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オアシス

真昼の砂漠。

ここは第一世界から大きく外れた恐ろしい砂漠地帯。

モンスターにいつ遭遇してもおかしくない。

それだけではない。この暑さ。汗が滴り落ちる。

快適な第一世界に慣れた俺たちには真昼の太陽は厳しい。

妖精がこの暑さにどれだけ耐えられるかがカギになる。 

へへへ…… 暑くて敵わない。どうかなってしまいそうだ。


「はああ! もうダメ! 」

暑さに耐えていたエクセルが砂嵐でダウン。

俺だってもう限界なのにただの妖精ではとっくの昔に限界を迎えている。

エクセルは思った以上に傷つきやすく繊細。それでいてすぐに弱音を吐く。

それが彼女と何日間か接した上での印象。


「そんなこと言うなよ。俺が何とかしてやる。諦めるな絶対帰れるって! 」

こんな時にこそ励ましてやるのが俺の役目だろう。

「ゲン! 」

「エクセル! 」

「俺に任せろ! 俺の野生の勘で」

「ああごめんなさい。それは問題ないの。ただ彼を見失って…… 」

「えっと…… ここがどこか分かるのか? 」

「ええ地図もあるし妖精には帰巣本能があるから戻ろうと思えば簡単に」

「それはないよ。せっかく格好つけたのに…… 」

どうやら砂漠脱出サバイバル生活は幻に終わったようだ。

エクセルの隠された能力で危機を回避。


「まぼろし! 」

「何か言った? だから私があなたみたいな異人のお世話をさせられてる訳よ。

案内役にも最適でしょう? 」

そもそもエクセルは飛べるんだしな。迷いようがないか。

「だったら何をそんなに落ち込んでる? 不審者を見失ったぐらいでさ」

問題ないだろ? この砂漠地獄からも簡単に抜け出せるだろうし。

「彼がここに来るのはおかしいの」

「彼って誰? 」

「あなたも会ったことのある人」

「まさか…… あいつ神父だったのか? 」

「ええ神父だか牧師だか。あの方がこんな砂漠に何の用が? 」

心配そうに晴れ渡った空を見上げるエクセル。

「まさかあいつ裏切ったのか? 」

わざわざ山に登り命がけで取って来たハニードロップを悪用する気か?

俺たちを裏切って? 絶対に許せない! 

「考えたくはないけれど何か企んでると思うの」

奴を思うばかりにエクセルの心は傷つく。

信じたいのだろうがもう遅いよ。最初から怪しかったもんな。

やはり大事なアイテムを預けるべきではなかった。


「私どうしたら…… 」

「気にするなよ。もしかしたら奴だって図書館に用があるのかもしれないぜ」

まずあり得ないけど。ただ図書館が一つしかないなら当然必要に応じて。

「本気で言ってるの? 図書館には確かにたくさんの本が置いてあるわ。

色々な方からの寄贈品だってあって貴重な資料も置いてある。

当然、錬金術の本だってあるでしょうね。でも彼の立場なら手元に置いてるはず。

錬金術に欠かせないなら尚更。だから彼が図書館に用があるとは思えないの。

考えたくはないけれど何か悪いことを企んでいる。そうとしか考えられない」

エクセルはもう泣きそうだ。


「とにかく探そうぜ。追い越した記憶はないんだし」

だが目の前はただの砂漠。

砂が舞っているだけ。草木も枯れ果てた。

虫だって…… このサソリぐらい…… 

「デカくないか? 」

真っ赤なサソリ。

「これは巨大赤色サソリと言って尻尾に毒がある。

でも踏んづけでもしない限り襲ってこない。大人しい子」

「旨そうだな。へへへ…… 」

「絶対にダメ! 三日間高熱に悩まされる。酷ければ幻覚も見るかも。

大人しいから攻撃はしない。だから見守るの」

どうやらエクセルはこの辺りの生態に詳しいらしい。

だったらバニードロップだって分かるだろう?

サソリは砂に塗れ姿を消した。


さあ図書館を探すとしよう。

「あそこにオアシスがある」

空高くから前方を確認。

エクセルは目ざとくオアシスを発見する。

ひとまず喉を潤す

「さあもう少しで図書館だと思う」

「なあ…… ここは町からどれくらい行ったところだ? 」

エクセルだけに任せてはおけない。

もし今エクセルとはぐれたら俺は野垂れ死ぬことになる。

現在地だけでも確認する必要がある。

そうすればどうにか戻ってこれるだろう。自信はないが。


アン捜索の旅がいつの間にか命がけの旅へと変化した。

望んだものではなかったがこれも運命。


                続く

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