隠れクエスト・コンプリート
絶体絶命の大ピンチ。
モンスターにではなくモンスター専門店の店主に追い詰められたのが情けない。
しかも人間だから下手に手が出せない。これは暴言を吐き過ぎた罰なのか?
「待ちなさい! 」
ハアハア
ハアハア
息を切らし登場したのはハック。その後ろでエクセルが何事か喚いている。
光を纏った小さな妖精さんはハックを盾に立ち向かう。
「何だお前ら? こいつの仲間シンか? 」
興奮していた男が我に返る。
化け物に変化したのは一時的。決して彼はモンスターではない。
冷静さを取り戻せばサービス好きの気の良い店主。
「ほら大人しくしなさい! あなたの悪事はもう暴かれたわよ」
エクセルが言うには彼はとんでもない悪党だとか。
店に来る若い女性を次々監禁したらしい。
「この家には行方不明の女性が何人も閉じ込められてるって噂よ」
暗くてよく分からなかったがここは玄関の前らしい。
恐らく俺を家に監禁しゆっくり処理しようとしたのだろう。
しかし危機一髪のところでエクセルたちが助けに来た。
仲間の到着が少しでも遅れていたらと思うと生きた心地がしない。
「ほら無駄な抵抗は止しなさい! 」
エクセルはハックを盾に迫る。
「もう少しだったのに残念だシン」
三対一では分がないと悟ったのか抵抗する様子は見られない。
冷静さを取り戻した店主は大人しく投降する…… はずもなく。
「覚えてろよ! 」
シンを使わずに機敏な動きで暗闇に隠れる。
「うわどこ行った? 」
慣れたもので一瞬で姿を消してしまう。
隙を突いて逃げるとはさすがは卑怯で汚い。
エクセルがライトニングを使用。
そうか…… その手があったか。
ライトニングで辺り一帯が明るく輝く。
暗闇に逃れて安心しきっている男を難なく確保。
男を縛り脅威がなくなったところで尋問を開始。
「お前一体何者だ? 」
まずは自己紹介をしてもらう。
だが口を割ろうとはしない。黙秘を貫く。
悪党の癖にそこだけは根性がある。
無駄な抵抗だとは思うけれどな。
「気に入った女の子を家に閉じ込めたでしょう? 」
「知らないシンよ。記憶にないシンよ」
目の前に証拠があるのに言い逃れようとするゲスな男。
「嘘を吐かない! 近所からの目撃情報もあるんですからね」
「ふふふ…… 勝手にしろ! 俺は知らないシンよ」
本性を現したなこのたこ坊主。彼の余裕は一体どこから?
ガチャガチャ
ガチャガチャ
家には鍵がかかっている。
「もう鍵はどこよ? ゆっくりしてる暇はないの! 」
「どうした? 開けてみたらいいシン」
男は鍵がなければ開かないと思ってる。
俺もそう思うがこちらにはハックが付いている。
自慢のピッキングで難なく開錠。
「おい止めろ! 止めてくれ! 」
叫ぶがもう開いてしまった。手遅れだ。
男を放置し中へ突入。
噂通り男の家には多くの女性が監禁されていた。
「大丈夫ですか? 」
安堵で泣き叫ぶ者。未だに現実を受け止められずにいる者も。
可哀想に俺をあいつだと勘違いして怯え混乱する者まで。
「大丈夫ですか? 助けに来ました」
「ありがとう刑事さん」
「いえ違がいます。俺は言の葉村からやって来ただの冒険者ですよ。
もう心配いりません」
どうにか落ち着かせる。
「あの男が犯人です」
案の定男は若い女性を監禁していた。
近所の噂にもなっていた男の異常な行動。
「くそ…… 僕のお嫁さんになって欲しかっただけシンよ」
男の歪んだ欲望がが今回の事件を引き起こしたと言える。
一件落着。
「ありがとうエクセル。それにハック。二人のお陰で命拾いした」
「ああ気にしないで。あなたを囮に利用しただけだから。
まさかあなたがあのお店に行くとはね。本当にラッキーだった」
冷酷非情。まさかこの俺を囮に使ったていうのか?
「エクセル…… 」
エクセルは解放された女性たちをじっと見ている。
まるで誰かを探しているかのよう。
「ああいた。あなたがドンテ横の娘さん」
名前をミヨと言った。男の店に行ってから行方が分からなくなっていた。
ミヨを依頼人の元へ。
こうして任務は完了。
コンプリート。
宿に戻る。
「ねえエクセル。こんな依頼なぜ受けたんだ? 」
疑問でしかない。
クエストは冒険者の基本だがエクセルにはエンゼルカードがある。
だから金を稼ぐ必要はない。
それなのに…… 助けられたからいいけどさ。
「流浪の民の情報を得るために決まってるでしょう」
エクセルはため息を吐く。
「ああそう言うことね」
一旦途切れたアンの手掛かり。
ベルから預かった手紙には具体的な場所は記されてなった。
結局振り出しに戻ったのだが希望はまだ残されていたらしい。
続く




