ゲンと二つの夢
一ヶ月の休息を経て戻って来たエクセルは体力が有り余ってるらしい。
それに引き換え脱獄してどうにかここまでやって来た俺たちはもう限界。
特にハックはエネルギー切れを起こしている。
それもそのはず。昨夜から何も食べず最低限の水しか摂取してない。
その水だって海水だもんな。
とにかく休息と食事で体力回復を図るのが先決。
妖精さんはそんなことは頭になくさっさと先に行ってしまう。
「待ってくれよ! ハアハア」
「置いて行くぞハック! 」
だらしがないハックを見捨ててどうにか妖精に張り付く。
ハックはお荷物と化した。まあ大丈夫でしょう。自力で何とかなるよきっと。
悪路を必死について行く。
ハックの姿はもう見えない。随分離れてしまったらしい。
真っ直ぐの道だと思ったら左にくねくね右にくねくね。
妖精に悪路も障害物もない。だから俺たちがどれだけ大変か分からない。
ハックの姿は完全に見えなくなってしまった。
「ストップ! ここが最初の村。ここを抜ければ中心街。
多くの情報が集まってると言う話らしい。
「ハックは? 」
「まだだね。運動不足がたたったらしいよ」
「もうしょうがないんだから。ここで待ってて。情報収集してくる」
エクセルに任せて俺はハックを待つことにした。
とにかく来るまで暇なので太陽をさけ木陰で横になる。
だがノロノロのハックは姿を中々見せない。
もうギブアップして倒れてるか?
眠くなってきたな……
いつの間にか夢の世界へ。
ウサギの夢を見るつもりがなぜか妖精の夢を見る。
ダメだエクセル! はあはあ……これ以上は止めるんだ!
妖精の国に招待された俺はいつの間にか可愛らしい妖精たちに追いかけられる。
最初は笑顔のエクセルがいつの間にか怒りを爆発させる。
エクセル! エクセル! 元の可愛らしい妖精に戻ってくれ。エクセル!
ふう…… 夢だったか。全身汗まみれだ。こう暑くて敵わない。
それにしてもエクセルがあんな風になるなんて恐ろしい夢だったぜ。
どうやら今回は妖精がポイントになるようだ。
まだハックは来ないのか。仕方ないすることもないし寝直すかな。
「動かないよ! 足が! 足が! 」
鉛のように重い体。
それもそのはず硬い甲羅に覆われてるのだから。
ウサギとカメでは身体能力以上に甲羅の重さがある。
プラスに働けばマイナスに働くことだって。
「おいゲン! 」
いきなり大声で呼びかけられる。ハックだ。
カメ姿のハックが浮かぶが実際は俺がカメ。
そうするとハックがウサギなのか?
いやただのつまらない夢だ。また夢を見たらしい。
あまり気にしないのが良い。
ハックだって心配してるじゃないか。
「遅いぞハック。待ちくたびれたよ」
「うるさい! 俺は足が遅いんだよ。それに脱獄で使い果たしたんだ」
言い訳を並べるハックは流浪の民のくせに歩くのが大嫌いだと言う珍しい男。
「エクセルが待ってるよ」
「だから待たせておけばいいんだよ! 」
エクセルが居ないものだから好き勝手なことばかり。
「あの妖精は俺たちが居なければ一人では何もできないのさ。
こんな苦しい思いをしてるのに自分はお空を飛んでいるんだぜ。
こっちの苦しみも痛みも分かるはずがない」
断定してしまう。確かにハックの言うことも分かる。嫌ってほど身に染みるさ。
それでも強く言えないのは仲間を思ってるからではない。
ただエクセルが怖いのだ。
エンゼルカードも自由に使えるのだしもう少し彼女の肩を持ってもいいだろう。
少々おだてればもっと面白いことだってさせてくれるはずさ。
「ハック言い過ぎだぞ! 」
「何だと? 俺は疲れてるんだ! 」
疲れから頭が回らない。攻撃的になるハック。
言い争いがエスカレートする前にエクセルが戻って来る。
「ちょっと何やってるのよ二人とも! 本当に子供なんだから」
「エクセルのせいでしょう? 」
「そうだぜ。この妖精さんはよ」
二人で文句を言うが一睨みされてお終い。
まだ第二世界に到着したばかり。
急がなくてはいけない。
ハックと言い争いをしてる暇もエクセルにお説教されてる余裕もない。
俺にはアン。結婚を誓い合った仲のアンがいる。
第一世界ではアンを目の前にして無念のゲームオーバー。
あれだって聴衆が煽るから。
大人しく俺たちの行く末を見守ればいいものを面白がってヤジを飛ばすんだもんな。
アン…… 君は今どこにいるの?
続く
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