ヴィジョン教授の覚悟
NHK放送局の記者の質問にヴィジョン教授は答えた。
「それは、あえて全国に知らしめたくはないですが私は盾の製造と開発を続けています。その盾を使ってイナズマ団の確保に繋げる作戦を展開しています。様々な形をした盾を開発中ですが、盾と一緒に訓練や特訓をはかり、イナズマ団と同等のレベルに上げ戦える体制を作り上げています。…先日の爆破事件に使っていた道具も私の開発した盾なのです」ヴィジョン教授は分かりやすく説明するために頭の中で計算しながら簡潔に答えた。
「その盾というのは警察がよく使っている盾とは違う盾なんですか?」続けてNHK放送局の男性記者は質問した。
「はい、違いますね。警察の盾は警察の方々が管理すればいいですが、私の開発した盾は様々な工夫を仕掛けてあります。細かくは言えないですが、矛ではなく盾だけを使って自分の身を守るだけじゃなく戦うこともできる仕掛けを私は考え、造りました…」
「ではイナズマ団の幹部二人を捕まえる時もそのヴィジョン教授が開発した盾で戦っていたということですか?」その男性は必要以上にくどく質問した。
「はい、そういうことですね」ヴィジョン教授は話を降りるように返事した。
「分かりました。ありがとうございます」その男性は質問を終わりマイクを下ろした。
「他に質問のある方は?」司会者はすぐに全体を見渡した。そして皆ほとんど全員がまたばっとすぐに手を挙げた。
「ではそちらの方」司会者が指したのは四チャンネルの若い女性記者だ。当たった女性記者はすぐにマイクを持った。
「四チャンネル放送局の月島と申します。この度の事件の救出とイナズマ団幹部二人を確保できたことにまずはご挨拶させて頂きます、大変お疲れ様でした。今までこのイナズマ団を警察でも捕まえられなかった状況が続いていましたが、ヴィジョン教授の作戦で二人の幹部を捕まえることに成功できたことに私達も安堵していることを申し上げます」その月島という女性記者は少し会釈したようにお辞儀をした。
「二人を捕まえることができたとは思いますが、先程ヴィジョン先生がおっしゃったようにまだまだイナズマ団のボスと幹部十人以上とその手下の数十人以上がまだいると情報があります。数が多いですが、この反社会的組織集団の全員の確保を目標に警察も捜索を続けています。今後、警察とどういった連携をとりイナズマ団を捕まえるようにするのか?またイナズマ団の神威瞭というボスと幹部達全員をどのような作戦で捕まえるようにするのかお聞かせ願えないでしょうか?」月島記者はマイクを下ろし再びペンを持って書く準備をした。
「まず、神威瞭が作った幹部全員を捕まえることを先に動く作戦に出ています。様々な情報にあるかとは思いますが、ナンバー十からナンバー一までがなかなか捕まえるのが難しいとされている強敵だということについては私も覚悟を深めていかなくてはならないことは十分承知しています。その為に、先ほど言ったように盾を使ったやり方で捕まえる作戦を図ったり、その為の体力づくりや技を体で覚えていくという特訓を繰り広げていくつもりでいます」ヴィジョン教授が一端話を止めて通訳の女性が日本語に直して翻訳すると月島記者はうんうんと頷きながら一つに集中して忘れまいと必死に書き続けた。通訳の女性が言い終わるとヴィジョン教授は話を続けた。
「警察との連携については引き続き連携していきたく思っています。ただ従来のやり方で警察の方はイナズマ団の行方を追っていると思いますが、私が開発した最新の道具でイナズマ団を追っているので、武器の扱い方は違う場合もあります。それでも互いが協力し合いイナズマ団撲滅をはかるために動いていくつもりでいます」ヴィジョン教授は話を終えて通訳が話し終えると素早く月島記者はメモに書き留めた。メモを書き留めると月島記者は「分かりました、ありがとうございます」と言い終えた。
「はい、ありがとうございます。では次の方どうぞ」また各テレビ局の記者はばっとすぐに手を挙げた。
「ではそちらの男性の方どうぞ」ベテランの雰囲気が出ている四十代の男性記者が当たった。
しかし、この男性記者から出た質問で緊迫感が少し出始めた。
「八チャンネル放送局の島本と申します。この度私からもイナズマ団幹部二人を捕まえられたことに安堵していることお伝え致します。…そのイナズマ団幹部の最上部の十人とボスを捕まえるのが難しいとおっしゃっていましたが、もし仮にイナズマ団から何か襲われることがあったとしたらそれを防ぎ止める方法を考えておられるのでしょうか?またイナズマ団が次にどこで何をしてくるのか皆さんも不安を抱いて生活しています。イナズマ団のアジトや計画はどうしてもヴィジョン先生の研究を通して見つけることができないのでしょうか?」この質問にヴィジョン教授は少し間をあけた。冷静に考えていたが、自分自身でさえ難しい難題が来たなと痛感した。
「イナズマ団が現れる条件や理由というのはまだ捕まえられていないこともあって確固たる証拠という情報がないため、分からないですが防ぎ止める方法というのは普段から外に出かける時に自分の身を守るための道具をいつも携帯しておくことですね」ヴィジョン教授はここで一端止まって通訳に任せた。
「そしてイナズマ団のアジトの話が出ましたが、私も一体どこにイナズマ団がいるのかを分析と追跡をしていますが、なぜか今の段階でも見つけることができていないのが現状です。警察もイナズマ団のアジトを探していますが、今のところまだ見つけられていないと聞いています」ヴィジョン教授がそう説明するとマスコミの報道記者達は騒がしくなってきた。「見つからないなら今どうするつもりだ」とか「ヴィジョン先生でも見つからないのはおかしくないか」と騒がしくなってきている。
「はい、皆さんお静かに!…まだ質問はございますか?」司会者が八チャンネルの記者に聞いた。
「はい。ではヴィジョン先生、警察も見つかっていないと今聞きましたし、先生もまだこの時期にでも見つけることができていないなら今からどういう対策や作戦でイナズマ団のアジトを見つけるつもりですか?」またヴィジョン教授は間をあけた。どう言葉にすればいいか計算している。
「確かにイナズマ団がいつ現れたとしても万が一の対策を取るべきだということを考えています。アジトについては引き続き警察の分析も考慮してどこにいるのかを突き止めていく所存です。それも私の仕事であることもしっかりと認識しています」ヴィジョン教授がそう言うと八チャンネルの島本記者は諦めがついたのか「分かりました。ありがとうございました」と言い終わりマイクを置いた。
「では次の質問される方挙手をお願いします」ほとんどの記者達がまたばっとすぐに手を挙げた。
「じゃあそちらの男性の方どうぞ」また男性記者だ。この人もベテランの記者でおそらく十年以上はアナウンサーの仕事をしてきたと分かるような雰囲気が出ている。
「日本テレビの町村と申します。いろいろと話を聞いてはいますが、イナズマ団の幹部の十人とそのボスの十一人を捕まえるのが難しいことは十分理解しました。もしイナズマ団に勝つことができない場合、または困難になってきた場合他に打つ手を考えることはしないんでしょうか?またヴィジョン先生の弟子の皆さんも大学生ですが、それでもイナズマ団を追い続ける覚悟でいるんでしょうか?お聞かせ願います」核心に触れてもいいのか分からない質問がついに出てきた。ヴィジョン教授はあまり顔を動かさなかったが、ようやく緊張が溶けたかのように普通の様子に戻った。
「私はあまり本音を目の前で言いたくはなかったのですが、ではあえて言うことにしましょう。私は必ず最後にイナズマ団のボスである神威瞭を捕まえることを決めています。この人物が作った組織もまとめて倒すことを覚悟しています。神威に裏切られたあの事も私は忘れた訳ではありません。皆が安心して平和な生活ができる時代を私も取り戻すことを目標としています…」
「裏切られた?」町村記者はすぐに口に出した。
「神威に裏切られたと聞きましたが、一体どういうことですか?以前関わったことがあるということですか?」
また騒がしくなった。司会者もまた「はい、お静かに!」と止めた。
ヴィジョン教授は話し始めた。
「後で調べてくれれば分かると思いますが、あの男と初めて出会ったのは大学時代の時でした。そこで大学生活のことを話したり、将来のことについて話し合ったこともあります。神威はその時に何を考えていたのか分かりませんが、そういった関わりがあったのは証拠もありますので私は嘘をつけません。その情報はお伝えしておきます。私からは以上です」記者達はまだ黙ることはできなかった。一体どういうことなのかと騒ぎ立てている。
司会者はまた静かにしようと必死で止めたが今度は止まらなかった。
「はいはい、お静かにしてください!町村さんはまだ質問がございますか?」司会者は聞いた。
「はい、では最後に神威と何か会話したかと思いますが具体的に何を話されていたのかお聞かせ願いますか?」
町村記者は聞いたが、ヴィジョン教授はすぐに返した。
「それ以降の話はもうできません。私的な事を外部に話すことではないので。この話はもうここまでとさせていただきます」
それでも記者達は手を挙げてしつこく根掘り葉掘り聞いていた。司会者もまた静かにしようと必死に止めていた。
記者会見が始まってからおよそ二時間は経過した。このヴィジョン教授の記者会見の生中継を見ている弟子達は衝撃を受けていた。ヴィジョン先生が大学時代に神威と出会っていた?ということは同級生だった?
初めて知った事実だ。最初からずっと見守っていた準司も初めて知り、「えっ?」という顔が固まったままだった。じゃあその時からイナズマ団をあの人間は作ったんだろうか?ヴィジョン先生は神威のその動きを知らなかったんだろうか?
衝撃を隠せない準司は気持ちが揺れてきた。




