ウサギの耳で変身
第一世界。
アンに関する有力な情報も手掛かりも未だ見つからず。
アン…… 今どこにいる?
必ず探し出してやるからな!
アン告白の旅は二日目へ突入。
俺は夢を見ていた。
ウサギに追いかけられるおかしな夢を見ていた。
いつの間にそこに? ほら大人しくしてろ! じっとしててくれよ!
そう呼びかけてもピョンピョン跳ね回るだけ。
うわああ!
勢いよく向かってくるウサギを捕まえることも出来ず逆に逃げ回る羽目に。
情けない。情けない。情けな過ぎる。
警告! 警告!
うわあああ!
危うくツリーハウスから落ちるところだった。
早朝ダイブ・トゥー・ブルー未遂とはヘビーだぜ。
うん? 俺一人?
妖精の姿はどこにも見当たらない。
「おはよう。どうしたの? 」
いきなり顔を出す妖精さん。いくらおきれいでもビックリするよ。
「いや…… 慣れなくてさ。風邪をひいちまったかも」
ツリーハウスで寝るなんて初めてで戸惑うばかり。
「大丈夫? 今日はお休みする? 」
出来るはずがない。俺には村の命運が掛ってる。
それにアンも。簡単にあきらめられない。休んでなどいられない。
分かってるくせに俺を試そうとするんだから性格悪いよな。
「ああ、もう大丈夫だ。それよりもまた夢を見たんだ」
昨日はシャボン玉から幻覚を見た。
今度は夢。何かを表してるに違いない。
その何かが分かれば一気にアンところまでたどり着けるのに。
ため息を一つ吐いてエクセルが話し出す。
「あのね。私は占い師でも夢師でもないの。
ただのどこにでもいるかわいい妖精。だから当てずっぽうね」
それでは困るのでもっと信頼のおけるところへ。
夢師とは夢を見て今後を占う専門家。
占い師よりも信用度が高いが実際正確かと言うと大いに疑問が残る。
と言うのがエクセルの見立て。
そもそも抽象的な上に長い時間を要するので当たってるのかは判断しにくい。
夢師はそこいらでお店を構えてるので簡単に見つかる。
ただトラブルになると姿を消すとの噂も。
「夢師ね…… 」
「まあ噂に過ぎないわね。どうする一度話を聞いてみる? 」
ウサギだけではさすがに手がかりとしては弱い。
胡散臭いが提案に乗るとするか。
「本当に信用できるのか? 」
「うん…… 分からない」
どっちだ? まあいいか。飯を喰ったら聞きに行くか。
大型複合施設:ドリームアミュ。
「三時間で千ドットだよ」
ドットは全世界共通の通貨。地域によって独自の通貨も。
「うおお! 安いじゃないか! 」
「こらこらお子様は入っちゃダメ! 」
受付に止められる。
もう十六だけどな……
怪しい施設ドリームアミュ。
年中無休の娯楽施設だそうで中から爆音が響き渡る。
耳に良くない。
「ほらウサギ耳をつけて」
言われるまま昨日買った耳を装着。
これって女性用じゃないのか?
しかも可愛らしい女の子限定だと思っていたが違うようだ。
その辺のおばちゃんもお洒落で着けている。昨日のとは別タイプ。
最近ウサギ耳が流行ってるらしい。
これなら俺だって。
ウサギ耳を装着すれば耳を保護できる。
しかしもちろんそれだけでなく最大の特徴はバニーガールに変身できること。
気持ちも入って今は見た目も中身もバーニーちゃん。
ただ自分で確認できないのが難点。
鏡に映るのは耳をつけたいつもの自分。
まあいいや。気持ちの問題だもんね。
これで第一関門突破。
耳をつけ中へ。
何でも初めての体験だと緊張する。
これが大人の施設ならなお緊張する。
まあ俺も一応大人なんだけどね。
アンと結婚できる年になった。
もう立派な大人かな?
ついに秘密のベールを脱いだドリームアミュ。
中に入ってそうそう男たちの視線が刺さる。
そんなに変かな? 普通だと思うんだけどな。
うん? おかしいぞ。どいつもこいつも嫌らしい視線をくれやがる。
いくらなんでもおかしい。警戒すべきだろう。
「あらウサギさんこんにちは」
頭が(メル)ヘンな男に呼び止められる。
大丈夫か?
「ヒヒヒ…… 僕は君みたいなのがタイプなんだ」
ちょっと太めのメガネをかけた不潔そうな男に迫られる。
もう限界。このクズ男め何と俺の足に絡めてきやがった。
いきなりの暴挙。信じられない。もはや人間ではない。
もう最悪! 俺はこんなのタイプじゃない。
「俺はダイイ。二十歳だ」
どう見てもおっさんに見えるがまあいいか。
「ウサギについて何か知ってる? 」
「ああラビットね。この店のオーナーだろ」
「ありがとう」
新情報入手。これは朝から幸先がいい。
続く




