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脱獄・ゲン逃走中

ざわざわ

ざわざわ

夜になり急に騒がしくなる。


カチャリ。

看守がトイレに立ってすぐに異変を感じた。

新入りの房が開く。

中から二人が出てくる。脱走?


うおおお!

周りは大騒ぎだが騒がしいのはいつものことなので不自然さはない。

ただ雰囲気だけはどうにも隠せない。

新入りは何を思ったのかこちらに近づいてきた。

いいぞいいぞ。これは運が向いてきたかな。


カチャリ。

再び房が開く。

願ってもない千載一遇のチャンス。

「行こうぜ! 」

「俺はいい。それよりもあの話を伝えてくれ」

アルトはここに留まるそう。それが賢明かもな。

逃げたらどんな目に遭わされるか分からないからな。

彼の話だと恐らくモンスターが見守る鉄壁の監獄。

そこに行った者が戻った試しはないそう。

大げさな気もするがなぜか足が震える。


「分かったよ。本当にいいんだな? 」

心変わりすることもあるので念押しする。

脱走には人が多い方が安心できるが見つかる可能性が高い。

「早く行け! 捕まるぞ! 」

まったく情けないアルトさんだ。


「助けに来たぜゲン! さあこっちだ! 」

よく見ればこの新入りはハックだった。

「助けに来てくれたのかハック? 」

「いや脱走には仲間が多い方がいいからな。ついでさ。ただそれだけ」

とんでもない言いぐさだがただの照れ隠しとも言える。

「よし行こうハック! 」

「こっちだ着いてきてくれ! 」


「おい何をやってる! 」

看守がトイレから戻ってきた。

話をしてる隙に戻って来る失態。大失態だ。

これでは脱走不可能。万事休すか?


うおおお! 

アルトが看守に襲い掛かる。

「よし今だ。行きやがれ! 」

アルトの執拗な抵抗により脱出に成功。

夜で警備が手薄だったのが勝因? 

意図も簡単に房の鍵を開けたハックのピッキング技術が大きい。

どうにか建物を抜け敷地内を気付かれないように急ぎ足。

暗闇に紛れて海へ。

係留されていた船で航海する。


「おいどこに向かう気だ? 」

「俺たちは逃亡者。もう第一エリアには居られない。急いで第二エリアに向かう」

ハックはこの世界のことを多少知っている。だから安心して任せられる。

「でもアンは? 」

「もうとっくに移動したよ。恐らく第二エリアにいるはずだ」

「そうか…… お前はどうする気だ? 」

第二エリアでハックとは別れることになる。

「どうせ暇だからお前の手伝いをしてやるよ」

ハックは再び協力すると言ってくれた。

さあこれで安心して第二エリアへ行ける。

夜の海にレッツゴー!

勢いよく漕ぎ出した俺たち。

向かうはまだ見ぬ第二世界。

どのような世界が広がっているのだろう。

今からワクワクが止まらない。


「なあハックは第二世界について知ってるか? 」

「さあな。それは秘密だからな。よその者に教えれば罰を喰らうのは俺だ」

「ハック! ハック! 」

「静かにしてくれ。化け物が姿を見せる」

今俺たちはすべてを没収されてカードも金も食料もない。

ちなみに暴言カードは今エクセルが預かってるらしい。

だからもし化け物に遭遇すればひとたまりもない。

もちろん化け物もモンスターの一種。

殺されまではしないだろうがどうかな。

化け物に怯えるハックを見ると俺まで体が冷えてくる。

異常な状態。


「ハック大丈夫か? 」

「いいから着いたら起こしてくれ」

ハックはそう言うとイビキを掻きだす。

いやどこでも眠れる奴が本物と言うが…… 肝が据わっているな。

ハックは寝てしまい当てにならない。

何としても第二世界に着いてやる。

諦めれば再び刑務所の中。

もう二度と御免だ。


月明りを頼りに船を漕ぐ。

だがその月も姿を隠す。

そうなるともう今どこへ向かい漕いでるのかが分からなくなる。

確か北に向かってるはず。

だがコンパスさえ持ってきてないのだから確かめようがない。

そんな孤独な夜を乗り越え朝が過ぎ昼間になるとようやく港が見えて来た。


「あーあ良く寝た。あれもう着いたのか? 」

呑気なハック。欠伸をして立ち上がろうとする。

だがまだ港には遠い。

バランスを崩して落下。

まったく世話の焼ける奴だ。

「ははは! 冗談に決まってる。冗談だ! 」

溺れながら余裕を見せる。

「さあ行こうぜ! 」

格好をつけごまかそうとするが無理がある。


第二世界へ。


                  続く

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