ハニードロップ探し
翌日。
「羊が一万一千五百…… 」
五人の内で浮いているおじさん。神経質で眠るタイミングを失ったまま朝に。
まだ眠れてないらしく羊を数える悲壮なおじさんの叫びで目が覚める。
決してさわやかな目覚めではない。
出来るなら綺麗なお姉さんに起こしてもらいたかった。
それが無理なら可愛らしい女の子でもいい。それでも無理ならアンでも我慢する。
もっと言ってしまえば機嫌のいい時のエクセルでも可。
さあ今日から本格的に調査を開始する。
同部屋の遺跡発掘チームも姿を見せた。
彼らもあるとも知れない古代遺跡の発掘に男のロマンを求める。
ただ発掘調査をするのではない。それなりの成果を出さなければならない。
俺たちもバニードロップだかハニードロップだかを見つける必要がある。
比べるものでもないが俺たちの方がまだ手掛かりがある。
ただの噂なのではなく確実に存在するもの。
時間を掛ければ必ず手に入るもの。
だが遺跡はどうかと言うと今日かもしれないし明日かもしれない。
一年後かもしれないし十年後だってあり得る。
いや不確かだから百年経っても見つからない場合だって。
要するにただの伝説に過ぎないか場所が違うか。
まだこっちの方がマシだ。
ただ俺たちだってゆっくりはしてられない。期限は今日を含めて三日。
物々しい装備で集団を形成する。
俺たちも混ぜてもらいたいが目的が違う。
見た目は地味だし楽しそうに見えて過酷な環境の発掘現場。
男たちは一攫千金の夢を見て毎日作業に没頭してる。
そんな荒れくれ者の中に一人明らかに異質な存在。
大丈夫かな? あのおじさん。
「何か分かった? 」
自信ありと見えたらしく追及される。
どうも顔に出るタイプらしい。
「実は重大な新事実が分かったんだ」
「ハニードロップ? バニードロップではなくて? 」
「そうハニードロップはこのエリアの支配者の好物。
だからあり得なくないんだ」
「でもハニードロップをバニードロップに間違える? 」
「そこなんだよな。でもある意味隠語みたいなものでカモフラージュかな」
エクセルは地図を見ながら辺りの確認に大忙し。
「確かにあの方はハニードロップが好きだった」
「会ったことあるの? 」
「まあね。一度だけ」
「だったらそいつに会ってみるのはどうだ? 」
思いがけない提案に固まるエクセル。
「それは無理でしょう。どこにいるかも分からない。
彼を見つけるぐらいなら大人しく流浪の民を探すべきでしょう」
もっともな意見だがモンスター側のエクセルが言うとどうも何か隠してる気が。
考え過ぎかな? いっそのこと確認する意味でも俺の考えをぶつけてみるか?
だがやはりはぐらかす。知っていれば当然。逆に知らなければ蔑んだ目を向ける。
エクセルはそう言う妖精だ。
「ほら考えてないで行動するの! 」
えらく張り切っているエクセルの後に着いて行く。
このスタイルが一番楽でいい。
「それにしてもあの人たち邪魔ね」
発掘チームを毛嫌いしてる。
「どうしたの? 」
「彼らははっきり言って発掘と言うより盗掘。
強引に掘り進めて取り返しのつかない事態に。
せっかくの遺跡が荒らされてしまっては価値が失われる。
昔の遺跡にロマンを感じるのではなく金になるものを根こそぎ取っていく。
盗掘団と何ら変わらないわ。マナーもなってないし感じも悪い。
だから私あの連中が嫌いなのよね」
一応は許可を得て作業をしてるのだから文句は言えないのでは?
「さあ、あの人たちに構ってないでこちらも捜索開始よ! 」
「オウ! 」
これで少しは面白しくなったかな。
「ではまず捜索隊のリーダーを決めましょう」
「ああそれなら俺がやってやるよ」
「はい私に決定しました。ここをよく知る私が適任ですね」
「あああ…… でも俺だって…… 」
聞いてくれない。
ただ噛み合わないのではなくわざとやってないか?
「では隊長。どこを捜索しますか? 」
今回はバニードロップかハニードロップを見つける旅。
壮大なロマンあふれる旅になる予感。
大いに期待が持てる。
「そうね。まずはハニードロップが取れそうなところへ」
登山開始。
地図を片手に難攻不落の山に登る。
挑戦する者が命を落とすと言う上級者コース。
「なあ本当にこっちで合ってるのか? 」
「隊長に任せなさい! 」
すべてエクセル任せにしてただ後ろから着いて行くだけ。
このスタイルが定着。ただエクセルは妖精なのだから飛べばいいだけな気も。
地図は第一エリアのほぼすべてを網羅している。
完璧な地図だと言っていい。
ただ導く者が方向音痴では意味がないけどね。
「本当にこっちであってるのか? 」
「ええ安全なのは間違いない」
うーん。本当かな。
果てしない雲の上を目指して歩みを進める。
続く




