五の技の苦戦
「すまないがその前に君だけじゃないが他の全員も一緒のことを今から言わしてもらう。あそこに大きな円柱型のした入れ物が三つあるのが見えるか?そこに大量の水が入っているのが見えるだろ?そこまでついてきてくれ」伏竜はそう言って準司は後をついていった。二人が三つの円柱型のした大量の水が入っている入れ物のそばに来ると伏竜は言っておかなければならないことを説明した。確かに大量の水が三つあるのが確認できる。
「君の盾、俺もそうだが水盾の使い手達は水を使った後に底についてしまうという限度がある。水の使い手の諸君は水をつけて盾に入れなければならない。じゃあ水に盾をつけてくれ」準司は伏竜の水の浸しかたをまねしてしばらく左腕に取り付けてある盾を水に沈めてつけたままにした。
「中にある機械よく見てみな。スマホで充電量が何パーセントとかいうやつ見たことあるだろ?あれと同じで水に浸しているとこのマークが出ているのが見えるだろ?これが今水を吸収しているというサインだ。満タンになるまでそのまま待っておきな」そうしてるうちに十分ぐらいは経った。水が満タンになったというサインが表示されている。そっか、水を使って技を繰り出すから水盾も水を入れないと技が使えなくなるのか。
「今後も水を使って空になる前に今みたいなやり方で盾に水を補給することを忘れるなよ。さもないと敵に攻撃や守備の技が使えなくなった時に大変なことになってしまうからくれぐれも気を付けろ。分かった?」準司は「はい!」と返事した。
「じゃあ満タンになったから今から君に五の技を教える。前に見たことあるかも分からないがとりあえずあっち行こう。そして見てくれ」場所を別のところに移動した後、伏竜は滝の渦潮の技を繰り出した。盾を構えたまま機械のボタンを押すと水が盾と伏竜の回りを一周三六〇度囲んで巻き散らし始めた。それが下から上に渦を巻いて物凄い勢いで素早く滝のような大量の水で回っている。
あの時のイナズマ団十五番目の下級幹部と戦った時と変わっていない。これが五の技なのか。
伏竜が技を披露して終わると準司は「おお」と感動した。
「まあ、あの時に見たことあるだろ?今のも同じ技だが思い出してくれただろう。この五の技の『滝の渦潮』を君もやってもらう。青色のボタンと人差し指にある後ろの丸いボタンあるだろ?そのボタンとその下にある大きい四角いボタンのこの三つのボタンを同時に押し続けた時に今の五の技が完成する。これが標準から応用にかけての技だが、簡単そうに見えて少し厄介で少し難しくはなっている。では盾を構えろ」準司は盾を構えた。伏竜の言われた通りに三つのボタンを同時に押してそのまま押し続けた。
しかし、準司の回りに円を描くような水が出てきたが伏竜のような滝の水の勢いの形にはなれなかった。四の技であの大量の滝水をおもいっきり出せたのに五の技となるとその勢いがあまり出てこなかった。一体なぜなのか。水の勢いが四と五とはそんなに違うのだろうか。
「所詮、誰でも一発でこの技を出せるのはほんの一握りだ。体力と気力を高めなければこの技を出すのは難しい。君も最初はそんなもんだと思っていたが、ここからどうすれば滝のような形に仕上げられるかは体を使って何回も練習しなければ『滝の渦潮』の技を繰り出すのは分からないかもしれないな。この五の技を完成させるまで根性を引き出せるか?」伏竜は準司に真意を確かめた。準司は迷っていなく即答した。
「伏竜さん、どれだけ挫いても諦めはしません。ここに来たなら最後まで成し遂げたいのが本音ですから。この五の技である『滝の渦潮』を必ず成し遂げてみます。だから根性を引き出せます!」準司の目はメラメラ燃えていた。納得のいくまでやり遂げなければ落ち着けない性格もあってここで下がるわけにもいかなかった。
「そうか、良い度胸だな。じゃあ後数十分したら休憩時間に入るから水分補給ができるまで試してこい。まずは基本を思い出すこと。そしてそこからどうやって『滝の渦潮』まで完成できるか、修業しながら技を繰り出せ。これまでの技四つ全てを思い出しながらな。じゃあ後は一人でできるな?…」
「はい、やってみます」準司は根性が涌き出てきた。
「よし、じゃあ俺はこの場を離れる。他の皆も見なければならないからな、後は頑張りな…」
「はい、頑張ります!」準司がやる気満々で大きな返事をすると伏竜は皆のいるところに戻っていった。
準司は呼吸と体全体のバランスを整えようとしてから三つのボタンを押し続けたまま五の技を繰り出していたが、四の技みたいな滝のような水の勢いがなかなか出なかった。何度も違う視点、角度を変えて考え方も変えていろいろ試してみたがそれでも五の技の滝のような水がなかなか出なかった。
…今度は自分で考えなければならない。一体どこで何が原因で技を繰り出せないんだ?準司は折れそうになりながらも何度も繰り返し練習をした。
何回も練習しながら思っていたが、四の技を繰り出した時にあの滝のような大量の水が出たのはどういうことなんだろうか?四の技の「雨水滝」のあの水量でもすごかったのにそれ以上の水を出さないといけないということなんだろうか?…いや、何かがおかしい。普通なら四の技を繰り出せたなら五の技ができないはずがない。あの水量が四の技ならそれ以上の水の量を今さっき見た伏竜さんの技を見ていたら五の技はそんなに出ないといけないはずがない。四の技と同じ水量のような感じだった。間違いない。そうじゃなければどれだけの体力を使ってあの倍の水を出さないといけないのか、おかしいに決まってる。もう一度最初から見直すんだ。そこからどこかで何かが間違っているのが分かるはずだ。
準司はもう一度最初から五の技を繰り出せるようにするために四の技をやってみた。四の技、雨水滝!
今さっきやった技をしっかり覚えられている。間違っていない。ちゃんと大量の水がしっかり出せている。四の技までは習得できているのは間違いない。
…ということは呼吸の仕方が問題ではなく、構え方の問題でもない。…使い方の問題だ。ボタンを三つ押す構えはできている。
だが、そこからだ。そのボタン三つをしっかり押して長押しの加減が分かっていなかったのかもしれない。押し方がいくつかあるうちの一つだけが正解なのは分かっている。確率の計算みたいになっていくが一つずつやってみるしかない。
準司は自分の勘を信じて一つ一つ正解はどれなのかを探していくように五の技の正解を出せるように片っ端からもう一度やり始めた。…五の技、滝の渦潮!
しかし、水の量は四の技の時より少なかった。これもダメか。じゃあこれならどうだ?
準司は何度も正解にたどり着くまで何度も何度も試行錯誤しながら五の技を繰り出した。
休憩まであと十分は切った。何とか休憩時間になるまで五の技を完成させたい。もう一度伏竜の見本を思い出せと準司は思い起こした。何か欠けてる、何かが間違ってる。自分が正解と思っているやり方はあと二つ。もうこの二つしか正解がない。一つ目を準司はやってみた。五の技、滝の渦潮!
以前よりかはマシにはなってきているが完全な形にはなっていない。渦は下から上に巻いてはいるが、水量がまだ四の技より少ない。水量が少ないということは何かを忘れているのだろう。
残るはあと一つ。自分が思うこの一つにかけるしかない。そう思って準司は呼吸に、構えに、姿勢に、そして考え方全て、これに正解を信じてかける!
五の技、滝の渦潮!
すると、水の量が四の技と同じ滝のようにすごい量で準司の周りに下から上に巻き上がりしかも素早い速さで渦ができた。
見て見ぬふりをしていた伏竜は、後ろを振り向いて準司が見せた五の技を見ていた。伏竜の表情が急に変わり始めた。
「やっと、完成できたようだな三田原。それだ、それが『滝の渦潮』だ」伏竜はそう呟いて遠い距離から準司に向かって話した。
「三田原、そこまででいい。ちょっと止まれ」伏竜がそう呼び止めると準司は技を止めた。準司は伏竜に向きを変えた。
「三田原、その場でいい。もう一度『滝の渦潮』を披露してくれ。おーいお前ら、三田原に注目してくれ」伏竜がそう言うと皆上級生は技を繰り出そうと練習するのを止め、三田原に注目した。
準司は今立っているその場で五の技の「滝の渦潮」を繰り出した。すると、伏竜が準司に見せた五の技と同じような滝水が溢れ出てきて下から上へと素早く渦を巻いて準司の周りを囲んだ。皆は「おお」と歓声をあげた。まさか上級生を抜いて五の技をついに完成したなど非常に驚いていた。
「三田原、もういい。お前はもう合格だ。やっとできたじゃないか。お前らもどうしたんだ?一回生に抜かされてるじゃねえか?これじゃあ戦場に行くとき大変なことになってくるなあ。三田原を見習え。何もせこいことなど彼はやってないぞ、お前らの考え方が基本的間違ってるだけだ。そこを直せば正解の技が出せる…もう時間がきた。皆こんな暑い中で続けるのは危険だから向こうの影に隠れて水分補給してきな。トイレ行きたい人は行ってかまわない。休憩時間内はそうやって休憩してもよい。あの時計で十一時十分になったらここにもう一度戻ってこい。修業の続きとする。では休憩!」伏竜がそう言った時、残りの盾頭全員も休憩の合図を言った。
皆やっと休憩できると特に自動販売機に行って好きな飲み物を買って一気に飲み干したい気持ちでいっぱいだった。水の使い手の皆はそれぞれやっと休憩に入れたと思うと力が一気に抜けていた。一番早くジュースや水を飲みに行きたい人が多かった。
「三田原、君だけ五の技まで習得できたようだな。ただ休憩が終わった時からせっかく覚えられた技を忘れることなどしないでくれよ。まあまた技を見せてもらうことにするから忘れずに俺のところに来てくれ。じゃあまた後で会おう」
そして準司も「ありがとうございます」と言ってその場で立ち尽くした。やっと五の技を習得できた。これが五の技、滝の渦潮というのか。この技を忘れたくない。山に例えるならやっと山頂にたどり着いたばかりという気持ちだ。そこからはまだ旗を挙げられていないというのと同じだ。
一回できたからといってもう一度できていなかったらそれは完成したとは言えない。
今は休憩時間だが休憩が終わった後に修業を再開する。その時に必ず伏竜に完成できた技を見せれるようにしておかなければならない。そう思いながら自動販売機のところまで行って飲み物を買いに行くことにした。




