後半の修業へ
午後一時になった。各それぞれ使い手のタイプの元の場所に戻り、盾頭の前で皆整列していた。食事を済ませトイレを済ませた事を確認していた皆は、午後からの修業に勢いが失っていた人達がほとんどだった。水の使い手の皆は四の技の習得でさえこんなに苦戦しているのに苛立ち、やっと四の技を習得できた人達も五の技の習得に冷や汗をかいていた。ただここまでで五の技を習得できたのは準司と三回生の桐原の二人だけだった。
「午後一時になりました。午後からも修業していきますが、終わる時間が午後五時までなんであと四時間しかないということです。午前の時間にもちょこっと言いましたが、十三の技まで全て習得するのは無理と判断しました。つまりは発展と難関は教えることができないということですね。ですので、君たちは今から六の技まで習得できるまで、言い換えれば応用の技までを習得してもらうことになります」伏竜がそう説明すると準司と桐原以外は「えーっ」と声が漏れてしまった。
「ん?発展、難関がいけないことが分かっただけでも有難く思えねえってことか?応用までできなかったら次のイナズマ団と戦って勝てなくなるということだな。敵の強さはどんなものかてめえらあの爆破事件で思い知っただろ?だったら本当なら死に物狂いで応用の技を完成させなければ次が危ないと思わなければならねえじゃねえのか?お前らそれだけ気合がないのか?」伏竜はすごい怒声で皆を叱り飛ばした。
「次に何が襲い掛かってくるのか、そう思えばこのぐらいの修業でおびえてたら今後どうするつもりだ?ここまで来たなら、やるしかねえんだよ。それぐらいの根性を俺に見せつけてこい!分かったか!?てめえら!?」伏竜の怒声に皆は背筋がピーンと伸びた。朝の眠気が一気に吹っ飛ばせたかのような勢いのあるハリのあるような喝を入れてくれたかのような目覚めが皆に響いた。
皆は勢いよく「はい!」と自然に大きな返事ができた。
「じゃあ午前の続きをやる。五の技までがここで修業しろ。六の技を習得する者は俺についてこい。確か三田原は知ってるな?じゃあ後のまだ来たことがない人もついてこい」準司以外に伏竜についていったのは三回生の桐原と、同じ三回生の増田と二回生の霜林という男子の三人だけだった。準司と合流して四人が六の技をこれから習得するために修業することになった。
中に入って準司が先程ここで修業していた場所に準司以外の三人は初めて訪れた。三人は一周三六〇度を見渡して盾でボールを受け止めるという修業を防衛技能訓練で修業していた時はっと思い出していた。
「さっき三田原に言っていたんだが、三人はまだ聞いてないため説明をする。六の技を『空間の慈雨』というが『空間慈雨』と省略してよんでも構わない。どういう技なのかを俺が今から披露するからよく見ておいてくれ」伏竜は機械のスイッチをもう一度押して機械がウイーンと鳴りはじめ、もう一度ボタンを押して、すぐさま機械の中に入って盾を構えて頭の中のスイッチを切り換えた。一極集中している伏竜は周りの空間を感じ取り、そしてすぐさまテニスボールが飛んできたところを素早く防いだ。そして円を描くように舞を披露してるかのように踊っているかのように様々な角度からくるボールを盾で全て一周三六〇度防いだ。それが途切れることなく連続で続けてボールが飛んできて、それも全て伏竜は連続で飛んでくるボールを盾で受け止めた。
二回生の霧林は特に「おお」と感動して声が漏れたが、三回生の二人はただ冷静に見続けてじーっと固まったまま伏竜の動きや動作を観察している。
自動に機械が止まると、伏竜は息が切れていた。ふらふらすることなく機械の中から出てきて皆のところに戻ってきた。そして、姿勢を立て直して伏竜は説明した。
「これが『空間の慈雨』という技だ。縦、横、右左の斜めの三つを百八十度振りかざし、半円のような形になる。これを前後左右に振りかざし敵の攻撃を弾き返すことができる。慈雨というのは夏の雨という意味もあるが、優しく叩き続けるという意味からこの技の名前になった。確かに一周三六〇度を見渡しながら攻撃を防ぐのは非常に難しいが慣れてくればだんだんコツが掴めるようになる」四人とも何も緊張はしていなかった。やる気は満ちていてこの壁を何としても乗り越えたい気持ちしかなかった。
「では実際にやってもらう。三田原は午前の時間にやっていたから指導はいらないだろう。じゃあ桐原、君からやってもらおう」桐原は全く微動だにせずそのまま機械の中に入っていった。あの真っ直ぐに歩く姿勢は他の人達とはまるで違う。準司の覚悟の決め方とよく似ていた。
「桐原、前の防衛技能訓練で修業したことを覚えているか?」伏竜は大きな声で桐原に聞いた。
「はい、覚えています」桐原は返事した。
「じゃあ桐原、そのことを思い出して一周三六〇度を意識して襲い掛かってくるボールを全部とまでは言わないがほとんどのボールを盾で弾き返せるようにしてくれ。まずは一つずつの速さでボールが飛んでくるから盾で弾き返せ。では今から始める、盾を構えろ」伏竜がそう指示すると桐原は盾を構えた。ボールがどこから飛んでくるのか桐原は周囲を見渡している。
「では三つ数える、三、二、一、始め!」伏竜がそう合図を出すと機械のスイッチをオンに押した。すると機械はウイーンと高鳴り始まりの合図が出ると、桐原は緊張感が一気に高ぶった。高層ビル爆破事件のあの緊張感を思い出すようにと自分に暗示をかけた。ボールが飛んできた。伏竜はボールが飛んでくるレベルを基本にしてあるため最初は簡単にするように設定した。桐原はしっかり見破り盾でボールを防いだ。
「桐原、次々と出てくるから安堵しているようなことをするなよ。はい、まだ次々と出てくるぞ」桐原は一周見渡したが後ろからボールが飛んできたところを素早くギリギリのところで盾で弾き返した。もう一息でぶつかりそうだった。
「それからだんだん速度が速くなっていくからな。今は基本だが難易度が上がってくることも忘れるな」伏竜がそう合図し、桐原にプレッシャーを与えた。今度はどこから来るのか。桐原はさらに集中力を高め一周をゆっくりと回りながら周りに意識を向けた。そしてボールが一秒ごとに次々と飛んできた。弾き返せたのもあるが、ここで桐原は初めてボールに左後ろにおもいっきりぶつかった。すごい激痛で桐原は混乱してしまい、目の前に集中することが厳しくなった。ボールがまた次に飛んできた。次は右足にぶつかった。激痛がさらに止まらなくなった。
「おいおいどうした?それではボールが立て続けにぶつかってくるぞ。そこからでも続けて盾で必死に防げ」伏竜は容赦しなかった。それでも機械を止めようとしなかった。そばで見ていた準司と三回生の増田と二回生の霧林は何だか可愛そうに見えてきた。
立て続けに一秒ごとにボールが急速に飛んできている。それでも桐原は必死に耐えて目の前のボールに集中した。目の前に飛んでくるボールを防ぐことができはしていたが、後ろから来るボールのタイミングが分からない上後ろまで見えなくて振り向くことができないでいた。
後ろから一発のボールが飛んできて背中にぶつかってしまい、そして機械が自動に止まった。
「はい、桐原。激痛で大変かと思うがこっちに降りてきてくれ」桐原は背中を左手で抑えながらすごい痛い顔をしながら機械から降りた。そして伏竜の前に立ち嫌なことを言われるのを覚悟にじっと待っていた。




