作戦、語る
部会が終わった後、まだ夜の時間でもヴィジョン教授は一人残って教卓の椅子に座っていた。周りの明かりを消しても教卓の机の明かりは灯ったままにしていた。
ヴィジョン教授でもあの時の神威の大学中退の理由が分からないままモヤモヤしていたが、代わりに決意は変わっていなかった。
「神威瞭。必ずお前を捕まえる。お前は私を裏切ったのだから、本当はお前が悪いことをした。お前の野望は何か分からないが、これ以上悪いことをするならこっちも対抗処置を行うつもりだ。必ず…必ずお前を捕まえてみせる。これは私にとっての使命の一つだ」誰もいない中で、いつもの英語で独り言を呟いていた。
「そして、神威。お前の次なる事件の計画、私も知っているぞ。ある若者にある何かを託したようだな。事件がおきる前に必ず仕留めてやる。私の盾で防ぎ止めてみせる」ヴィジョン教授はある雑誌を見ていた。新しく完成したジャンボジェット機二台分のある超巨大豪華客船の記事が載せてあった。ヴィジョン教授はこの記事を見て嫌な予感を感じていた。
そして、「神威が幹部の二人を殺したか?」という以前のニュースの新聞の記事を隣に置いていて、今後の予感を洞察していた。
ヴィジョン教授はラインを開き、今は盾頭と呼ばれている元弟子達に日本語で久しぶりに会えないかと文章を打ち、全員にラインを送信した。すると数分後に全員がラインを返信をしたことが見て分かった。ヴィジョン教授はすぐにラインを打ち、いつどこで会議を行うかの連絡を送った。
一方で夜中の道を自転車をこぎながら自宅に帰宅しようと走っていた準司は、数十分前に将吾と葵と、そして大田原先輩の四人で夜道を歩いていた時のことをもう一度思い浮かんでいた。珍しく大田原先輩は他の二人と一緒にいつも帰っていたのに、この日だけは一人で帰ることにしていた。
「先輩、やっぱりヴィジョン先生の話に腑に落ちないですか?」準司は自転車を押しながら大田原に聞いた。
「うーん、まあそうかもしれないな。腑に落ちないかな。でもヴィジョン先生がまだ大学生の時にあの神威とサークルで一緒だったなら、あの神威が裏切った行動に腹が立つのはなんか分かるって感じかな」大田原は三人の顔を見ずに真っ直ぐ前を向いて考え事をしながら言った。
「その神威という奴、中退をして理工学研究のサークルのイベント前に逃げたんだろ?その後にあの殺人事件を繰り返しやっていた。それまで一体何をしてたんだろうな?反社会勢力をつくるために自分で研究して人集めしてたとか?神威が二十代の時からそうやって反社会をつくってきたなら逆算すると、だいたい二十年以上は反社会の巣をつくってきたということになるってか」大田原はようやくあまり今まで不満を口にしてこなかったが愚痴を聞くようになって何だかもう一つの素顔を見ることができて三人は少し何だかほっとしていた。
「先輩、確かに二十年以上も神威がどこでそういう悪いことをしているのかもうそろそろ分かってきたらいいのにって思いますよね?僕もまたイナズマ団が表舞台に現れてきたらまた怖くなりますよ」将吾が聞いた。
「ああ、確かにな。警察の人も一体何やってんだろうな?普通ならこれまで反社会の事件すぐに捕まえることができるはずなのに、今回のこのイナズマ団をすぐに捕まえられないって俺たち安心して暮らすことさえできないだろ?」大田原は必ず自分も捕まえてやると言っているのか、イナズマ団が怖くて怖じ気ついていて太刀打ちできないのかはそこまでは準司はあまりそこまでは理解できなかった。ただ、安寧で豊かな暮らしを取り戻せるように誓っているのは何となく理解はできていた。
「じゃあ俺はこっちだから。じゃあな」大田原は少し暗い表情で手で合図して挨拶をした。
「先輩、また次の部会で」準司も自転車を押しながら挨拶した。
「お疲れ様でした」葵と将吾も挨拶すると大田原は声が出なかった代わりに手で合図をした。
「じゃあこっち行こうか」準司が言うと二人も準司についていき一緒に帰り道を下って行った。
三人それぞれ別の道に行ってそれから数十分後、準司は自転車を徐々にスピードを上げてアパートへ走っていった。
着いて駐輪所に自転車をいつもの通りに停めると準司は自宅のドアの鍵を開けて中に入るとすぐ様電気をつけてクーラーをつけた。急の部会だったのでアルバイト先でいつもお世話になっている牛丼チェーンの店主から夜食用の牛丼をただでくれるのでそれが一番助かるのだが、急きょの部会で予定をキャンセルしたので仕方なくコンビニに行って買い物でもしようと思っていた。コンビニは意外とここからそんなに遠くない場所にあるので歩いてでも行こうかな…。よし、しょうがない。今日の晩食はコンビニのメニューにしようか。そう思い準司は涼しい恰好に着替えて必要なものだけを持って近くのコンビニに夜の道の中出かけて行った。
道保堂大学にこの時間になってもヴィジョン教授はまだ研究室にいた。実はもうそろそろ自宅に帰ろうとしていた時だった。その時、ヴィジョン教授のスマホにライン電話が鳴った。一体誰なのかとちょっとびくっとしたがおそるおそる見ると、かつて先日のビル爆破事件の時に救助に向かっていた花の盾頭と呼ばれている宮桜綾菜からの電話だった。ヴィジョン教授は冷静にスマホのライン電話に出て英語で話した。
「Hello?」と答えた。そして宮桜の声が聞こえた。
「ヴィジョン先生、お久しぶりです。宮桜です。あの事件以来お大事にしてますか?」うっとりとした可愛らしい声にヴィジョン教授は日本語で答えた。
「大丈夫だ。君もあれからどうだ?元気にしてるか?…」
「ええ、おかげ様で元気に働いてますよ。ラインにヴィジョン先生から連絡があったのでどうしたのかなって、こんな時間に申し訳ないですけどね。…で、どうかしたんですか?」宮桜は明るく笑顔に話しているかのように聞こえた。本当に可愛らしい美声だ。
「この時間でも大丈夫か?」ヴィジョン教授は続けて日本語で話した。
「ええ、大丈夫ですよ。今日は電車で通勤しているので、まだ時間もありますし」
「じゃあ、君だけじゃないが他の盾頭にも伝えるつもりだから少し君たちの力を貸してほしい。よく聞いてくれ」ヴィジョン教授は詳細について語り始めた。
コンビニから今晩のメニューや明日明後日の予備のご飯やおかずやお菓子や飲み物を予算内の金額で買い終わるとすぐに早歩きで自宅に準司は帰った。自宅の玄関のドアの鍵を開けるともう一度電気をつけた。電気代の計算も考えて外出時は部屋の電気全部消していた。ただクーラーだけはつけっぱなしにして部屋を家に帰ってきた時でも涼むようにしておくだけはしていた。
ようやくここからは自由時間だ。腹が空いているこの時に丁度いいタイミングで夜食が食べられる。ようやくご馳走に食べようとした時、準司のスマホにラインが鳴った。ヴィジョン先生からだろうか。
仕方なく一端コンビニで買った熱々のどんぶりを脇に置いてスマホを開きラインを開くと、やっぱりヴィジョン先生からだ。また何事なんだろう。ヴィジョン先生のクラブのアイコンをタップして開いた。またちゃんとヴィジョン先生は日本語で書いていた。
『今日の急な部会申し訳なかった。皆諸君、ゆっくり心身を休めてくれ。次の月曜日の定期部会の時に、私から大事な話をまたする。新たな任務かもしれないが、この時のために盾頭の皆全員私の研究室に来てくれるようにお願いをした。そこで技能訓練のことで技を教えてくれるみたいだ。楽しみに待っていてくれ。そして訓練で技を覚えた後、新たな任務をお伝えする。それは何のことかはその時になって話すつもりだ。心の準備だけはしておくように、では。ヴィジョン勇一』
すごい課題が出てきたな。あのビル爆破事件で大変な思いをしたというのにさらに厳しい試練が出てくるのかもしれない。それに盾頭全員が来るって言ってるみたいだな。次の事件対策に向けて技と訓練を教えるんだろうな。来週の月曜日にか。よし、心を構えなきゃな。
準司は買ってきたものを開封し、少し冷めたどんぶりを食べ始めた。




