追い駆けられて
二十四金を一枚出してトイレへ駆け込む。
ブリブリ
ブリブリ
出すものは出して準備万端。これが俺のスタイルだ。
ただ奴らは明らかに海の男で人間。
さすがに言葉の暴力はまずい。
だが爺さんも助けないといけないしな。
ダンダン
ダンダン
プリプリ
ガンガン
プリガン
発射音が重なる。
これは急がなければ。だがまだ止まりそうにない。
あー気持ちよかった。
トイレを済まし外へ。
まずい…… 出遅れた。
とは言えこれで言葉の暴力を使わないので累積警告を受けずに済みそう。
頭脳プレイとも言えるが決して狙ったのではない。
ただの偶然。腹が下っただけ。
やっぱりミルクの呑み過ぎだろうか?
それともジュースとの呑み合わせの問題だろうか?
外に出ると騒ぎはとっくに収まっていた。
ガンマンは去った後だった。
荒れくれ者たちが横たわっている。
どうやらまだ息があるようだ。
さあここは引き上げだな。
翌日。午後九時。
出港が後三十分に迫っていた。
「どうしてこうなるんだよ? 」
「ですからご主人様が…… 」
アトリとビーチでバカンスを楽しむ。
砂遊びとボール遊びで我慢してれば良かったのだがついマリンスポーツに興味が。
泳げもしないのにボートをレンタルし沖へ。
ワイルドな血が騒いだ結果とんでもないことに。
レンタルボートがコントロール不能になって漂流。
どうにか直して港へ戻って来たのが一時間前。
それからシャワーを浴びて準備と最終確認で遅くなってしまった。
もう真っ暗。危うく乗り過ごすところだった。
だがもう大丈夫。いつもはギリギリだが今日は三十分前に港へ。
土産屋でのんびりする。
「婆さんや良いお茶じゃな。ほれ団子も食いなされ」
ついふざけてしまう。
「そうですねお爺さんってアトリはまだ若い! ご主人様のイジワル! 」
「ははは…… だって百歳越えなんだろ? 正直に言えば許すぞ」
「だから…… それは嘘つき妖精のいたずら。アトリご主人様と同じぐらいです」
アトリは怒ってしまう。
「冗談だよ。それにしても間に合ってよかったな。さあお土産を買おう」
そう言えばお土産って何を買おうかな。
重いものはなるべく避けて持ち運び便利なのが良いだろう。
それで俺は一体誰に買うつもりなんだろう?
まさかどこにいるとも分からないアンに。それまで保たないよなきっと。
「はい。アトリのお陰です。時間管理は得意ですから」
とは言いながら漂流してたら世話ないが。
「しかしお前が遅くて困ってさ」
「だってご主人様がエッチだから…… 」
「いやそれは誤解だ」
「一緒にシャワーするぞって言ったでしょう? 」
「それは…… 後一時間しかないから仕方なく。急いでる時はどうしようもない」
「どこが仕方なくですかご主人様! 」
「遅れるよりいいだろ? 裸を見られる恥と目的の船に乗れない悲劇。
どっちかを選ぶなら恥の方がマシだろ? 」
「そんな比較ありませんしそんなこともありません! 」
「どうせロボットなんだからさ」
「またロボットって言いましたね? 傷つくんですから」
これはまずい。嫌われたかな。
そろそろ出港の時間だな。
「ほら行くぞ! 」
恥ずかしそうに下を向くアトリの腕を無理矢理取り船へ。
「あれ何か変じゃないか? 」
どこからか叫び声がする。
「気のせいですよ。ご主人様」
だが後方から叫び声に加え複数の足音が。
「お前何かやったか? 」
首を振る。
「お前何か知ってるか? 」
頷くアトリ。
とりあえず捕まらないように走ることに。
ハアハア
ハアハア
「どう言うことか説明しろ? 」
「恐らく金の効果が切れたんだと思います。
この二十四金は名前通り二十四時間で金の力を失います。
ただのクズになるはずです」
うわ…… 知ってて二十四金を使ったのか。わざとじゃないか。
意外とあくどいな。アトリはただの可愛い妖精ではないらしい。
残念だ。残念で仕方がない。
「どうする? どうすればいい? 」
「ご心配なさらずに。船に駆け込めば万事解決です」
それくらい分かってるんだけどさ…… 他に手は無い訳ね。
「よし行くぞ! 」
「はい仰せのままに」
ただの詐欺ではと思いつつも逃走することになった。
逃走中イン第三世界港町。
続く




