緊急の部会で…
ヴィジョン教授の記者会見が終わってから数日後、各自皆普段の生活に戻ったかのような雰囲気だった。ただヴィジョン教授の弟子達だけでなく他の大学生達も記者会見を見た時にあのイナズマ団ボスの神威瞭という人物と共通していたことを初めて知ったのは非常にショックを受けていた。
かつてヴィジョン教授と神威は同じ大学の同級生だったのは驚きだった。ヴィジョン教授はずっと誰にも言わず一人で隠し続けていたということだったということなのか。…一体ヴィジョン教授の過去に何があったというのだろうか?皆は密かにそのことを知りたがっていた。
先の爆破事件でイナズマ団に傷を負わされたメンバー達を心配しながらまたいつもの授業に戻っていた準司達は、この日も朝から授業を受けていた。あの時の食堂のオリジナルメニューの割引が始まる上、デザートもつくから早めに券売機に行って次の授業に行こうとしていた時にあの速報ニュースがテレビに映っていたのだ。それでヴィジョン教授からのラインが一斉送信され昼はコンビニの商品を買って昼食を済ませ、現場まで急行したのだ。
その活躍をしたのもあり、ヴィジョン教授の弟子達も含め午後からの授業に行く予定を中止にした分、準司達も「生物学とその生息」の授業の代わりに林田教授から特別に文章にして渡され、「これで試験が出てくる所もあるからちゃんと勉強してくるように」と言われ授業の出席を許してくれたのだ。それだけではなく四限目の授業も同じでヴィジョン教授の弟子達全員、出席を認めてくれた。
それで授業の出席を取り消されることは免れたが、次の単位を取るための大事な話を聞くことができなくなったため、サボってはいけないようにしなければと自覚していた。
二限目の授業が終わると準司達三人揃ってお腹がグーっと鳴った。三人とも恥ずかしくなった。
「なあ、俺達券売機に行って買ったあの割引をしてくれる定食ってまだ締め切ってないよな?」将吾は二人に聞いた。
「大丈夫だよ将吾。あの事件がおきてからそんな日数経ってないだろ?だから今日ご馳走になれるよ」準司は将吾の割引定食を食べたい気持ちを今日は満たしてあげようと食欲をそそらせてあげた。
「たぶん、割引定食でみんな注文殺到するから早く席を取っておかないといけないと思うよ。急いだ方がいいんじゃない?それに売り切れになったら大変だし」葵は二人に詳しく説明すると急ぎたくなった。
「本当だな。とりあえず急ごう」準司達三人は食堂に急ごうと小走りで向かった。
食堂に着くと人がいっぱいに溢れかえっていた。すぐに食堂に走ってもこんなに混むなど思いもしなかった。そんな中で割引定食で並んでいるとしたらかなりヤバい。売り切れになる前に早く並ばないと。
まだ空いてる長机と椅子が見つかると三人はカバンを直ぐ様椅子の上に置き、そして一緒に長い列の一番後ろに並んだ。
時間がかなりかかってようやく注文の受付まで来ると三人は順番に割引定食のチケットを店員に渡した。三人ともチケットを失くさず財布の中にしっかり入れて置いたので慌てることなくスムーズに進んだ。
そう時間が経たないうちにおよそ三分で割引定食がおぼんごと向こうから出てきた。
「はい、お待ち堂様。割引定食です。会計はあちらで精算してください」いつもの店員の掛け声だ。ここまで来ると後は支払って食べるだけだ。
やっとレジまで来た。値段はやっぱり割引のおかげですごく安かった。千円以内に収まったのは案外助かった。自分の家計に負担がかからず済んだ。
レジの支払いを済ませた後三人はおぼん事両手で持って元の机椅子に戻っていった。コシヒカリの艶のあるご飯と豆腐と細かく刻んだお揚げと円型のしたお芋が入った味噌汁にほうれん草のお浸しと雑魚のおかず、そしてメインのおかずである天ぷらにデザートは甘いクリームのかかった生クリームの入った丸いドーナツがこの割引定食のメニューだ。このメニューに一番喜んでいたのは将吾だった。
「美味そう、二人のイナズマ団を捕まえたご褒美という意味もこめて食べようぜ」将吾は嬉しそうだった。
「将吾は本当食いしん坊だな。そうだな、ご褒美にやっと食べれる気持ちで食べよう」準司も食べたくて待ちきれなかった。
「うん、じゃあ食べよう。ホント美味しそうね」葵も食欲がそそり、三人とも食べ始めた。めっちゃ美味しい。
「うめえ。この値段でこんな贅沢に食べれるなんて幸せじゃねえか」将吾は感動した。
「ここまで我慢したかいがあったよな。これ期間限定の最終日まで平日毎日このメニューを注文してもいいかもしれないな」準司は味の美味しさもそうだが実は千円以内に抑えられることの嬉しさの方が勝っていた。いつの間にかケチな考えがよぎった。
「それって、準司…千円以内に抑えられることが嬉しくて割引定食毎日食べたいんでしょ?」葵は勘が鋭いので準司の考えを当てた。準司は葵の発言にドキッとして食べたものが喉に引っ掛かりそうになり一気に飲み込んだ。
「葵、なんで分かったんだよ。なんか恥ずかしいじゃん」準司は恥ずかしくなって顔が熱くなってきた。
「だって、お金の計算しないと生活やっていけないからって前からいつも言ってたじゃん。準司のケチな考え方もう聞き慣れちゃってるんだもん…」
「うん、準司、俺も同意見だよ。四月に入ったばかりの時からずっと言ってたじゃん。お金の計算しないと生活に支障きたすって」将吾は口を手でおさえながら過去に聞いていたことをそのまま翻訳していた。
「まあ…確かに言ってたよな。でもみんなもお金の計算ってしないの?何円までだったらこれ買おうとか何円以上からは絶対に買わないとかそういうのしないの?」準司は逆に聞いた。
「まあ場合によるけど、そんなに神経を削ってまで節約している方が余計に生活してられないよ。確かに生活費の計算はするけどご褒美に何か欲しいものを買うとかは別かな」葵は余裕な気持ちがどこからきているのか分からないが気楽な気持ちで食事に楽しんでいた。
「ふうん。…あっ、何かラインが来てる」準司がスマホを取り出してラインを開いた。ヴィジョン教授からのラインだ。
「ヴィジョン先生からだ」準司が言うと二人も慌ててスマホを取り出しヴィジョン教授のラインを読み上げた。
『急ですまない。四限目の授業が終わった後、五時から特別の部会を行うことにする。そこで先の記者会見で話してしまったと思うが、あのイナズマ団ボスとの関係について告白することにする。重い話になるとは思うが私からもこのまま黙っておくわけにはいかないと考えた。時間がない人も申し訳ないがこの時間に私の研究室に来てほしい。どうしても時間がない人もしくはアルバイトなどで予定が入っている人もキャンセルをしてくれるようよろしく頼む。ヴィジョン勇一』
「みんなは予定入ってる?」準司は二人に聞いた。
「私はアルバイト入ってるんだけどなあ。しょうがないよね、店長に電話する」葵はその場で葵の働いている店に電話を入れた。
「俺もアルバイト入ってるんだけどなあ。俺も電話する」将吾も葵と同じくアルバイトしている先の店に電話を入れた。準司はアルバイトは入っていなかったが、ただヴィジョン教授が急になって部会の週じゃないのにこの日になって特別の部会を開くことにしたのかが不思議に思った。
「良かった。休みを入れてくれたみたい。でもなんで急にこの日にしたんだろう?」葵は準司に聞いた。
「俺もそう思ってた。急になってこの日に部会を開くのはなんでなのかなって」準司もわからなかった。
「やべえ。めっちゃ怒られた。でも休みを許してくれたな。…ヴィジョン先生もあの話を話すんだったら早く言ってほしかったなあ。だったらスケジュールの調整できたのに」将吾はヴィジョン教授に呆れた。
「まあヴィジョン先生も今日じゃなきゃダメなのかもしれないな。とりあえずご飯食べよう」準司が言うと二人はうんと言って昼食の続きに集中した。
昼食を食べ終えて三限目、四限目の授業を受け終わると準司達三人はすぐにヴィジョン教授の研究室に移動した。研究室に着いた時は二回生達が特に早く着いていた。
「たぶんラインに書かれてた通りだから話は長くなるんじゃない?」と皆はささやいていた。準司達三人が入っていくと後ろから三回生や他の二回生達もぞくぞくと入ってきた。中に「アルバイトあったのに急になってなんでこのタイミングなんだよ」という文句が飛び交っていた。この皆の様子でヴィジョン教授の話を聞けるのかどうかが準司は心配になってきた。
「みんな、何かほとんど不安がっているみたいね」葵も心配になってきた。
「葵はどう?急にヴィジョン先生からのあの事の話の部会で不安になってない?」準司も葵を心配した。
「いや、私は大丈夫だけど他の先輩達が不安がっているしあのボスの男と関係があることにショックを受けてるみたいだからなんかそこは不安かなって」葵は冷静になりたかったが不安の色で顔が真っ青になりそうだった。
「あの男と関係がある…か…」準司は聞こえない程度に呟いた。
「なんか今日のこの特別な部会、何か落ち着いた感じじゃなさそうだな」将吾も不安が隠せなくなった。
このタイミングでドアから大田原先輩達も入ってきたのが見えた。挨拶でもしようかと思ったがあの雰囲気も皆と同じ何だか緊張しているかのような感じだった。何も喋らずにいつもの椅子に座ってヴィジョン教授が入ってくるのを待ってはいたがいつもと違った雰囲気だったため準司は挨拶ができなくなった。見た感じ、まるで仲間に裏切られた気持ちも混じっているかのような態度にも見えたのでいつもの明るく話している大田原先輩とは違って悔しそうに下を向いて席に黙って座っていた。残りの二人も同じだった。
他に準司達と共に戦った上木チームのメンバー達や桐原チームのメンバー達も久しぶりに出会った。挨拶
しようかと思ってはいたが、同じショックを受けたような顔をしていたり緊張した雰囲気を醸し出していたり、あの男と関係があるというのは一体どういうことなんだろうと気持ちがざわざわしていたりしていたのでやっぱりやめとこうと準司は思った。
五時になった。皆は自分の席に戻って着席していった。丁度そのタイミングに坂本が入ってきた。あのイナズマ団にやられて以来の再会である。坂本が自分の席に着席すると準司は声をかけた。
「坂本、今の調子どうだ?傷は治ってるか?」
「おめえに聞かれることはねえよ。治ってないならここに来てないだろ?」確かにそうだな。
「お前は良かったな、イナズマ団にやられずに済んでよ」
「いや、俺もイナズマ団に襲われそうだったんだよ、お前だけじゃないよ」準司は坂本を庇おうとしていたが坂本も何だか怒っているような雰囲気だった。
後ろからカタンコトンと足音が聞こえてきた。外からヴィジョン教授をはじめ辰准教授が入ってきた。
「皆、この度はすまない。挨拶はしなくていいが話を聞いてくれ。腹が痛くなる話だがこのタイミングしか話せる状況じゃなかった。この日にしかあの記者会見で話したことのショックを拭えないと思いこの通りとなった。今から重大な話をする。よく聞いてくれ」皆がショックを抱えたままの表情に向かってヴィジョン教授は語り始めた。




