グリーンアップルできれいにしましょう
手紙には詳しい場所は記されていなかった。
アンがあえてそうしたのか定かではないが。
どうであれお世話になってる方の迷惑にならないよう配慮すべきだろう。
これによりアン捜索は難航することに。
出来ればアンたちが別の場所に移動する前に見つけ出したいが。
特に第二世界世界に行かれたら厄介だ。
「前の手紙では今月まではこの世界にいるって」
ベルの話が本当ならまだどうにか余裕があることになる。
とは言えゆっくりはしていられない。
手掛かりさえあればいいのだが。
さすがにこれ以上流浪の民に頼る訳には行かないしな。
「ありがとうございます。では俺たちはこれで」
「ちょっと待って! この手紙持って行って」
ベルは協力してくれるらしい。
「ありがとう。また寄るよ」
こうして皆と別れることに。
「ほらハック。お前も手伝っておやり! 」
「ええ? 何で俺が? 今生還した戦士を戦場に戻す気? 血も涙もない」
「大げさだね。役目を果したら戻って来ればいいだろ? 」
おばさんに命じられ仕方なくハックが再び仲間に。
「まったくしょうがないな」
「悪いなハック」
「いいよ。乗り掛った船だ。最後まで面倒を見てやるよ」
意外にも男らしいハック。
照れながらもついて来る。
こうしてハックを正式に仲間に加え三人でアン探しを続行することに。
この世界のどこかにアンはいる。それは間違いない。
それだけで希望が湧いてきた。
もうすぐだ。もうすぐアンに会える。
とりあえず宿屋へ戻るとするか。近道を選択。
少々不安だがハックに教えられた近道を行くことに。
「なあ本当にこっちで良いのか? 」
「ああこの真っ直ぐの道を通り抜ければドンテに出れる」
危険だから遠回りしようと言うのにハックは聞かない。
「大丈夫。大丈夫。俺に任せてればいい。奴らだっていやしないさ」
ハックを捕まえた密造業者は確かにこの辺りをうろついてないだろう。
だが敵は他にもたくさんいる。
ハックを先頭に。
「何だこれ? 」
ハックが不審な緑の果実を拾う。
「これはグリーンアップル」
物知りの妖精さんが自慢げにレアアイテムを紹介。
「ねえ美味いの? 」
首を振るエクセル。
「これには警告の累積を減らす効果があるの」
それは凄いな。信じられない。
一口齧ってみる。
うわ…… 酸っぱくておいしくない。
「ほら我慢して全部食べなさい! 効果は表れないわよ」
エクセルに言われるまま完食。
「どう? お味の方は? 」
「うーん。最初酸っぱくてちっとも美味しくなかった。でも慣れれば癖になる味」
「我慢なさい…… って嘘でしょう? まあいいわ。これできれいさっぱり」
「本当かよ? 」
「ええ、恐らくね。一口齧れば一枚分が消える。完食すれば当然累積はなくなる」
「俺は遠慮するぜ」
ハックは先に行くぞと歩き出した。
「待てよ! 先に行ったら危ないって」
目の前を若い男が通り抜ける。そのどさくさに先制攻撃。
どうやらクズモンスターらしい。
さっそくカードを取り出す。
【ぶっ飛ばすぞ! 】
言葉の暴力を投げかける。
うぎゃあああ!
モンスター消滅。
【引きちぎるぞ! 】 のカードを手に入れた。
続いて三人組。
何と手には猟銃が。
ここは迷ってる暇はない。
【熊だ! 】
適切なカードを切る。
「どこだ? どこだ? 」
男たちは指し示した方向に走っていく。
どうやらモンスターではなくただの猟友会の方らしい。
カードの切り方次第ではこのように言葉の暴力とはならずに逃げ切ることが可能。
人間に向けた言葉の暴力もここでは無効。
警告を出されることはないレアケース。
続けて鼻たれ小僧が現れた。
この時代にいるはずがない。我が村だっていない絶滅危惧種。
ふざけた野郎だ。モンスター確定だな。
【引きちぎるぞ! 】
うわーん
男の子は泣きだし近くにいる母親に抱き着いた。
言葉の暴力は時に最悪の結果をもたらす。
「こら何をしてるの! こんな小さい子をいじめて。情けないんだから! 」
だったら一人にしておくなよな。紛らわしいな。
三十分以上こってり絞られてお説教を終える。
その記念に警告を一枚与えられる。
「何で俺まで…… ふざけんなよな! 」
不満を漏らすハック。
ハックは追加でもう一枚喰らう羽目に。
やはり冷静でなくてはいけない。
モンスター以外では言葉の暴力になり警告の対象だと再認識させられる。
続く




