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渇き

シンの実によって解放された己をどうにかコントロールする。

だが心は抑えられても体が勝手に反応してしまう。

ほぼ反射的なのでどうすることも出来ない。

もはや目を瞑るぐらいだがそれも登山中では不可能。


こうなったら煩悩を退散するしかないが……

煩悩退散で百八叩きされるのも嫌だ。下手したら死んじまうよ。

モンスターにやられる前にお亡くなりになってたまるか!

俺は主人公なんだぜ? ゲームオーバーになるっての!


うう…… もう嫌だ! これ以上誰も会いたくない。誰も傷つけたくない。

どうにかライトニングでギリギリを保っているがこれもいつまで持つか。

完全解放された時俺はどうなるんだ? その恐怖と戦っている。


「おいエクセル! この地獄はいつまで続く? 」

「あなた随分雰囲気が変わったわね。本当に源右衛門さん? 」

エクセルも扱いに困ってるようだ。さん付けするぐらいだからな。

「ああ俺は昔の俺じゃない! 俺の今の目標は世界征服だ! 」

「村の人を見つけることじゃなくて? 」

「ああそんな昔の話は知らん! 」

「アンさんと結婚するんじゃないの? 」

「アン? 誰だそれは? 俺は王国を築きその暁には…… 分かるだろ。

へへへ…… やはり夢は大きく持たなくてはな」


「男の人は皆そうなんだから。いくら隠しても心の奥底を覗けば必ず…… 」

「おいおい。覗くのはよくない。人間が終わるぞ」

「はいはい。ご立派だこと。その力で無理矢理引き裂いた人のセリフですか? 」

「うるさい妖精の分際で生意気な口を利くな! 俺様に従ってればいいんだ! 」

あれ…… 俺さっきから何を言ってるんだろう? 心にもないことを。

急に熱くなるんだよね。そうするともう俺が俺でなくなる。

これではまるで最低な人間みたいじゃないか。自覚してるだけマシかな。


「そうだ。寝たらすっきりしないか? 」

登山中に寝るのは危険なのは分かっている。俺もそこまで馬鹿じゃない。

でも目を瞑って登山するよりよほどマシ。

「それはダメ! 危険すぎる。あなたがあなたでなくなる。完全な化け物に。

そうしたら私の力ではどうにもならない」

エクセルが止めに入る。

本気じゃないんだけどな…… ただの思いつきだし…… 


「さあもう少しで目的地よ」

この先の崖に巨大な蜂の巣がある。

巨大蜂のハネムーン。こう言った険しい崖に巣を作る習性がある。

こうすることにより鳥の襲撃を逃れ熊等の大型動物にも見つかりにくい。


さすがはエクセルだ。情報収集能力に長けてるな。

この近くでハニードロップが作られるとエクセルは言うがどうかな。

ハネムーンから作られた最高級のハニードロップ。

その工場がこの辺りにあると。


はあはあ

はあはあ

駄目だもう歩けない。あの実では腹は膨れないようだ。

「もう仕方がない人ね。ほらこれでも食べて」

『妖精のキス』

ただの赤い玉に見えるがこれがお食事?

「ゆっくり噛んでね。それから呑み込まないこと」

とにかく言われたまま口に入れてみる。

赤いので辛いのかと思いきやなぜか甘い。不思議な感覚。

妖精のキスと言われるだけあってまろやかで溶けそう。

「ほら呑み込まない! 噛んで。噛み続けるの! 」


モグモグ

クチャクチャ

粘りが出てくる。

「ほら十分も噛めばお腹も膨らむはず」

妖精式満腹復活玉。

これならどんな人間だとしても腹が膨れるだろう。


「水…… 水をくれ! 」

「地面を掘ってみて水が湧き出るはずだから」

言われるまま地面を手で掻く。するとすぐに水が湧き出て来た。

「本当だ! でも温いや。それでいて土っぽい」

「文句言わない! 私も飲むんだから」

湧き水を二人で飲む。

貧しい風景。


「おいお前ら何をしてる! 」

男が現れた。

「ほら目を合わせない。ただの悪党だから。もう解放してはダメ」

エクセルの助言を受けどうにか女体化せずに済む。

最初が肝心と言うがやはり男の荒々しい声と凶暴性ではさすがに変化しない。


「何だお前は? ふざけた面しやがって! 」

「俺たちを無視するのか! 」

「妖精とおままごとしてるんじゃねえよ! 気持ち悪いな! 」

悪態を吐く男たち。


「おい全部で何人だ? モンスターか? 」

女体化を防ぐためにもトラブルを起こさない為にもエクセルを通す。

要するに交渉役にエクセルを使うんだけど。

どうも奴らは地元の悪と言う感じでタダでは返してくれそうにない。


                続く

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