応用の技修業
準司は盾を構えると伏竜は機械の中から出て六の技の修業を見守るようにした。
「では三田原、今の六の技を君も完成させてもらう。ここまで来れば応用の技まで完成できたことになる。前回は俺はこの場にはいなかったから見てないがまずは反射神経がどこまでできているか見させてもらう。じゃあ中に入れ」伏竜が説明を終えると準司は盾を構えたまま中に入った。あの時の三つの訓練の難しさを受けたがどれも体力的にきつかったが、この機械は一周三六〇度どこから玉がぶっ飛んでくるのかの反射神経も鍛えないといけない為体力増進の上メンタルも強くならなければおそらくこの修業を達成するのは難しくなるだろう。
「スイッチを入れた。では三田原、覚悟を決めろ」機械がウィーンとまた音が鳴った。どこから玉が出てくるか速く見極めないといけない。
「いくぞ、三つ数える。三、二、一!」そして機械が本気で出してきているのだろう、すごい勢いの音で始まりの合図が急に出始めた。準司は盾をしっかり構え、どこから玉が出てくるか集中力を高めた。
後ろの気配も確かめて全体を見渡すように…。
しかし、準司の予感が外れた。後ろを振り向いたが反対側からボールが飛んできた。準司の背中におもいっきりボールがぶつけてきた。かなり痛かった。
「おいどうした?いきなりぶつけられてるじゃねえか。まだまだボール飛んでくるぞ」伏竜が言っているそうもしないうちに別の角度からボールが飛んできた。準司は盾をしっかり構えて今度はギリギリのところで防げたが、素早さは鈍っているのが分かっていてもう一息でまたくらうところだった。
「駄目だ。判断力が遅い。それでは一周三六〇度どこから攻撃しかけてきても防ぎきれなくなってしまう。玉が銃の玉なら一大事だぞ。それでは六の技を教えるのも遠くなるなあ」伏竜はあえて準司にプレッシャーを押し付けた。伏竜がそう言っているうちに次のボールが次々と飛んできた。
準司はまたギリギリ盾で受け止めたところで、下手したら顔面にぶつかりそうだった。
盾で防げたかと思ったら次は頭にぶつかったり、またギリギリ盾で防げたかと思ったらまた背中にぶつかったり、防げたりぶつかったり、防げたりぶつかったりの繰り返しがしばらく続いた。
「分かった、一旦止めるぞ」伏竜はスイッチを押して機械を止めた。機械はウィーンと今度は徐々に止まっていきそうな音になりそして、ようやく止まった。
「なかなか厳しそうだな。前回の修業に訪れてた時滝島さんから拝見されてたんじゃなかったのか?これだけ修業してそこから何もしてなかったらやっぱりそうなるのか?まあ、仕方がないことだがな」伏竜が厳しく言うと準司は少し焦り始めた。
「十二時になるまでしばらく君はこの修業をしてもらう。向こうの上級生達の様子も見ないといけない。機械の操作は分かるか?…」
「いいえ、まだ使ったことがないので…」
「分かった、じゃあこれだけでいいからしっかり覚えておいてくれ」
伏竜は準司に機械のスイッチのオンとオフの入れ方から落ちているテニスボール全部を機械に入れるやり方までを教えた。
「じゃあ俺はここを離れる。後は今の修業を続けておいてくれ…」
「伏竜さん、四の技ができました!できているか見てもらえますか?」上級生三人がようやく四の技を完成できたことを報告しに来ていた。
「丁度いいところに来たな。今行く…じゃあ三田原、十二時になったらここにまた来るから来るまで勝手に昼飯食いに行くなよ、いいな?…」
「分かりました」そして伏竜は外で修業している上級生達の跡についていき中の場所から出ていった。
準司はもう一度機械にスイッチを押して一人で修業を始めることにした。伏竜に教えてくれたように機械の中に入っていくタイミングから始めてもう一度玉の防ぎ方を開始した。
やっぱり準司も感づいてはいたが一周三六〇度を見渡して攻撃を防ぐ構えと技は想像するだけでも分かる程難しかった。周りを目で追うだけでなく耳をすましてどこから攻めてきたかを聞き分けること、体全体で風の向きを感じとり、それでどこから攻めてくるのかと冷静に見極めなければならない。体全体で見極めるには何が大切で覚えておかなければならないか、まずは余計なことを考えずに冷静な立場に立って感じ取ることをしなければならない。
準司は盾を構えた。そして中にあるボタンの一つを押した。機械がウイーンと高くなり始めた時一瞬緊張が走ったが冷静を取り戻しかかってくるボールに集中した。
…どこから出てくる?そして意外なところからボールが飛んできた。準司の真横だった。準司は素早く左に向き盾でそのボールを防いだ。…まだまだ。少しは慣れているが油断してはいけない。次はどこだ?…感じ取れ、集中力を極めるんだ。そう間もないその時、左後ろからボールが飛んできた。準司は外すまいと左後ろを振り向いて盾で防いだ。どんぴしゃりだ。この時点で一体何を身に着けていくかはまだよく分かっていないが何だか感覚が少しだけ掴んできたような気がする。よし、この調子で次!
一周三六〇度見るだけじゃない。感じ取れ。そして次に準司の右後ろからボールが飛んできた。準司は右後ろを振り向きギリギリだったが盾で凌げた。危なかった。
しかし、準司は次こそしくじった。真後ろからボールがすぐに飛んできた。それを察知できずそのまま背中にぶつかった。しまった!かなり痛かった。ヤバい、集中力が!
準司はそれでもぐっと堪え一周三六〇度を意識して周りを集中した。今度は周囲一斉にボールが三つも飛んできて一個のボールを防げたが二つのボールにぶつけられ背中と肩にぶつかった。
十二時丁度。ようやくベルが鳴った。昼ご飯の時間だが伏竜がここに来るまで昼ご飯を食べに行ってはいけないと言われているので機械を止めてしばらく待機をした。
数分後に伏竜が準司のところに戻ってきた。おそらく上級生達に昼休憩の挨拶をしてからこっちに来たのだろう。
「お疲れさん。どうだ?調子の方は?…」
「まだぶつかってばかりで。正直冷静になって一周三六〇度を感じてどこからボールが飛んでくるのかを察知してましたが最初は盾で防げるところまでいけたんですが、まだぶつかってしまうことが多くて」準司は申し訳なさそうに言った。
「まあ最初はそんなもんだよ。なんせこの修業は応用の技だから一周三六〇度どこから攻めてくるのかをいち早く察知して盾で防ぐ本番技だからな。厳しくはなってくるが慣れればコツがつかめてくる。そこから先は楽に見えてくる。…もう時間だ、腹いっぱい飯食ってこい。できるまでまた昼から再開すればいい。では解散…」
「はい、ありがとうございます」準司は伏竜に挨拶をした後、伏竜はもうさっさと別のところに歩いていった。
準司は涼しい所で休憩していた所に戻るといつの間にかあのボランティアみたいな集団がお弁当とお茶を長い机の上にずらーっと並んでいた。そして修業していた学生達は列をつくって盾を片手に持ちながら並んでいた。準司は最後列に並びお弁当とお茶をもらうまで待つことにした。
準司がお弁当とお茶を持って、葵と将吾はどこにいるのかを探そうと遠望視して見渡していると奥のところに葵と将吾がいるのが見えた。準司は二人のところに行き二人が気づいてくれるかあえてじっと立っていた。そうすると、しばらく経って葵は準司が立っているところを気づいた。
「あっ、準司。びっくりした。準司がもう座ってるかってずっと探してたんだけど、意外と遅かったのね」葵は見上げながら準司に話した。
「うん、六の技を習得しているところだったから伏竜さんが来るまで昼食のところに行ってはいけないって伏竜さん自らが言っていたんだ。それで遅くなっちゃってさ。…将吾、今大丈夫か?」休憩の時間になった為ようやく準司は将吾のことを心配することができた。二人に紛れて床に座った。
「準司ー。あれは良かったぞー。深島さん、今日も色気が凄かったからさ何だか心地よい温かい気持ちになれたよ。めっちゃ、興奮しながら技覚えの修業してたんだからさー…」
「うわあ、将吾ー!やっぱり深島さんのことから離れてないじゃないかー!」準司は将吾の肩を揺らし続けた。
「でもそのおかげか将吾、草の使い手だけど五の技まで覚えたらしいよ。全部で九つの技があるらしいけど応用の技まで覚えられたみたいだって」葵がそう説明すると将吾は深島を想像しながらうんうんとうなずいた。
「まっ、まあ…可愛い女性に稽古つけてくれたらそうなるかもな。まあでもよかったじゃないか将吾。将吾の好きな可愛い女性に修業つけてもらえて、なっ?将吾?」準司は冷や汗をかいて笑いながら将吾を褒めた。将吾は顔が赤くなりながら黙々と笑顔になりながらお弁当をガツガツ食べていた。




