表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
戒告の盾  作者: ヨシ
49/87

破られた約束

初めて理工学研究会のサークルに入部してヴィジョンは少しずつ慣れてきた。上級生達の交流も誰とでも打ち解け、自分と同い年の仲間達とも打ち解けてきて話の交流が深まってきた。

新一回生の歓迎会から一週間が経って早速ヴィジョン達一回生はロボットの開発や機械の開発などの基本的な作業から始めていき、上級生達が開発したロボットを見本に見ながら作り始めていった。案外楽しくなっていき夢中になって機械を作り始めていった。

「また分からないことがあったらいつでも聞いてくれよ」桜橋部長は一回生達にそう伝えるとヴィジョン達一回生は「はい」と返事し、ロボットの組み立てのパンフレットを見ながらレボルバーを持ちながら機械を作っていった。


地道な作業を繰り返して休憩に入ると、ヴィジョンは友人達にどこまで進んだのかを聞いていろいろと話をして談笑していた。

それから皆と一緒に外に出て数台の自動販売機がある休憩所に行き、自動販売機にお金を入れて皆各自飲みたいジュースを買い、乾杯してジュースを飲んだ。スッキリ感がおもいっきり出た。

「はーっ。美味いなあ。…まだ四月だからこの調子でいいけど真夏の七月に各大学が集合するロボット研究開発披露大会に参加するから春学期の試験が終わったらすぐに完成させて出しに行くからな。それまで最低七月の上旬までは完成させよう、いいな?」桜橋部長が言うと皆は「はい」と返事をした。

椅子に座って飲んでいる人達、立って飲んでいる人達とそれぞれいるが、ヴィジョンは立ちながら炭酸ジュースを飲んでいる。ヴィジョンが飲んでいる最中に、目先に丁度神威が同じ炭酸ジュースを立ちながら飲んでいた。ヴィジョンはあまり話もしない神威に少しでも話そうと思い、炭酸ジュースを持ちながら神威に近づいた。

そしてヴィジョンは神威に話しかけた。

「神威君、調子はどう?機械の組み立ては?」片言になっていたが、ヴィジョンは神威に話しかけた。

すると神威は黙ったままじーっとあの初めて出会った時のようにヴィジョンを観察しているように睨み付けている。

「…ヴィジョン勇一…頑張って日本語喋れてんのはわからんでないが、片言になってるならもうちょい日本語勉強しないといけないな。っていうかここの大学受かったんだったら日本語ある程度日本人感覚で喋れるだろ?何で片言なんだ?」神威は嫌味たらしくヴィジョンに聞いた。

「悪いな、片言で。俺もそれで悩んでるんだ」ヴィジョンは堂々とした人に優しく接する気持ちで神威に事情を説明した。

「悩んでる?…どういうことだ?日本で学歴の高い一流私立大学に受かったんだったらそんな日本語にならないだろ?お前どういうわけでそんな喋り方しかできないんだ?」神威は堂々とヴィジョンをバカにした話を続けた。

「元々長い間アメリカに暮らしていたからだ。日本に初めて来たのは小学校の時だけど、一時アメリカに帰国してそれからまた日本に来たんだ。家の事情でいろいろとアメリカと日本と往復してたけど、母親の古郷に行かなければならなかったから日本の大学に進学することにしたんだ」

ヴィジョンがわけを説明すると神威は黙ったまままたじーっとヴィジョンを見続けた。びくともしない芯の強さを証明して見せている。

「ふーん、でも君の場合アメリカの国籍もあるんだからアメリカのエリートクラスの大学に受験しても悪くないだろ?何でアメリカの一流大学に行かなかったんだ?」神威は気になっていることをテレビの記者がわけを説明を聞くために根掘り葉掘り聞いているかのようにしつこく聞いてきた。

「日本の大学でこの大学のことを知っていろんなことで驚いたことがあったからだ。学びたいことがたくさんあるし、素晴らしい授業や自分のやりたいことがたくさんある。確かにアメリカの大学も考えたけどこの大学は他の大学とは一味違う。自分に合ってるものが多いからだ」ヴィジョンがそうわけを話すと神威はさらにもう一口炭酸ジュースを飲んだ。そして神威は口を開いた。

「まあ、いろんな人がいるというのがこれでよく分かった。なるほどな、君もいろいろと事情があったんだな。そこは理解しておく。…また話し合うとしよう、もう休憩終わったぞ。飲まないのか?」神威が皆が休憩所から元の部室に戻っていくとヴィジョンは慌てて炭酸の缶ジュースを飲み干してゴミ箱に捨てて後を追い部室に戻っていった。


後日。六月の半ばになった。ヴィジョンは昼ご飯を済ませ次の授業に移動しようと教室に向かっていた時のことだった。歩いている途中に偶然神威の後ろ姿が見えた。同じクラブのメンバーだから声を掛けようと思ったが、ちょっと止まった。神威は自分が声をかけたら嫌がるだろうか?

でもクラブの仲間だ。声かけをしよう。そう思ってヴィジョンは駆け足をして神威の後ろから声をかけた。

「神威君!」すると神威は後ろを振り向いた。ヴィジョンだと気づいた時神威も後ろに向き直ってその場で固まった。

「俺に声をかけるとは君は特に珍しいなあ」神威は両手をズボンのポケットに入れたままヴィジョンに言った。

「珍しいの?」ヴィジョンは聞いた。

「ああ、珍しい」神威はその通りだと確信持って言った。

「じゃあ上級生達に声かけられた時なんか凄く喜んで話してたじゃないか。あれは何なんだよ?」ヴィジョンは確信に触れてしまった。

「話しやすいし、打ち解けやすいからさ。俺はそういうの分かってるからな」神威の言ってることが何のことを言ってるのかヴィジョンは分からなかったが、続きを神威と話したくなった。

「神威君、ちょっとだけでも話しないか?何か君だけに話さないのは気まずくなるから、だから話そうと思ってるんだけど…」ヴィジョンはぐいぐいと神威に強気で頼んでみた。すると神威は黙ったまままたじーっと固まった。

「いいよ。あそこのベンチに座るか?」ヴィジョンは嬉しくなった。やっと気軽に話せることができた。


建物のすぐ外にある長椅子に二人は座り、ちょっと一息着いた。

「話ってなんだ?クラブの相談でもあるのか?」神威は聞いた。

「いや、そうじゃなくてこれからの進路や今後どうするかとか、将来これがしたいとかいう夢とかない?」ヴィジョンは控えめにあまり触れてはいけない程度におおざっぱに神威に聞いた。

「…夢?…ないな」神威は間を空けながらそう答えた。

「ないか…そっか…それもそうだよな。まだ一回生だからゆっくり考えていいと思う。…君も優秀だと聞いているから、可能性もまだまだ十分あると思うよ」ヴィジョンはまた控えめに言ったつもりだったが神威の機嫌を損ねたか気になってしまった。

「その質問、他の人にも聞いたのか?」神威は聞いた。

「うん、聞いたよ。みんなも将来の夢を聞くと分からないとかその質問ごめん、聞きたくないとかあまり聞いてほしくないっていう意見が多かったな…」

「それでヴィジョン君は夢があるのか?」神威はすかさずヴィジョンに聞いた。

「あるよ、ロボットの機械を作って例えば医療の最新の技術で手術の治療に役立てたり人命救助の機械を開発したりとか、いろんなところで人の役に立つ機械を開発することだな。俺、機械を作るとかモノづくりをするのが好きだから物理学は徹底的に勉強したいさ。それで世界が良くなるように変えようと思っている」ヴィジョンは片言の日本語で熱く語った。神威はヴィジョンに目を向けずじーっと固まったまま話を聞いていた。何を考えているのか分からないが何も返事せず、ただイライラしてきているかのような表情だった。

「…そうか…凄い夢じゃないか。そこまでの凄い開発者になりたかったらこの先も大学院を目指さないといけないな。俺はそこまでできないからどうも言えないけどね…。もう授業行っていいか?」神威は立ち上がって三限目の授業に行こうとした時、ヴィジョンは「神威君!」と声をかけた。神威は立ち止まってヴィジョンの方に振り向いた。

「神威君、必ず理工学のロボット研究うまく成功しよう!」ヴィジョンが神威を友達と見て、ガッツポーズを見せた。神威は少し笑みを浮かべてそこから真っ直ぐ向き歩きながら左手を挙げて「じゃあな」と声を出さず合図を送った。

ヴィジョンはこれで友情が深まってくれたらいいなと思い、神威とは別の方向に鞄を背負って授業に向かった。


しかし、七月に入って中旬の頃、試験が全て終わった時ヴィジョンに衝撃な話を聞かされサークルの部員全員に聞いた。

「神威君、本当に中退したんですか?…」

「ああ、確かにそう言ってたな。試験を最後に大学を中退したって…」

「それで神威君はどこにいるんですか?」ヴィジョンは混乱していた。なぜなのか、あの時約束したのになぜ止めたんだ?ヴィジョンは気持ちの整理がつかなかった。

「いやあ、分かんないなあ。俺からもメールしたり、電話したりしたけど全く返事がなくてね。ただ桜橋部長にだけメールしたみたいで『自分、もう大学を退学しますので報告します。今までありがとうございました』って送ってきたみたいだよ」二回生の下館が説明した。

「それにサークルの部員を辞退するって言ってたな」ヴィジョンと同じ一回生の同級生の仲田もそう言った。

「そんな…」ヴィジョンは元気が失いそうになった。神威も友達の一人だったのに…。

ただヴィジョンは神威にメールを送りたいために理工学研究会サークルのメールを使ってでもして送るわけでもなくただ呆然としたように真っ暗になった。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ