見舞いの再会
工藤が看護師に着いていき、リハビリに行ってからだいたい一時間以上は経った。準司達三人は暇潰しに工藤が寝ている寝室の隣に椅子に座って語り合いながら工藤を待っていた。
「車椅子がなかったね。ということはもう歩けるまでうまく回復しているのかな?」準司は多少心配はしていたものの平然とぶれることなく二人に聞いた。
「でも松葉杖は持っていたし、右足に包帯が巻かれてあったからまだ完治できてるとは言い切れないわね。まだ時間を要するのかな」葵は花屋で買った花を持ちながら心配していた。
「それだけイナズマ団にやられたんだったらこれから戦う時どう挑めばいいんだろうってなるよな?十五番目のあのイナズマ団でさえあれだけ傷を負ったんだから今度のクルーズ船の戦いにどうしていけばいいのかな?」将吾は真剣に考えるようになってきた。
「確か十一番目とか言ってたよな?ヴィジョン先生が説明してたあの話覚えているか?十三番目と十二番目の下級幹部をボスが殺してその一人にチャンスを与えたって。だったら今度のクルーズ船でヴィジョン先生の予想が的中したら、あの爆破事件よりもっと大惨事なことがおきることを覚悟しておかないとな…」準司は覚悟は入れているため多少怖くなっていても負けていなかった。
そしてようやく工藤がリハビリから帰ってきたのだろう、女性看護師に寄りかかりながら松葉杖をついて帰ってきた。
工藤が帰ってきたことが分かると三人は一斉に立ち上がった。看護師が優しく丁寧にベッドまで見送ると工藤は感謝を言ってベッドに座って右足に力が入らない代わりに体全身で自力で奥まで座って三人と話せるような姿勢になった。
女性看護師がまた何かあればいつでも連絡くださいと言って、失礼しますと挨拶してから部屋を後にした。
部屋を後にした後、三人はもう一度椅子に座った。
「私に見舞いに来たなんて何か珍しいわね。また仲間達が来るのかと思ったらまさか一回生が来るなんて…人あたりが優しいのね…」
「僕達も仲間ですよ。だから工藤部長のところまで来ました」工藤部長の固い性格に準司は優しく丁寧に言った。準司が笑顔になって話しているのを工藤が見て「げっ」と心の中で呟いた。
「あの、工藤先輩、これ近くの花屋で買った花です。見舞いの為に持ってきました。どうぞ受け取ってください」葵が花束を工藤に渡すとすごく綺麗だと嬉しがった。
「確か、浅倉さんよね?ありがとう。大事にしておくからね」工藤は葵に感謝した。
「ありがとうございます」葵も感謝を述べた。
「ところで、私のところに行きたいって言ったのは三人全員なの?他の人に頼まれたからなの?」工藤は細かいことについ聞きたくなった。
「あの、実は工藤先輩のところに行きたいと言ったのは三田原君でして、こういうところがお人好しな性格なんでしょうね」葵がそう言った時、準司はムカッとした。
「いやいや、僕は真っ直ぐな人だと言われてきた男なんで浅倉さんの言ってることはちょっと違ってまして…」
「いえ、工藤先輩。この人はお人好しな性格でして…」
「いやいや、僕は真っ直ぐな性格なんで…」
「違います、お人好しです…」
「葵、あのな…」
「準司が折れるところでしょう?」
「おいおい、二人とも。工藤部長の前で喧嘩しないの!ここは四人部屋だから静かにしないと…すみません、部長」準司と葵が口喧嘩しているのを将吾が抑えた。
「確かに、私の前で喧嘩はやめてほしいわね。何?二人も仲が良いんじゃないの?ああ、それとも喧嘩するほど仲が良くなるっていう話のこと?」工藤部長は多少キレていた。厳格な性格さが出てしまっている。
「あっ、本当にすみません。二人とも、謝れって」将吾がそう言うと二人は「ごめんなさい」と「すみません」と混じって謝った。二人の意見がバラバラだった。
「…まだまだ、退院できる状況じゃないってことですか?ヴィジョン先生や辰准教授から何かこの頃の情報は聞いてないですか?」将吾が工藤に重要な話をした。
「詳しくは聞いてないけど、ヴィジョン先生や辰先生から度々ラインを送ってきてくれたり、ライン電話もしてくれたぐらいかな?この通り、リハビリの最中だからもし退院ができるまで回復したら連絡してって言われたわね。だからここしばらくはラインしてないけど、治ってないから」工藤は厳格な口調で詳しく話していたが、三人の一回生が来た理由もあってしばらくは大目に見ていた。
「じゃあ、僕達がこれまでの事とこれからの事について話してもいいですか?」将吾がまた二人の気まずさを埋めるためにもそう質問した。
「それは友達から話を聞くからあんた達がわざわざ話さなくても後から話してくれるし、だから別に話さなくてもいいよ…」
「いや、先輩。僕からも念のために今のうちに話しておいた方がいいかと思うんですが…」
「準司?」
「えっ?」工藤が話さなくてもいいと止めたのに準司がどうしても伝えておいた方がいいと思って言ったことに将吾と工藤は思わずびっくりした。葵も準司が話す内容がどんなことなのかをある程度分かっていたが、それを工藤に言っていいのか正直分からず不安で固まるしかできなかった。
「ヴィジョン先生から頼まれてるなら話してもいいかもしれないけど、三田原君の判断でしょう?ヴィジョン先生から話してもいいって許しが出てるの?」工藤は準司に厳しそうな質問をした。
「すみません。ヴィジョン先生からはそのような許しは出ていないですが、でもまだこの頃の様子を工藤部長に何も伝えてないなら話した方がいいかと思ったんですが駄目なんでしょうか?」準司は工藤に聞いた。
「うーん…私に言われてもねえ。…まあいいや、じゃあその話した方がいいというそのお話って何なの?」工藤はベッドの上で座ったまま準司の方に真剣になって聞いた。
「ここは病室なんで小さい声で説明しますけどいいですか?」準司は確かめて聞いた。
「ええ、構わないよ」工藤も聞く姿勢に切り替えた。
あの爆破事件がおきたその後に、ヴィジョン教授が神威というイナズマ団ボスと実は関係があることの話を部会で聞かされたことについて話したことからヴィジョン教授が作った盾頭全員との出会いや盾のタイプのこと、そして盾頭から技の習得訓練を受けて自分達は合格したため次の任務にこれから行くことになったことやその任務とは何かということまでを詳しく説明した。
工藤は何も返事せずただじーっと準司に集中しながら聞いていたが、嫌でもこの後輩に聞いてあげるだけでもしようという気持ちで準司を見つめていたので、多少はイライラしている様子が写っているのは工藤の顔に出ていた。
「ヴィジョン先生が記者会見を開いているところは私もテレビで見てたけど。ただイナズマ団ボスと大学で出会った話はあんたから聞いて初めて知ったわね。ただ短い時間の出会いだったってわけか…」工藤は天井を見上げてヴィジョン教授がその時どんな心境だったのかを想像しながら思いを寄せていた。
「まだ私も技の習得訓練を受けてないから退院できた後からその技を習得しないといけないってことね…何か大変なことになっちゃったなあ…」
「ちなみに工藤部長は何タイプなんですか?盾のタイプのことですけど」将吾は一つ聞いた。
「草タイプですって。私炎タイプかって期待してたのにめっちゃ弱い人みたいに見えるじゃん、最悪だよ…」
「工藤部長。ちなみに僕も草の使い手なんで。心配することないですよ」将吾はそう言って工藤を安心させようとした。
「えっ?あなた、草のタイプなの?…」
「はい、僕だって炎タイプが良かったんですが、草の使い手だって言われてショックを受けましたよ。でも深島さんという草の盾頭さんに教えてもらいながら何とか合格できたんでこんな自分でもやりきれましたよ」将吾はさらに慰めようとして工藤に自信を持たせようとした。
そして大事な話は面会時間の終了時間までまだまだ続いていくようだった。




