? 」
「ああ…… 忘れてた。これってこういう時にも使えたわね」
ごく一般的な使い方のはずなのにエクセルには意外だと。
「早く! 」
「もうあなたの奇行専門だと…… ライトニング! 」
こうして謎の光が放たれた。
いつもはタイミングよく大事なところを隠すためのもの。
若干遅れるのでそこだけは修正する必要がある。
だからって本来の用途を忘れるなよな。
ライトニングによって暴かれた謎の物体。
「うえええ! 眩しい! その光を向けるんじゃねえ! 」
変態人間が現れた。
「何だこいつは? 」
「闇夜に女の子を狙う変態。と言ってもモンスターと人間のハーフ。
あなたたちが理性を失くした時によく似てるけど似て非なるものよ」
エクセルのイマイチよく分からない説明。適当に受け流す。
「そうするとこいつはここに棲みついてるのか? 」
「ええ変態人間は暗闇を好むの」
「どうする? 言葉の暴力で…… 」
「駄目よ! もう正体を知ってしまった。ハーフでは警告を二つもらうことに。
それではたとえ倒しても警告地獄に。一匹とは限らない」
エクセルの助言はもっともだがよく考えればアプリンがいる。
「アプリン。俺の警告を消してくれ! 」
「もちろん。だから早くその化け物を! 」
これで問題解決。消滅させられるぞ。
「待って! ダンジョン内ではその魔法は無効になる」
「嘘? 私の能力が無効? 」
ショックを隠せないアプリン。
さすがは案内役の妖精さん。すべてを知り尽くしている。
「だったらどうするのよ? 」
「ここは説得して真人間に戻す」
エクセルは無茶を言う。真人間になど戻しようがない。
「あの…… そろそろお暇しまして…… 」
礼儀正しい変態人間は挨拶を済まし逃げようとする。
「待ちなさい! 勝手に触って良いと思ってるの? 」
エクセルによる長い説教が始まった。
悪いのはこいつだから仕方ないけど。なぜ俺たちまで付き合う訳?
ハックは分かるけどさ。せめて正座は勘弁してよ。足が痛い。
続く




