表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
戒告の盾  作者: ヨシ
50/87

使命

ヴィジョン教授が語り終わると、弟子達は疑問を抱きながらヴィジョン教授を眺めていた。他に下を向いてヴィジョン教授と神威の出会いと共通点の話で未だにショックを受けている弟子達もいた。いくつか質問したい気持ちが沸き上がってもヴィジョン教授の話を聞き続けることにした。

「…これが、私と神威の初めての出会いだった。私の部長だった桜橋さんに退部の知らせを伝えてから何も返事もなくそれからもう連絡が途絶えた。私はショックを受けはしたが、彼の人生を自分自身で決めた以上止める気もなかった。それから神威はどこで何をしていたのかは私も分からない。それに私の元クラブで一緒だった同級生や先輩達も神威のことなど全く知る由もなかった」ヴィジョン教授はまた暫く黙った。

「そして、神威が初めて公に姿を現したのは私が就職が決まってそう間もない数年後が経った時のことだった。私はセキュリティ会社に勤務して数年は経っていた。ニュースを見て初めて衝撃を受けた。…理工学研究会サークルでロボット開発を一緒にしていたあの神威の名前が報道に映っていたのだ…」ヴィジョン教授は下を向いた。

後悔と罪悪感がヴィジョン教授の体中に走り始めた。

「これは、私が必要以上に彼を引き止めて仲良くしようとした責任でもある。本当のことは分からないが、私も余計なことをしてしまったのかもしれない。しかし、その時はまさか神威が誤った道に行ったなど考えもしなかった…」また間が空いた。弟子達も誰も話すことなくシーンと静まり返っていた。

「…重い話をしてしまったかと思うが、神威があんなことをした原因は私にもある。皆に大変申し訳ない。私からも謝らせていただく。…すまない」ヴィジョンは頭を深く下げ続けた。皆暫く黙ったまま沈黙が続いた。まさかヴィジョン教授の過去にそんなことがあったなんて。

…これはヴィジョン教授が悪いことになるのだろうか。一方で何が理由で神威はイナズマ団をつくってしまったのか?

本当の真実は何なのかあやふやになっているこの状況の中、一人の弟子がヴィジョン教授に声をかけた。

「…ヴィジョン先生…顔を上げてください」高層ビル爆破事件で準司達と共に救助活動していた三回生の上木が話しかけた。ヴィジョン教授は頭をゆっくり上げた。

「確かにヴィジョン先生は神威という人とも仲良くしようとしたことが裏目に出たのかもしれません。けれど、本当にヴィジョン先生が悪いと言えるんでしょうか?じゃあヴィジョン先生の同級生や上級生の人達も神威という男と関わっているとしたらヴィジョン先生だけが責められることじゃないと僕は思います。だから、この場合何が原因で神威はイナズマ団をつくったのかは分かりませんが、神威自身の問題だけなんじゃないですか?」上木がそう答えるとほとんどの弟子達もうんうんと頷いた。自分もそう思うと共感している。

「先生、私も先生が原因で悪いことに繋がったとは思いません。ヴィジョン先生が悪いのならヴィジョン先生の同級生や上級生達もどうなのかも問われてくるんじゃないですか?でも、神威という人は理工学研究会サークルを見て何を感じたかは知りませんが、全部理工学研究会サークルの全員が悪いとは私も思えません。やっぱりこの元凶は神威瞭という人間だと思います」珍しくあんまりこの場では喋らないはずの同じ高層ビル爆破事件で準司達と共に救助活動していた三回生の桐原が話し出した。あの経験をしたから桐原も変わったのだろうか?

「先生!僕もそう思います!悪いのはヴィジョン先生じゃありません。神威瞭という人間が悪い!」

「そうですよ先生!その時神威瞭とも仲良くしようとしたことは何も悪いことじゃない。その後に神威瞭が反社会組織をつくって悪いことをするなんてその時知らなかったでしょう?予知能力があるわけじゃあるまいし。だからそれ以上ヴィジョン先生も自分を責める必要なんてどこにもありません!」桐原に続き文京区の高層ビル爆破事件で救助活動をしていたメンバーもヴィジョン教授を庇った。次々と三回生を始めヴィジョン教授を庇い続けた。「そうだそうだ!」と声をあげている。二回生の大半も声をあげていたが、大田原達は冷静になって聞いていた。

「ヴィジョン先生」ヴィジョン教授の名前をあげると皆は再び静まり返った。準司だった。準司もヴィジョン教授を庇おうと話し始めた。

「準司?」と葵は準司に問いかけても準司は席を立ちヴィジョン教授に向いた。それから話し始めた。

「ヴィジョン先生の過去に神威とサークルで同じだったのは正直僕も驚きました。同じ大学で同じサークルにいたということは今聞いて記者会見を見ていた時はショックを受けてましたが、事情はよく分かりました」準司も少し間をあけた。気持ちが少し揺れたが整えて取り戻した。

「ヴィジョン先生はただサークルのメンバーの人達全員と仲良くしようと思ってまだその時話しかけていない神威瞭にも仲良くしようと話しかけたんですよね?神威は普通に話せていたのなら今はどう思っているのかは僕にも分かりませんが普通に話せていたならそんなにヴィジョン先生を毛嫌いしていたとは思えないと思います」皆は珍しく準司の話を真剣に聞いていた。ヴィジョン教授も準司をずっと見ていた。

「けれどももし、そうじゃないとしたら神威は最初から何か企んでいたのかもしれないのも否定できない。ヴィジョン先生の話を聞いていると神威瞭という人物は何かどこかで考えが歪んでいるのも事実だったのかもしれない。一体神威に何があったのかは僕にも知らないし、現時点で答えられることじゃない。何を理由にあのイナズマ団をつくったのかは分かりませんが、この場合神威はヴィジョン先生を見て何かトラウマになったのか、それとも何かに感じて誤った道に行ったのか。だから、ヴィジョン先生が問題じゃないと僕は思います」準司は自信は確かについていた。

「先生、神威という人物と出くわし仲良くしようとしたことの因縁は確かに消えることはないのは確かですが、そこからやり直すことができます。一回の失敗が出てしまったとしてもそれをやり直すことだってできます。その為のこのチームでありクラブではありませんか?僕だってイナズマ団を許すことなんてできないしあの神威を許すことなんてできません。あいつを捕まえることが最終の課題ですが、僕たちも勝つために強くなるのも使命じゃありませんか?」準司が語り終わるとヴィジョン教授は向きを真っ直ぐ向き直った。上級生達も準司の話を聞いてこの子、良いこと言うなあと心の中で呟いた。葵と将吾も準司の話に納得したかのように準司を眺めていた。隣にいた坂本は腕を組んだままじーっと固まったまま準司の話を聞いていた。

「ミスター三田原、ありがとう。座りなさい」ヴィジョン教授がそう言うと準司は我に返ったかのように「あっ!」と自分で気づいた。俺、いつから席から立っていたんだっけ?と本気で思っていた。準司はゆっくりと席に座った。

「ミスター三田原、君のおかげで私の使命に気づけた。そうだ。その通りだ。その為に私はイナズマ団を捕まえる誓いをたてたんだ。…神威は私に何を思っているのか分からないが、敵意があるのか分からないし、その他の理由もあるのかもしれない。今はあの時と違って別人に変わったかと思う。それでも、あやつのやったことは私は許すことはできない」ヴィジョン教授は神威のやったことの報いを形にすることを改めて誓った。

「…皆諸君、神威は次に何をしてくるのか分からないがここからも体力勝負になってくることを覚悟しておいてほしい。また後日、防衛技能訓練を実施する。ただ基本は土曜日を中心になってくるかもしれないだろう。本当は毎日特訓をしたいが時間もないのが事実だ。ただ、春学期の試験が全て片付いたらすぐに技能訓練を実施する。熱中症には十分気をつけて水分補給を毎回行ってくれ。今日の部会は以上だ。また来週の定期部会に会おう」ヴィジョン教授が解散と言った後皆は気がほぐれ各自一人一人自由に行動していた。友達同士仲良く話して暫くは帰らない人達もいれば、「お疲れ様でした!」と言って帰っていく人達もいた。

大田原先輩達三人は帰らず暫く話をしていた。坂本はいつも通りに一人よがりに早く帰っていった。

準司と葵と将吾は暫くは動かず向かい合わせになって話し合った。

「準司、よく話してくれたなあ。おかげで俺もする事の使命が見えたよ」将吾は感謝をつづった。

「まあヴィジョン先生の過去についてだったり、神威との因縁について話をしていたからね。確かにヴィジョン先生は辛かったと思うよ。私だったら怖かったもん」葵はヴィジョン先生の気持ちはすごくわかっていた。

「そうだよなあ。でも、神威が裏切ったことは許せるかというと、誰もが許せないのは分かるだろうな」準司もヴィジョン教授の立場に立ったとしたら自分だったらどうするか考えがよぎった。

しかしやっぱり、自分も許せない気持ちが今も強い。そう思いながら次の技能訓練がくるまで計画を立てているのと、イナズマ団が次に何をしてくるのかの対策を自分も考えていた。




評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ