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29/201

復活のゲン

エクセルの強気の交渉術に根負けした男たちから例のハニードロップをゲット。

見た目は普通のはちみつ入りの飴。

まろやかでほっぺが落ちるほどの美味だとか。

一口味見してみたいが取引の道具。

それに一個でもいくらするやら。これでは怖くて口に入れられない。

そう言う意味では毒に近いかな。

口に入れれば最後。吐きだすことも不可能。

その価値を失ってしまうのだ。

汚い話だが飴玉のように舐めて包んで取っておく芸当は出来ない。

俺はもう大人だからそんな真似はしないが……


「もういいだろ? 邪魔だから早く消えろ! 」

随分な言われようで頭に来る。でもエクセルは冷静だ。

「ありがとう。もらって行くわね」

お礼を言いトラブルを回避する。

さすがは俺の一番弟子……  などと言えばぶっ飛ばされかねないが。

目的の品は手に入れた。もうこんな山に興味はない。

下山することに。


奴らは密かにハニードロップを作っていた。

村人には知らせずにハニードロップを独占していたのだ。

これは由々しき問題。

果たしてこのまま見逃すのか?

いや…… 奴らの悪だくみを放置は出来ない。

うーん悩みが尽きない。俺はどうしたらいい?

だがもちろん今はそんな時ではない。

ハニードロップを持ち帰るのが先決。

そうすれば運転手からアイテムと引き換えに流浪の民の居場所を聞き出せる。


ただ一つ引っかかることがある。

ハニードロップは果たしてバニードロップなのかどうか?

その違いは何なのかさえも分からない。

仮にこのまま持って行っても価値の分からぬ者にはただのはちみつ味の飴。

これではないと突き返され取引が反故に。

そうなれば盛大な時間の無駄遣いに。


ならばこのハニードロップを支配者に献上するか? お返しはかなり期待できる。

そこでアンたちの居場所を聞き出せば…… いや無理か。

冷静に考えれば支配者様が放浪の民を知ってるはずがない。

やはりあのおじさんに頼るしかない。

さあまだ取引まで時間がある。とりあえず調べてみるか。


翌日。

「ふあーあ…… おはよう。もう明日ね」

「ああそれまでに解明できるといいんだけどね…… 」

昨日は二人でツリーハウスに寝泊まりした。

どうも狙われてる気が…… 宿屋でしかも何人もと一緒には寝てられない。

誰かが俺たちの動きを監視してる。

思い過ごしだろうけれどハニードロップの価値を知れば誰しも狙ってくる。

たとえあの人のよさそうなおじさんでも。豹変しないとも限らない。

取り扱いは厳重に。慎重にも慎重に行動すべきだろう。

まったく何てものを持ち運んでるんだろうか俺たち?


「それより女体化はどう? 」

「ああ一日できれいさっぱり」

眠るまでエクセルには付き添ってもらった。

彼女がかなり眠そうにしてるのはずっと見てくれていた証拠。

これほど一生懸命なのは初めてじゃないかな。

まさか俺のこと研究対象だとか思ってないよな?

そう…… 俺も怖いんだ。自分の体がどうかなってしまう気がしてならない。

一番はもう二度とシンの実を口にしないこと。

ただいくら気をつけていても間違って混ざれば防ぎようがない。

そこには悪意が見え隠れする。

旅を続けるにはシンの実の存在が邪魔になるだろう。


「そう。昨日のあなたは変だった。まさか目的を忘れてないでしょうね? 」

エクセルは俺の心変わりは本物だと思ってるらしい。だが俺にはアンしかいない。

もしかしたら熱に浮かされ戯言をほざいていたかもしれない。

でもそれはあくまでシンの実の影響から来るもの。

俺にはやはりアンしかいない。

幼馴染で将来を約束したアン。俺は彼女に告白するんだ。

ついでに村人も。これは村長代理のダスケとの約束でもある。

だから彼女に告白をしてついでに村の民を連れ戻す。

それがミッション。

誘惑に負けてたまるものか。


「聞いてるの? 」

「ああ分かってるって。だがその為にもバニードロップの謎を調べるんだろ。

誰か詳しい奴は居ないかな? 」

俺にはこれ以上は無理。やはりこの世界を知り尽くしたエクセルが適任だろう。

「だったら神父さんにもう一度会ってみましょう。

それから図書館を当たるといいわ」

「神父? 牧師じゃないのか? 」

「どっちでもいいから懺悔するの! 」

エクセルはその辺は適当なんだよな。モンスター側だからな。

俺だって知らないけれど。

まずはエクセルの言うように神父の元へ。


              続く

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