ちょっとしたおとぎ話のようなもの
今日はバレンタインの翌日ということで、朝から女の子たちは紙袋を提げて登校していました。あの中にはきっと手作りのチョコレートやおしゃれなクッキーが詰まっているのでしょう。
いつもより少しだけ気合を入れて整えた髪を気にしながら、私は教室に向かいました。
ニュースやテレビでバレンタインの話題が報道されるたびに、はかない妄想が頭をよぎります。ひょっとしたら意中の娘が顔を赤らめながら「これ……受け取ってください」と、リボンで可愛らしく飾られた小さな箱を渡してくれるかもしれない、と。
私は当然、かっこいい対応を考えます。
「ありがとう」とシンプルに言うのがいいか、それとも無言で受け取り立ち去って行くのがいいか。
ま、虚しくなるだけなのでほどほどにしておきますけど。
ほとんど人影のない教室に入ると、私はまず自分の机の中身をそっと確認しました。何も入ってません。ま、それはそうか。
淡い失望とほのかな希望を抱きながら、私は時がたつのを待ちました。
きっと機会を見て、恥ずかしそうに手渡ししてくれるはずですから。
「なんか男子、髪切ってる人多くない?」と一人の女子が言いました。私は吹きだしました。みんな頑張ってるんだなー。
お昼休み、私が仲の良い友達としゃべっていると、「これ義理ね」とべたなセリフを言ってとある女の子が袋を差し出しました。友人はそれを受け取り、机の横にしまいます。
「……半分いらない?」
と聞かれたので、
「いらねえよ」
と返しました。嫌味か?
その直後、ショートカットの可愛いクラスメイトが私のすぐそばを通りかかり、
「モテル人はチョコをたくさんもらって大変なんだよ」
と皮肉なのかよくわからない励ましなのか判断できないようなことを囁いて行きました。
悔しかったので私は日本語ではなくただの擬音語のようなものを叫び返しました。
放課後、雨の降りしきる中でのランニングから帰ってきた私は陰鬱とした気分でした。
その日最後の授業は体育で、なぜか土砂降りにも関わらず走らされたのです。服は濡れるわ、耳は痛いわでさんざんでした。
着替えを済ませ、廊下に面しているロッカーに私物をしまっているとき、後ろから声がかかりました。
「あのさ……」
振り返ると、先ほどの嫌味を言った女の子でした。
私は疲れているのもあって、そっけなく返事をしました。
「なに?」
「……これ、バレンタインだから」
ちょっと横を向きながら渡されたのは、小さな飴でした。
その味は甘くてクリーミーで、こんな素晴らしいキャンディーをもらえる私は、
きっと特別な存在なのだと感じました。
一ヶ月後、今では私がホワイトデーのお礼をする番。彼女ににあげるのはもちろんヴェルタースオリジナル。
なぜなら彼女もまた特別な存在だからです。
オチはコピペです。
すみません。
ですが、序盤のほうは一部事実です。