選ばれた最後の下級幹部
赤田という側近はすぐにイナズマ団独自が開発したスマホみたいな携帯で十一番から十三番までのイナズマ団下級幹部全員を呼び出した。
「神威様のお呼びだ。すぐにボスの部屋に来い」赤田はより厳しい口調で怒っていることをはっきりと伝えた。
十一番の黒井和希は冷静に赤田の言われた通りについていった。十二番の柴沢翔は神威がお怒りになっていると察し手が震えだし赤田についていった。十三番の巻田裕斗は顔が真っ青になり背筋が凍ったかのように「終わった」という顔をしてついていった。
三人はボスの部屋にたどり着いた。赤田が誘導すると挨拶をすることができず、ドアを開けて中に入っていった。三人がボスの前で立って反応を待っていたが、ボスは未だにこっちに振り向かず椅子に座ったまま黙ってくつろいでいた。神威は何枚も貼られている情報や道保堂大学に関する記事、そしてイナズマ団狩りの資料などそれぞれ読んでいた。神威とナンバー二の赤田の他に上級幹部達はもうとっくに帰っていて部屋の中はシーンと静まり帰っていた。何も喋れなくなった三人の代わりにボスの神威瞭が指示を出した。
「お前達三人よ。そこで跪け」神威の声が聞こえなかったため何と言ったか聞きたかったが神威が次に何をしてくるのかが気になって仕方なく黙るしかなかった。十二番の柴沢が十一番の黒井と下を向いている十三番の巻田に顔を交互に見ていたが何も反応していなかったのでどうすればいいか分からなくなった。すると神威がピストル銃を服の中から取り出しすぐさま後ろを振り向いて銃を前に向かって二、三発撃った。
「聞こえないのか、そこで跪けと言ってんだろ!」神威が威嚇すると三人は慌ててその場で土下座した。
「何故だ?…何故下級幹部はこれ程弱いのだ。結成し始めてから何度も十一番より下は入れ替わっているではないか?そして今回、十四番と十五番二人が一気に欠けた。我々が築いたこのイナズマ団は警察に捕まえられたことがなかったのに、威厳が損なわれた。何ということだ。イナズマ団の強みが損なわれたではないか…そこでだ、俺の機嫌が損なわれたこともあり、お前達には俺の手で死んでもらう」神威がそう言うと十二番の柴沢はあまりの恐怖で体全体に走り、騒ぎ立てた。
「神威様!誠に申し訳ありません!私どもも確かに弱い所も承知しております!どうか今後も精一杯神威様の期待に答えて参りますのでどうか、どうかお許しくださいませ!」柴沢は必死に答えた。
「何だ?そのお願い事を述べてくる図々しい答え方は、お前はいつでも自分を庇いたくて必死に訴えてくる。嫌な男だな。あまりにも程がある。これは始末せねばな」そして神威は柴沢に向かって二発ピストル銃を撃った。
柴沢は苦しんだ。
「か…かむい…さま…」柴沢はもう動かなくなった。銃で撃たれた後、床に大量の血が流れ出てきた。
「次はお前だ、十三番の巻田。俺に言いたいことはあるか?」神威は巻田に狙いを定めた。十五番、十四番の次の順番のため殺されるのは必須になっている。
「神威様、恐れながらもう一度だけチャンスを与えてくれないでしょうか?せっかくのイナズマ団幹部についたばかりでして。そこから這い上がり上級幹部に入るのが夢でした。確かに下級幹部にまだいるのは私も承知しております。そこから這い上がり上級幹部に入るよう精進したく思います。それが果たせなければ貴方様に殺されて死にます。どうかその望みだけお許しくださいませ」
巻田は落ち着いて神威にそう言って深々と土下座しながらお辞儀をした。
「俺に願い事を唱えて許しをといて欲しいとでも言いたいのか?お前の願い事など聞きたくもない。何が上級幹部に入りたいだ。お前も俺に対し失礼なのだな。上級幹部に入りたいという話は何度でもどんな奴でも何回も聞かされてきた。もういい、お前も不必要だ」神威は巻田にも二、三発銃を撃った。巻田はあまりの苦しさに目を丸くし、だんだん意識がなくなっていき、そして動かなくなった。血が流れ出てきた。
残された十一番の黒井は冷静に何もびくともせず土下座したまま何も動かず固まっていた。次は自分が殺される。もうこの方の手にかかって死ぬんだ。もう何も望むことはないと全てを捨てて神威に覚悟を決めた。
「さあ、最後はお前だ。こやつらが言ったことと同じ何か言い残したいことがあるか?」神威は黒井に銃口を向けた。黒井は死ぬ覚悟はできていると心に呟いた。そして準備ができた時ようやく口を開いたが、だんだんと笑みがこぼれてきた。
「フハハハハハ!神威様、やはり私は役立たずだったのかもしれませんよね!せっかく十一番の位に立てたというのにどうしてそのようなことをおっしゃるのでしょう?詐欺の担当も行いましたし、盗みの仕事も働けた。しかし、人殺しを一人もできていないからなのですか?ならばその理由に当たるならどうぞ私を殺してください。貴方様がそれを望んでおられるのですから」土下座から頭をあげ、体の背筋を正して「どうぞ殺してください」と両手を広げて撃たれる覚悟を決めた。
長い沈黙が続いた。神威は黒井のサイコパスの姿を初めて見た時驚いた表情を見せた。カチンとピストル銃を構えた。そして、銃を撃った。
「…いや、黒井。死ななくていい。お前は立て」神威はわざと後ろの壁に銃を撃った。神威は十一番の黒井を殺しはしなかったのだ。黒井は死ぬんだと思ったが、死ななかった。神威はこっち来いと言われたが、戸惑いを隠せず何故なのかが強い気持ちだった。気が狂った姿をお見せしようとしたのに俺は死ぬんじゃなかったのか?モヤモヤした何かの気持ちを抱いたままその通りに黒井は近寄った。
「気に入ったな。お前に一つやってもらう。下級幹部最後の人間として俺の命に従うといい。黒井、お前はここに行って始末してこい。そしたらお前の望みを叶えてやる。上級幹部に入りたいんだよな?ならば覚悟してその通りにするがよい。こやつらイナズマ団狩りの連中でも勝てない強い鉄壁を作ってこい。そうすればお前の昇格も与えてやろう。その他に下級幹部の存続も俺から考えてやる。新しい下級幹部のメンバー作りだな。これはかなり期待が大きい。お前がこの始末を全て果たすことができれば、下級幹部の新しいメンバーを作れることだってできる。一挙両得ではないか、お前の活躍もさらに飛躍できるだろう。大いに頑張ってくれればいい。俺からの話は以上だ。ここまで聞きたいことは?」神威は聞いた。
「いえ、何もありません」黒井は返答した。
「では行きたまえ。この好機を逃がすんじゃないぞ。じゃあもう行ってこい。あっ、それとだ」神威は忘れていたことを今思い出した。
「道保堂大学にいるあの青年のこと、お前も耳にしたことあるだろ?三田原準司という名前の男。あの男の子をうまくおびき寄せろ。そして…そこで殺せ」神威は黒井の肩に手を置いた。黒井は再びだんだんと笑みを浮かべサイコパスの素顔を本音で見せながら神威に向きを変えた。
「はい、指示通りに動きます。必ず神威様の期待にお答え致します」黒井が笑顔で神威に答えると神威は笑い出した。
「そうか、そうだ。その覚悟だ。それができれば後は何も言うことはない。さあ、行ってこい」
「はい、行って参ります!」
黒井が外に出ようと歩き出すと神威は赤田に「こやつら二人を始末しろ」と言い、赤田は「はい、かしこまりました」と答えた。
黒井は神威にお辞儀をしてドアを開けて外に出て閉めるとだんだん笑みが大きくなっていった。
「あの大学生のことだな。…あの小僧の始末をすればさらに昇格できる。そして、上級幹部の仲間入りだ」黒井は神威から言い渡された命令で仕事ができるとなった時あまりの嬉しさが止まらなくなった。まだ笑いが止まらなくなっている。もう準備が整っている。黒井はそう思いイナズマ団アジトの深い地下の廊下を歩いていった。




