食欲不振だけどお腹空いた
危うくモンスターみたいな見た目の店主にやられるところだった。
だが運よく仲間の助けにより逆に店主を確保。
まったく何がやってないシンだよな。真っクロじゃないか。
囚われの少女たちを救出。その一人が依頼人の娘。
これによりアンたちの行き先が判明する。
「俺を囮に使いやがって! もっと前に助けろよな! 」
「ゲンは少し黙ってて! ハック説明お願い」
「ああたぶん依頼人の得た情報は正しいだろう。
流浪の民には二種類あって俺たちみたいに空き家に棲みつくパターン。
それから頼み込んで一緒に住まわせてもらうパターン。
俺たちはほとんど誰にも知られずにひっそりと暮らす。
そして時が来たら移動をする。それを繰り返すのが俺たち流浪の民。
誰が名付けたか知らないが俺はこの流浪の民って言葉気に入ってるんだよな。
流浪の民はその存在を一部の者にしか知られていない。
そして数ヶ月ごとに場所を変えている。どこに行くかはその時の気分次第」
よく知るハックがそう断言するなら期待が持てそうだ。
「それで居場所を知ってると言うので依頼を受けたの」
説明を聞きようやく納得。
「どうやらアンさんたちは南の方にいるみたいね」
おかしいな。確か東に進めば願いが叶うとドンテのおじさんが言ってなったっけ?
やっぱり適当なことを抜かしてたかあの親父め。
「南? 東じゃなくて南なのか? 」
「ええこれはお別れの日に直接流浪の民の一人から聞いた話だそう」
情報を得た俺たちは明日一番で南に向かうことに。
方角さえ分れば見つけるのも訳ない。
「俺あの後大変だったんだからさ」
「分かった。分かった。ほらかばんを見せて。随分減ったみたいね。
一体どんな手を使ったの? 」
興味津々のエクセル。絶体に教えてやるものか。
「かばんの中身を処分してからあの店に行ったのね? 」
どうやら入ったところまで見ていたらしい。だったら止めてくれよな。
本当に俺を囮で使うつもりだったとはまったく血も涙もない妖精さんだこと。
「お前ら! 」
「ほら明日も早いわよ。もう寝なさい」
俺の追及を意図も簡単にかわすと子ども扱いして叱りつける。
本当に嫌になるぜ。ああ眠れるかな。
「そうだゲン。あなたに伝言。言葉の暴力により警告が二枚」
「うわああ! そんな馬鹿な」
「うるさい! もう寝なさい! 」
こうして長い一日を終える。
翌日。
エクセルに叩き起こされ眠い目を擦りながら南へ旅立つ。
「まだ朝食べてないんだけど…… 」
「昨日で懲りたでしょう? 」
「いやそう言うことじゃないんですが…… 」
ウエップ……
思い出すだけで吐き気がするのは確か。
だから昨日はほとんど食べてない。
このまま昼まで食べさせない気か?
鬼のような妖精さんだ。
「頑張れってゲン! 」
ハックは生意気にも俺を励ます。立場が逆転したか? まあいいや。
「それでどこに向かってるのハック? 」
前を行く妖精さんは元気。一人飛び回っている。
「俺に聞かれても…… 」
どうやら奴も叩き起こされたのだろう。
市場。
「なあハック。食いものないの? 腹減ったよ」
「知るかよ! その辺で盗んでくればいいだろ」
とんでもない発言をする盗みの天才ハック。
自らはホワイトハッカーなどと称してるがとんでもないただのコソ泥。
実はブラックハッカーじゃないのか?
「仕方ないな。ほら食うか? 」
果物を取ってよこすハック。
「ありがとう。本当にいいんだな? 」
「ははは…… 俺に聞くなよ。仲間じゃないか」
多少意味不明だけどまあいいや。
「泥棒! 」
市場に差し掛かると女性の叫び声が聞こえて来た。
「ははは…… 朝からうるさいなこの町は」
歩き続けて一時間。宿屋から南進。
まだ眠いのに無理矢理歩かされた。鬼の隊長エクセル。
自分は飛んでるだけだから楽でいいが歩いてる身にもなってくれよな。
愚痴ってると虫のようにまとわりつくから黙ってるけどさ。
困った可愛いらしい妖精さん。
悪口を言う時さえも可愛らしいをつけないと警告を受けることになる。
これはエクセルの要望なので従うしかない。
言葉の暴力は受け取り手の気持ちもあるのだから。
この辺は本当にデリケートだ。
いい加減なファンタジーには相応しくない。
続く




