必死の帰還
もうまもなく大学に着きそうな時間になった。桐原もくたくたに疲れて寝ているのかと思ったが、前をずっと見ていて大学に着くまで責任もってバスの走行の様子を見ていた。桐原のメンバーと上木のメンバーと工藤のメンバー達ほとんどがとろとろと眠りの中に入っているかのように疲れからよく寝ていた。その中で口を大きく開けて寝息をたてている人もいた。
桐原が寝ずに前を向いたまま睡魔に襲われそうになっても我慢してずっと見ていた理由はもう一つあった。マスコミの人達が道保堂大学に先に着いて自分たちがイナズマ団の幹部二人のうち一人を捕まえた人達を一目見ようとテレビに映して報道したくてカメラに納めたいのだろうと予測を立てたかったからだ。そんな時に万が一のためにどうやってヴィジョン先生の研究室に着けばいいか考えていたが、おそらく大変多くのマスコミが殺到するに違いない。どう考えても逃げ場がないのかもしれないが、まさかあの隠されているバスの停留所まで押し寄せてくることがないと思うがそれでもマスコミ達が中まで押し寄せてくるとしたらイナズマ団達にもテレビを通して中はどうなっているのかまで知られてしまう危険も出てくる。そうなってしまえば一巻の終わりだ。桐原はそこを心配していた。
まもなく大学に着こうとしていた。着きそうなタイミングが出てきたところで桐原は無線機のマイクを手に取って後ろを振り向いて話し始めた。
「皆さん、もうそろそろ大学に近づいてきたので起きてください!起きている人は寝ている人を起こしてあげるように何か工夫して下さい」桐原の言う通りに起きている人達はまだ寝ている人を起こすように近くの人を起こした。準司は桐原のアナウンスで眠りから一気に目が覚め自力で起きた。葵も自力で起きたが、将吾がまだ寝ていた。将吾がまだ寝ているのを見ると葵は将吾の肩を大きく揺らし「将吾、早く起きて」と言って起こしてあげた。まだ眠気がたまっているのを分かっている将吾は白目向きそうになっても辛抱して自力で起き上がった。
坂本は未だに爆睡していたので、準司が坂本を起こしてあげた。
「うるせえなあ…何だよ」といやいや言いながら坂本は準司の助けで起き上がった。
「皆全員起きましたか?もうまもなく大学に着きます。白い袋のしたカバンはこのバスに置いていっていいですので、白いカバンを置いてからバスを降りるようにして下さい。そして自分のカバンは自分で持って降りるようにして下さい」桐原はこの先に嫌な予感がしてくるのを察知しながら間が空いたが続けてアナウンスした。
「…おそらくなんですが、今さっきのマスコミ関係者が向こうの大学に先に到着していて私達に取材をしようと待ち構えているのかもしれないので、たぶんあそこの隠されたバス停の中に入ればすぐにヴィジョン先生の研究室まで行けると思うんですが、それもマスコミの人達がバレてしまっているならヴィジョン先生の研究室に行くのに大変なことになってくるかもしれません」桐原がそう話すとメンバー達は「えー」とか「嘘でしょう?」とか「帰りじゃあどうやって帰ればいいんだよ?」とか騒がしくなってきた。
「静かに!…確かにどうやってマスコミから隠れて研究室に行けばいいか分からないですが、もしマスコミ関係者が押し寄せてきたら盾を隠して質問されても一切答えずに小走りで逃げるようにして下さい。それしか方法がないので私から忠告しておきます。では荷物を持つ準備をして下さい」桐原はもうすでに降りる準備ができていたが他の人皆は不安になりながらいつでも降りられるように準備をし始めた。
ようやくこの街中を通り過ぎれば大学に到着する。皆は疲れてから解放された気分で自分のカバンを身に付け盾を小さくして左手に取り付けたまま降りられる準備が整った。
もう外を眺めると夕日が沈んでくる時間になってきているのが分かる。もうこんな時間か…。皆はあの高層ビルの中に潜って人助けとイナズマ団達を捕まえる仕事をしたのだからもう時間が長く戦っていた証拠なのかもしれないと誰もがそう思っていた。
バスはやっと大学に到着した。桐原は直ぐ様左横のカーテンを開け窓を覗き、反対に右の窓のカーテンを開けそこから覗いた。…やっぱり予想が的中した。マスコミ関係者達が大学で待っているのを確認できた。またあの大人数だ。一体何人いるんだろう。それぐらいの人数だ。
桐原は両サイドのカーテンをもう一度閉めて後ろを振り向いてマイクを手に話した。
「やっぱり予想通りマスコミ関係者の人達がそこにいたので盾を隠して顔をカバンで隠して研究室まで逃げ込んで下さい。いいですね?運転手さん、隠されたバス停にはマスコミ関係者はいますか?」マイクを離して運転手に聞いた。
「大丈夫ですよ。中はいないみたいです。ですが、カメラマンがこのバスを追いかけてくるかもしれません。それ以上は私達も止められないかと思います」マスコミが隠されたバス停まで走ってくるのかもしれないなら、もうこの隠されたバス停も終わりだ。テレビに知らされる。それは覚悟しておかなければならない。
「おい、ヤバい。マスコミの人らこっちに走ってきてる」三回目の男子はこっそりカーテンから覗いてマスコミの人達の様子を見てしまった。
「どうするんだよ桐原さん。このまま隠されたバス停に入っていったらマスコミにバレてしまうぞ!ヤバいんじゃないのか?」その三回目男子の言う通り、このまま隠されたバス停に入っていったらマスコミにバレてしまう。桐原は考えてる暇はなかった。すぐに運転手に言った。
「運転手さん、ここで止まって下さい!私達ここから出て研究室に逃げ込みますので!…」
「えっ…隠されたバス停には行かなくていいんですか?」運転手は聞いた。
「はい!そうじゃないと隠されたバス停がマスコミにバレてしまったら、イナズマ団もテレビを見て場所が分かる可能性もあるので。ここで降ろさせて下さい!」桐原は必死に説得した。
「分かりました。マスコミ関係者達に気を付けて下さい」
「ありがとうございます!」
運転手はブレーキを踏んでバスを止めた。そしてドアを開けた。
「皆さん!私に着いてくるようにして下さい!盾を隠してカバンで顔を隠して研究室に逃げ込みます!じゃあ着いてきて下さい!」桐原は直ぐ様バスから降りて後ろを振り向きながら盾を持って顔を隠しながら急いだ。
するとマスコミの人達は一斉にカメラマンと共に走ってきて記者達が喋り出した。
「先程江戸川区の高層ビルに入って救出とイナズマ団幹部一人を捕獲した学生の皆さんです!今バスから出てきました!学生の皆さん、イナズマ団幹部を捕まえられたんですよね?感想をお願いします!今試練を終えられてどうですか?感想一言だけでもいいのでお願いします!」いつの間にか記者達はバスのドアの手前の目と鼻の先の近くまで来ていた。桐原を先頭に皆は一気に大学の建物の中に入っていき走って逃げ込んだ。その中に坂本がわざとカメラに向かってピースサインをしていたので、葵は一発坂本の頭にげんこつを入れた。
「あんた!一体何してんの!?ふざけたことしないでよ!」坂本は葵の一発のげんこつで痛がっていたが、すぐに葵に捕まえられ走っていった。
「それ何ですか?その左手に備えている丸い機械みたいなものでイナズマ団を捕まえたんですか?」ある記者が桐原のメンバー一人の女子に聞いてきたので、その女子はおもいっきり顔をカバンで隠して速く走っていった。皆も桐原に言われた通りに盾を隠して顔をカバンで隠し、準司も将吾もその通りにして後に続いて大学のいつもの建物の中に走っていった。




